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…だけじゃない、ラグビー選手の生き方―SO喜連航平

社員選手として、仕事とラグビーの両立はもちろん、それだけに収まらない活動を続けている。今シーズン、目崎啓志選手から選手会長を引き継いだ。高校・大学ラグビー部ではキャプテンを務め、チームリーダーとしての役どころは身についているのかもしれない。大学卒業までは順調と言って良いラグビー人生だったが、シャイニングアークスに入部してからは様々な試練が待ち受けていた。だが、それが成長の糧にもなっている。一プレーヤーとして、選手会長として、あるいは社会貢献活動を通して、「だけじゃない」ラグビー選手としての生き方を実践している。

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怪我に悩まされた、過去3シーズン

2018年入部。その年8月の練習中に、人生2回目の前十字靭帯断裂、半月板損傷の怪我をしてしまう(※一回目は高校の時)。手術を行い、8月31日のトップリーグ開幕戦は、病院のベッドの上でテレビ観戦していた。

2回目の大怪我ということで、復帰後は入部した時とはカラダが全く違う感覚があった。1回目の怪我の時より、思うようにカラダが動かなかった。

「リハビリ期間中は凄く孤独でした。最初はみんな声を掛けてくれるけど、やっぱり存在が忘れられていく感じがありました。入部1年目の怪我だったので、凄く落ち込んだし、チームに溶け込みづらかったし、素の自分を出せなかった。チームに貢献できない自分がいました。凄く歯がゆかったです」

翌年6月に行われた練習試合で復帰を果たすが、結局その年も調子は戻らず、故障も重なり、公式戦出場はならなかった。そして今年こそ!と迎えた3年目の2020年度は、調子が良かったところで練習中に足首を踏まれて怪我をしてしまった。だが、そこから怪我を直していって、トップリーグが開幕した頃からは、自分としては調子は良かったし、もっと伸びると感じた。練習でも自分のプレーに自信が持てるようになってきた。それでも公式戦に起用されることは無かった。

「コロナ禍の影響で練習試合の数も減ってアピールする場も無くなって、公式戦では起用されず、歯がゆかったですね。でも、チームにとって良い状況をできるだけ作ろうと思って、メンバー外のみんなと腐らずに頑張ろうと言い合って、一生懸命やって来ました。個人的には最後のトップリーグは悔しいシーズンでした」

認められないという経験が、シャイニングアークスに入るまで無かった。認められ続けて、『井の中の蛙』のようにここまで来てしまったのかもしれないと言う。試合に出られず、屈辱的な扱いと感じた時もあり、腐りかけたこともあった。

しかし、やっと本来の喜連らしいプレーが戻って来たとスタッフから言ってもらうことができた。ここからだ!というスタートラインに、ようやくもう一度立つことができた。

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Self Managementの重要性

「1回目の怪我は大丈夫なんですよ。2回目の怪我は、移植手術で採取する箇所も違ってくるので、きついですね。リハビリもコントロールしながら弱いところを見せないようにしたりして、きつかったですね。また怪我したのか!と思われてしまうし。自分の中では、リハビリを克服していい状態に持ってこれたことは成長したところだと思う」

「1年目に怪我をした時に、小沼さん(小沼健太郎キャリアディレクター)からは、『まずは周りと比べずに自分を認めてあげたほうがいい。何ができて何ができていないのか、自分が目指すべきところを。他人から認められることを求めないほうがいいよ』というアドバイスを受けました」

「周りからは認められなかったのですが、自己分析して、自己承認するというサイクルが回っていた感じです。小沼さんには1年目からメンタルの部分で手助けをしてもらっているので、日記も書いていますし、今ではどうすればいいか大体自分でわかります」

自らの苦しかった経験をもとに、今年の6月に、浦安市の明海大学でコロナ禍で就職活動に悩む学生たちに『Self Managementの重要性』を伝える特別授業も行った。
https://note.com/shiningarcs/n/n8a6724283d92

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結果が残せなかった昨シーズンをチームとして成長の糧に

「こういうシーズンになっちゃうと、みんな誰かのせいにしちゃうもんやけど、今振り返れば『自分はこうやればよかったなあ』というのは、たぶん全員があるわけじゃないですか。そこをみんなわかっているから、昨シーズンうまく回らなかったことを新シーズンに活かすしか無いというポジティブな流れはあると思いますよ」

「十人十色ですが、勝ちたいのはみんな一緒です。だから、毎日しんどい練習にも集まっている。ただ試合に出られない人がいるっていうのも事実としてはあるわけで。負けたシーズンこそ、出てないメンバーが、チームマンとしてどれだけチーム愛を持って動けるかが勝つために重要ですし、そこはもっと出来たなと思っています」

「昨年の負けた経験を来年につなげていくというのが大事やから。全員がどんな状況でもチームマンでいる状態を作ることが、勝つためには必要です。だから、今はチームとして成長段階なんだと思っています」

