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トウキョウラジゴン(イルイル) ~時間感覚を狂わせる究極のソフビ体験

2020年に発表されて以来ずっと欲しかったイルイルの「トウキョウラジゴン」。先日の創作ソフビ決起集会の抽選で当選し、やっと手にすることが出来た。とにかくすべてが素晴らしい。ずっと触っているけれど、まったく飽きない。

オーソドックスな恐竜型怪獣でありながら、頭部にレーザー銃が装着され、腹部の装甲が開閉する。「飢饉、疫癘、天変、地夭、数多の禍攘い除けんと五礼島より出でたる聖獣<統凶羅璽嚴>大あばれ!」という設定になっているので、人工的に改造されたわけではないらしい。ラジゴンカーが2つ付属している。

マルサンやブルマァクのスタンダードサイズより一回り大きい、迫力のあるレトロなデザイン。それでいて繊細な造形で、体表の鱗の造形は緻密でリアル。濃紺の成形色に技巧的な塗装が施されている。腹部の開閉ギミックは極めてユニークで、遊び心にあふれている。

イルイル氏とお会いした際、この怪獣のデザインは何にインスピレーションを受けたのか質問したところ、強いて言えば無版権の一本角ゴジラだと仰っていて、並べてみると確かに少しだけ似ている。コンセプト自体は、カバヤ食品がかつて「ジューCレモン」の景品として展開した怪獣人形キャンペーンを彷彿させる。

イルイルが作る玩具の最大の特徴は、倒錯的なまでに作りこんだ<世界観>だ。レトロな立体シールやパズル、キーホルダー、果てはスナック菓子など、リアルな周辺グッズを作り、まるで昭和の時代に本当に商品展開されていたかのような錯覚をおこさせてしまう。知らない人が見たら、過去の玩具のデッドストックだと絶対に信じてしまうだろう。

触れる者の時間感覚をバグらせるイルイルの玩具世界は、ソフトビニール人形のもつ可能性を拡張し、「作品」を超えた「体験」を提供する。それは、あり得たかもしれないパラレルな過去に旅するような、時空間の感覚が揺らがされる不思議な体験だ。

最新作のロボットソフビ「キングアーク」は、ギミックと世界観をさらに進化させていて、誰も真似できない至高の領域を開拓し続けている。





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