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初NY!

ニューヨークに初めて訪れたのは2010年の夏休み。毎年1か月の夏休みがあるため、今回は思い切ってNYにまるまる1か月滞在しようと決意しました。

計画はしっかりと。なぜならニューヨークは高い。

以前一緒にお仕事させて頂いたジャーニーの家に滞在させてくれるというので、遠慮なくお邪魔させて頂きました。久しぶりに会うジャーニーは相変わらず弱音を吐きながらも元気な様子です。今はマンハッタンのアッパーイーストのサロンで忙しく働いているとのこと。家は日本でいうワンルーム、床に布団を敷いて寝る感じになるとのことでした。それでもマンハッタンはすごい家賃が高いのでワンルームの彼の部屋ですら日本円で30万円ほどだそうです。驚きの高さ。ニューヨークは生活費が凄い高くかかると言われて嫌な予感。そう、僕の所持金。。あ、ダメだ。とてもじゃないが1ヶ月ももたない。

気づいたらもう遅い。

しかもジャーニーから家賃を割って欲しいと言われて、もう所持金が底つくのも時間の問題です。タダで泊めてもらえるなどと思った自分が恥ずかしい。1か月も人の家に泊まるのだから当然家賃も払わなければなりません。そこで正直に経済状況を話したら、“一か月もニューヨークに滞在するのに所持金5万は本当に無謀ね。”と呆れているジャーニー。僕は考えました。どうやって1か月サバイバルすればいいのか。そして思いついたことは...ジャーニーがミラノで僕たちと働いたように、僕もニューヨークで一緒に働かさせてもらえばいいんじゃないか!?ということでした。意外にもジャーニーは“オーナーに確認させて。”と働くことに同意してくれました。

ニューヨークで美容師をするということ。

なんと“お手伝い”の許可がおりました。ここでお手伝いと書かせて頂いたのは、アメリカを含めて外国でヴィザ無しで観光者が働くことは法律で禁じられています。なのであくまで僕は“お手伝い”としてサロンに立ちます。サロンはなんとNYでも高級なエリアUpper East Side(アッパー・イーストサイド)に位置していました。いろいろな映画やドラマのシーンに使われているお洒落なカフェやお店が並んでいるとても煌びやかな場所でした。僕はとても緊張しながらもオーナーさんにご挨拶、マイネームイズ“Shinichi “、ナイストゥミーチュ。カタカナを棒読みしたような英語でしたが快く僕を受け入れてくれました。”Japanese Hairstylist from Italy!? You must be good!!”「イタリアから来た日本人美容師なら絶対上手く働けるはずだ!」とテンション高めに褒められ、すごく嬉しかったのを覚えています。さっそくジャーニーにサロンスタッフの紹介と設備の説明をしてもらい、日本人らしくまずは掃除とシャンプーからと思い雑用をしていたら、あるスタイリストにいきなり「あなた何してるの?イタリアでスタイリストとして働いているんでしょ?じゃあこのお客さんブローして?」といきなりお客さんを担当することになり僕は”え!?いきなり!?“と内心緊張しすぎてどうすればいいのかわからない状況でした。それでも謙虚にお仕事(お手伝い)を引き受けさせて頂きました。

アシスタント制度やチップ制度、日本との違い。

実はアメリカの多くのサロンは日本と同じようにアシスタント時の仕事内容として雑務やシャンプーをすることがあります。その他の形態として、もともと雑務やシャンプーをするだけのために雇われている人たちも存在します。美容師というよりはスーパーアシスタント。一件雑用にも思える仕事ですがアメリカではサービス業は美容院も含めてチップ制なのでシャンプーをした後その人にチップを払う必要があります。しかもシャンプーを頼んだスタイリストもさらにアシスタントにチップを払う状況もありました。僕はチップの文化には慣れていないので、僕がシャンプーをすることはアシスタントの仕事を奪うことになるとは思ってもいませんでした。当然他のスタイリストも僕にアシスタント以外の仕事を振ってくるはずです。このサロンはクーポンを使い上手く集客ができていたので、毎日お客さんで溢れていました。

NYデビュー戦。

話は戻り、僕の初のお客さんはブロードライ希望ということでした。つたない英語でしたが、僕が日本人でイタリアから来たことは伝わりました。終始笑顔で接客することができました。ブロードライ中はドライヤーの音でお互い何を話しているのかもわからなかったので、最初にストレートに乾かしたいのか、ウエービーにしたいのかだけがわかれば後はなんとかなりました。彼女は僕のスタイリングを気に入っている様子でいきなり僕の手を取りました。折りたたんであるお金を手のひらに握らされました。「 This is for you!! Welcome to NY!! 」(これはあなたに!NYへようこそ!)と言われて感動しました。そしてこれが話に聞いていたチップです。20$も!?日本円で2000円ほどになります。すぐさまオーナーに話すと、このお金は僕のものだから好きに使いなさいとのこと。まさかこんなに!?とも思いつつ次から次へとお客さんをカットやブローさせて頂きました。ポケットはもう満タンでチップを数えるのも時間がかかるほど。英語が下手でもやる気と東京で学んだカットとミラノ仕込みのブローで、ほとんどのお客さんを満足させられることができました。気がつけばサロンでのお手伝いも一週間、二週間とあっという間に時間が経過し、営業にも少しずつ慣れて来ました。仕事はほぼ毎日そして夜はレストランやバーに行ってNYライフを満喫できるほどチップによって稼ぐことが出来ました。もちろん家賃もしっかり払いました。笑 

アメリカで働きたい美容師が多い理由。

なぜ世界中の美容師がアメリカ、特にロサンゼルスやニューヨークで働きたいのかが良くわかります。まさにアメリカン・ドリームなのかなと。もちろん実際に住むと健康保険、税金の仕組みなど色々とネガティブなことも聞きますがそれでも1か月滞在の僕にとっては最高の経験になりました。チップのおかげで家賃や飛行機代をカバーでき、さらには外食やショッピングが出来るほどでした。もう一つは世界中の美容師さんが働いているので、世界中の技術が見れる。さらには言葉もいろいろな言葉が飛び交う環境が僕にはとても魅力的に思えました。営業に慣れるとみんなが“シニチ!”(シンイチはアメリカだと母音とNの関係でシニチになります。)と僕の名前を覚えてくれました。

また戻って来ようと決意。

1か月の滞在も終わりジャーニーともお別れ。サロンのスタッフや出会った人たちみんなに感謝の気持ちでいっぱいでした。“また戻って来よう!“と心に決めました。ここに書ききれませんでしたが、プライベートでもいろんな出会いがありました。アメリカ人の女の子に逆ナンパされたというような小ネタエピソードもたくさんありますが、それはまた気が向いたら書きます。

12年イタリア生活しています。なんだかんだで、その後NYには8、9回ほど戻って1か月滞在”お手伝い“をさせて頂きました。やっぱり大好きNY。

#この街が好き

次回はイタリアに戻ってサロン美容師がファッションショーや雑誌の仕事を受けられるようになるまでの過程などを書かせていただきます。

ありがとうございます。

それでは、チャオ!



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