SHINGO AOKI

Product Designer/Photographer Osaka https:…

最近の記事

屋久島に行ってきた話⑥

4日目|明朝の出会い最終日、未明に起床して音を立てぬように荷物をまとめたら、寝静まる満室の山小屋を後にしてライトを照らしながら未だ雨が降り続く森へ戻った。 暗がりの中で写真を撮り続けていると、空が少しずつ明るくなりはじめていた。全身で雨を受け止めながら目を閉じ、耳を澄ませ、精一杯この森を浴びる。 すると、登山としては早すぎる時間であるにも関わらず、遠くに山を上がってくる白い人影が見えた。 それは僧侶だった。 笠を被り、藁草履を履き、杖を持つ凛々しい姿に目を奪われると同

    • 屋久島に行ってきた話⑤

      山小屋へ白谷雲水侠の人気スポット、かつて「もののけの森」とも呼称されていた「苔むす森」は、かの宮崎駿がその景色をスケッチした場所として有名になった。元々その場所はただの通り道だったが、今となっては初心者向けのトレッキングコースの目的地として定められている。 10年前、はじめて屋久島を訪れた時にも同じ場所に訪れ、美しい苔の景観に思わず息を吞んだものだ。 しかしどうだろう、現在の景色は昔の印象とは大きく異なるように思える。 実は数年前に、いくつかの木が倒れたことによって「苔

      • 屋久島に行ってきた話④

        3日目|入山翌朝目覚めると、フロントには一つの大きなおにぎりが僕の名前が書かれた袋に包まれ置かれていた。昨夜の食材を利用したのだろうか、様々な具材が贅沢に寄せ集められたおにぎりはとても美味しかった。 天候は変わりやすいとは言え、全く晴れ間の見えなさそうな予報と、本格的に始まる連休で急増する人の流れの予想を鑑みて、当初予定していたルートから変更し、土壇場になって登山口を切り替えることにした。入山前のバスでの移動は長くなるが、やむをえない。 そうして通学途中の地元の高校生に混

        • 屋久島に行ってきた話③

          2日目|太忠岳と同行者滞在二日目早朝より向かったのは太忠岳(たちゅうだけ)。 この日はガイドをつけてもらった。 この太忠岳は、登山道としては決して険しくなく、僕の経験からも本来であればガイドは不要ではあるのだが、道中で聞く様々なお話と知識に期待をして敢えて申し込んだ。 山の中では当然電波が通じないため、その場でスマホを使って目の前の植物や森の構成を調べることはできない。気になったことを質問すればすぐに答えてくれる経験豊富なガイドさんは、その土地をより深く知るにはとてもありがた

        屋久島に行ってきた話⑥

          屋久島に行ってきた話②

          「島のことを全く知らない人からは「屋久島って人が住んでるの?」と訊かれることもしばしば。 屋久島の人口は1万人少しと規模は決して大きくないが、島内2つの港をそれぞれ拠点とする地区が存在しており、小中高までの学校も揃うれっきとした有人島だ。面積は504.9km²とあるが、淡路島の面積が592.2 km²であることから見ても、それなりに広い面積を有する島であることがわかる。ぜひ改めて地図も見てほしい。 海と里屋久島に到着した初日は毎度島内を巡ることにしている。車が無ければ立ち寄

          屋久島に行ってきた話②

          屋久島に行ってきた話①

          平社員の身分を最大限に活かして上司に仕事を押し付け、三日間の有給を捥ぎ取ってGWに屋久島を訪れた。 今回の訪問は実に7年振り4度目となる。 沖縄にも石垣にも行ったことがないのに、屋久島に行く回数だけが増えていく。何故ならば「好きだから」なのだが、正直なところ何故好きなのかは未だにわかっていない。 そうして屋久島の虜となっていく者のことを巷では「ヤク中」と呼ぶらしい。その成れの果てが移住者であり、登山などのガイドを務めるほとんどの方がこれに当たるそうだ。 島民はさほど屋久島

          屋久島に行ってきた話①

          「匿名写真展」とはなんだったのか

          ①前書き 2023年7月19日~24日 「匿名写真展」という名の一風変わったコンセプトを打ち出した展示を主催しました。 展示閲覧の流れは以下の通り。 1.作者や解説の掲示を一切行わず、来場者には自由に展示をみてもらう 2.展示全体について または個々の作品に対して自由に感想を書いてもらう 3.感想と引き換えに作者名や作品解説を記述したリーフレットを渡す 4.作品解説を読みながらもう一度展示をみてもらう 果たして展示作品の作者名やステートメントを掲示しない写真展が持つ意

          「匿名写真展」とはなんだったのか

          デザイナーが自分の写真を考えた話

          こんにちは! Shingoです。 本職プロダクトデザイナーで、写真はアマチュアですがしばしばお仕事をいただいている者です。 デザインに関する観点や絵を描くことにおいてはプロ。写真はそこそこ。 まあざっくりそんな人間だと思ってください笑 デザインに携わって12年、写真を真面目に取り組むようになって5年が経ちました。(初めてのカメラを買ったのはデザインと同じく12年前) こんな前置きをしたものの、実は今年で僕はデザイナーを卒業します。 そして現在Instagramでメイン

          デザイナーが自分の写真を考えた話