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【ミカタをつくる広報の力学】 #46 屋外広告でPRを考える

前回も少し触れましたが、集客せずにバズをつくる方法としての「屋外広告」について、今回は書きたいと思います。

再度の緊急事態宣言が発出された東京では、さらに集客できない状況が続いていますが、屋外広告を活用してバズる話題づくりの参考にしていただければと思います。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


屋外広告とPRの相性

近頃バズっている「新宿の巨大猫」をご存じでしょうか。新宿東口の駅前に登場した大型街頭ビジョンの話です。

3Dビジョンならではの演出を見せるデモンストレーション映像ですが、猫の可愛いさや3Dのインパクトのがウケて盛り上がっている様子。
単なる埋め草コンテンツかと思いきや、Twitterの公式アカウントも運営しており、戦略的に設計されている企画のようです。

屋外広告(OOH)はバズをつくりやすい。

このことは猫の例を引き合いに出すまでもなく、周知の事実かと思います。
その最たる理由はもちろん「リアルな空間におけるメディア」だからです。

あまり認識されていないかもしれませんが、屋外広告はテレビCMや新聞広告と同様に「プッシュ型広告」です。
見る人が積極的にアクセスしなくても、自然と視界に飛び込んできます。

屋外広告の一番のメリットは、メディアの中での展開とは異なり、オープンな空間が利用できること

例えば、雑誌や新聞での立体表現は難しいですが、ポスターならその上から模型を貼ることで立体にできます。もちろんポスターの上に貼る手間は一枚ごとにかかるわけですが。

このように空間に「違和感」を生むことができれば、注目を浴びることにつながり、撮影できる場所であれば「拡散」にもつながります。

コンテンツの舞台となっている「聖地」で展開すると、世界観やイメージを訴求することも可能になるため、街や鉄道をジャックするといった施策も人気です。

ベタな手法ですが、鉄道の沿線全駅にそれぞれ異なるデザインのポスターを掲示するという方法もあります。

これらの屋外広告は、「広告に気付いた人」が「誰かに教えたくなる」という反応を生み出す効果があり、PRとの相性が好いといえます。

他にもリアルでのメリットとして、「リーチの反応を目視で確認できる」、「サンプリングへの展開が容易」、「エリアマーケティングと相性が好い」など、様々なメリットがありますが、それはまた別の機会に。


デジタルへ進化する屋外広告

屋外広告の別名「OOH」「Out Of Home」の略で「家の外」という意味。なので広義の意味では、店舗の看板も、街頭で配っているチラシも、電車の中吊りも、店内の案内板も含まれますが、ここではPRの話題づくりになりそうな屋外広告に絞ってご紹介します。

【壁面広告】
建物の壁面を使った広告のことで、元々はシートを貼りつけたり懸垂幕を掲出したりしていましたが、最近では、建物全体をラッピングしたり、デジタルサイネージを設置するものまで登場しています。
工事中の仮囲いなども含まれますが、いずれも広い面積を活用できて圧倒的な存在感を主張できるので、大きさでインパクトを出したいときには効果的です。

【街頭ビジョン】
広い範囲から視認でき、動画展開できることが一番の特徴。場所によっては音声も使えます。冒頭で触れた猫の例もそうですが、交差点に設置されていることが多いため、信号待ちの人への訴求力に優れ、一定時間視聴してもらうことも。
渋谷スクランブル交差点を取り囲む複数の街頭ビジョンは連動することが可能で、一気に注目を集めたり、様々な演出を凝らすことも可能です。

【駅貼りポスター】
昔からある交通広告の定番ですが、前回も書いたように、最近の流行は数十メートルにも及ぶ連貼りのジャック。通路の歩行者に対して連続的に訴求することができ、空間全体にわたるイメージの演出が可能なため、世界観を重視するコンテンツなどに活用されることが多いかと思います。
さすがにデフォルトで全面デジタルの媒体は無いようですが、デジタルサイネージの全面設置は可能みたいですね。

【柱広告(アドピラー)】
主に地下通路に設置された複数の柱に広告を巻き付けたもので、「柱巻き」とも呼ばれます。
昨今では柱ごとデジタルサイネージになっているものも珍しくありません。
よくあるケースはアニメやゲームの登場人物を等身大のビジュアルで並べていく方法。上記の連貼りポスターと連動できる場所では、さらなる世界観を演出できます。

【アドカー】
ラッピングバスや宣伝カーなどは古くからありますが、最近は電飾広告やデジタルサイネージ、オブジェなどを搭載して走るトラックが登場。
基本的に停車せず移動する媒体なので、ユニークなものを見かけたときには「レア感」も手伝って拡散されることが多々あります。


屋外広告でバズる企画とは

屋外広告を活用してPR施策を考える場合には、違和感や驚きを演出するインパクトはもちろん欠かせませんが、最近ではSNSやデジタルコンテンツと連動できることも重要でしょう。

猫の例で言えば、街頭でのインパクトに加えて、受け皿となるTwitterのアカウントがありました。
アニメなどの人気コンテンツの場合は、ファンが必ずまとめ記事をつくるので必要ありませんが、無名な状態から仕掛けていく場合には、公式サイトやSNSに「受け皿」を用意しておいたほうが良いでしょう。

スマホならQRコードを読み取ることもできるので、デジタルコンテンツやARと連動させることも容易です。

ここで、少し古い例を一つ。
2009年に渋谷のモヤイ像が盗まれたことがありました。
その場所にあるはずのモヤイ像は忽然と姿を消し、代わりにあの有名な大泥棒の犯行声明文が。
公式サイトでは、「盗んでほしい物」のリクエストも一般募集していたため、このPRはかなり話題になりました。今から10年以上前の施策ですが、屋外広告とネットを組み合わせた秀逸な企画だと思います。
モヤイ像のメンテナンスのために一時撤去するタイミングを狙ったアイデアの勝利でしょう。

別な切り口で言うと、割とネット受けの良いものに「自動販売機」があります。近頃では感染予防の関係で飲食店が時短営業になったため、お弁当の自動販売機などが話題になっていますよね。
私もかつて、フルーツを屋外で食べるカルチャーの醸成を目的として、フルーツの自販機を提案したことがありますが、実際に自販機が登場したときには物珍しさがあったようで、ネットで少しバズったように思います。
純粋な屋外広告ではないですが、自販機は共有したくなるコンテンツの定番なので試してみても良いかもしれません。


おわりに

今回はPRに活用できそうな屋外広告の話をしました。広報担当の人には馴染みの薄い話題だったかもしれません。
広告媒体なので基本的には有料ですが、コラボの仕方や場所によっては無料で使える場合もあります。

アイデア次第でいくらでもインパクトを大きくできるのが屋外広告の魅力なので、自由な発想で面白い企画を考えていきましょう。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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