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屋久島に行ってきた話②

「島のことを全く知らない人からは「屋久島って人が住んでるの?」と訊かれることもしばしば。
屋久島の人口は1万人少しと規模は決して大きくないが、島内2つの港をそれぞれ拠点とする地区が存在しており、小中高までの学校も揃うれっきとした有人島だ。面積は504.9km²とあるが、淡路島の面積が592.2 km²であることから見ても、それなりに広い面積を有する島であることがわかる。ぜひ改めて地図も見てほしい。

屋久島でも夢は買える。高額当選も出ているらしい

海と里

屋久島に到着した初日は毎度島内を巡ることにしている。車が無ければ立ち寄りにくい素敵なスポットが島の外周には点在している。

島のどこかでは必ず雨が降っている

ウミガメの産卵地としても有名な「永田いなか浜」もこの一つ。
先述の通り、屋久島は花崗岩が隆起して生成された島であるため、固有の土壌が存在しない。実は、このいなか浜の砂は花崗岩が細かく砕かれていった成れの果ての姿。

靴を脱ぎ、波打ち際に一時間ほど何も考えずに立ち尽くす。来島初日に毎回行う僕のルーティン。山に入る前の儀式のようなものだ。
アーシングなどともいうそうだが、それは後から知った。

思えば、この浜に来る時はなぜか毎回濃い曇天が広がっている。

目を閉じていれば、やがて波や風の音が遠くなっていく。まるで眠っているかのような無の境地に達するうちに、気付けばかなりの時間が経っていることに気付く。信じがたいかもしれないが、一時間などあっという間なのだ。

そろそろ町の方へ戻ろうとした時、雲が割れ始め、水面がキラキラと輝き出した。
僕はこれを見て今回もきっと良い旅になることを無性に確信する。


理屈ではない何かが、ここでは平然と発生しやすいことを僕は過去の旅から知っている。

向かいには口永良部島が見える。沖を照らす陽光はやがて浜に達した

いなか浜を後にして、宿泊先のある安房の町まで向かい、レンタカーを返却した。満タン返しの給油量はわずか3.6L、740円。

島の東側に位置するこの安房地区は、もう一つ栄えている宮之浦地区に比べて町の規模は小さいが、そのローカル感が心地良い。何より美味しいお店も多い。
こちらにも毎度行きつけの居酒屋レストランがある。一人で行けば案内されることが多い奥手のカウンター席では、この日もすでに山から下りてきた人、僕と同じようにこれから登る人、各々が出揃って様々な情報交換が行われた。

程なくして空いた隣席に若い二人の男性が入ってきた。社会人二年目で屋久島に来るのは初めてだと言う。
二人は学生の頃の友達だが、今はお互い遠くに住んでいる。それにも関わらず年に一度は山に一緒に行くらしい。素敵な仲だ。

若い二人の旅を邪魔するわけにもいかない。
ここは程ほどにしておくところだ…。
何やら二人が注文したグラタンが美味そうだ…。

「グラタン一つお願いします」
…なんだかんだ会話が続く。


屋久島の焼酎と言えば三岳が有名だが、こちらに使用されている芋は鹿児島本土産。愛子に使用されている芋が屋久島産。必ず覚えておくように。ちなみに三岳は原酒が圧倒的に美味い

翌日は早朝から山へ向かうので、早く休むべきところを、どうしても酒が進んでしっかりと楽しんでしまう。行程の都合上、荷物をどこかに預けることはできず、三泊四日の装備を全て抱えて歩かねばならないので、瓶のお酒を買って帰るなど悠長なことはできなかった。それならば今ここで飲むしかない。
…しかたない、しかたない。


予めチェックインを済ませておいた民宿に戻ったら、朝に着ていく服装をバッグから取り出してしっかりパッキングを済ませ、この日は程なくして眠りについた。

③へつづく…

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