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ラグビー選手だからこそできる社会貢献活動

喜連たち3人の有志メンバーが中心となって、コロナ禍になってからはオンライン交流会を中心に、ホームグラウンドのある浦安市高津区の高齢者施設や障がい児童支援施設などを対象に社会貢献活動を行なっている。

※「健康促進体操動画シリーズ作成〜オンライン公開による高齢者支援」
https://note.com/shiningarcs/n/nd55b583894b5

※「初めての、青少年発達サポートセンター訪問「うらやす・そらいろルーム」の子供たちとの交流」
https://note.com/shiningarcs/n/n47c1f56ad060

「社会貢献活動をしたいと一番最初に思ったのは、僕が中学生の頃に母親が祖母と同じ遺伝子性若年性のアルツハイマーになって施設に入ってしまい、そういう環境で育ったことが要因としてあります。でも僕の中ではあんまり母親の病気を認められないというか、認めてしまうとどんどん悪くなる気がして、大学卒業までは施設に会いに行けなかったんです」

「そこから自分が駄目だった、会いに行けてなかった7、8年をどう返して行ったらいいんやろうなあみたいな思いがあり、未来プロジェクト*の活動をしていく中で、自分の中でそういう思いを持ってやればいいかなあと。また怪我が重なったこともあります。怪我の間にラグビー以外でも何かで成長したいなあと。そこからスタートしました」

*未来プロジェクト:選手たちがセッションを重ねながら、アスリート社員としての魅力を高め、NTTコミュニケ—ションズの未来を切り拓いていこうというプロジェクト。
https://www.ntt.com/rugby/team/future_session/index.html

「未来プロジェクトを通じて、社会貢献活動をやらせてもらっている、アークスの仕組みには感謝しています。ここで得たことは、ラグビーやこれまでの社業以外の外部とのつながりもそうですし、今の社会問題を知ることもできて、社会問題へのラグビーの可能性を感じることもあれば、逆に選手の力不足を感じることもあります。デュアルキャリアでは、その経験を活かして地方創生、SDGsなど社内でもその知見はラグビーの経験と伴に活かされると思います。ですが、活動に込めた想いがチームの選手たちにまだ浸透しきってないかなとも思います。また、選手が自分で考えて自分で動いていることがファンの人に伝わらず、運営側が企画したイベントにいっぱい行かされているだけと思われてしまうのはちょっと寂しいですね」

「勝利に飢えていたから5位まで来たけど、弱いチームが強いチームに勝ってもっと上に行くために、ラグビーを極めることは必須ですし、優勝を目指してスタンダードを上げることも必須です。それと同時に社会のいろんな現場を実際に見て、感じた現場の想いを背負ってラグビー選手として表現する事も大切だと思うし、それはプレーに影響すると感じています」

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2021年度から選手会長に就任して

目崎啓志前選手会長は、喜連ならばチームの掲げるValueの部分を社会貢献活動などを通じてより推進してくれると考え、昨シーズン中から選手会長の話を持ちかけていた。だが昨シーズンは、喜連にとって個人的にもチームとしても納得のいくシーズンでは無かったので、シーズン中に打診を受けた時には一度は待ってもらい、シーズンが終わったタイミングで改めて話があった時に、受諾した。

「自分がまず試合に出ることが影響力につながって行くと思うので、第一にラグビーで試合に出て、みんなを引っ張っていける存在になれたらなぁと思います。シャイニングアークスは、ホンマにいいチームなんですよ。今よりもっと選手がチーム愛に溢れて優勝してもっといい文化ができるそんなチームにしたいと思い、選手会長を引き受けました」

「みんなファンの人たちに会いたいし、ファンの人のためにプレーしてますよ。今いるファンをもっと大事にしたいし、もっとファンを増やしたいし大変なご時世やけど、繋がれたらいいなと思って運営側にも選手から話したりもしています。選手はみんなチームのことが好きやし、ファンのこともも好きやし、単純にラグビー好きやから、コロナが落ち着いたら、ファンミーティングもやりたいですね。SpoLiveとかInstaライブみたいに今は直ぐに繋がれるのでファンには喜んでもらえる機会があればいいですね」

社会貢献活動に関しては、これまで一緒に活動してきた本郷泰司選手と一緒に、その経験やつながりから他の選手も参加できる機会や場を提供していって、広がりを見せている。またファンとの交流についても、ラグビーでみんなを元気づけたり、楽しませていきたい。コロナ禍でファンとの交流がグラウンドで中々出来ないことが予想されることから、選手自らが様々な企画を提案していく考えだ。

ラグビーと仕事の両立だけじゃない。もっともっとラグビー選手には社会を動かせる力があると喜連は考える。そして行動する。これからも『だけじゃない』活動を続けていく。

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