見出し画像

月見そばで父親を思い出すって話

月見そば

かけ蕎麦に生卵を落としただけ、安くてどこの蕎麦屋にもある。
黄身の味がそば汁に溶けて、それが美味しくて大好きなメニュー

天ぷらもないし、白身が嫌いな人は苦手という人もいる。
自分はどうしてこの蕎麦が好きなんだろう?とふと思った。

あ、父さんだ。
そう思ったので、忘れないようにnoteにしてみた。

父は戦後に裸一貫から会社を興して大きな会社になった。
それはそれはお金持ちになって、そしてバブルですべてを失った。
我が家には借金が残って幼い僕でも「うちは苦しいんだ」と薄々感じるような雰囲気だった。(思うに子どもは親が思っている以上に雰囲気で察する)そんな父は悲しみに暮れるような人ではなく前向きだった。前向き過ぎて僕が生まれたときに肺気腫で余命3年宣告をされても25年近く生きて立派に平均寿命を超えて数年前に亡くなった。(死ぬもんかと思ったんだ)

そんな父と蕎麦屋で食べた月見蕎麦が本当に美味しかった。

田舎の潰れかけの蕎麦屋だし、
天ぷらついてないし、高くもない。
それでも小学生の僕によっては父と一緒に食べる蕎麦が美味しかった。

その一杯の月見蕎麦がどういうものか、
当時の僕は分かっていなかったからかもしれない。

30歳を超えて家の借金は無事に完済した。

その後、僕は会社を興して今日もなんとか頑張ってる。
駅の立ち食い蕎麦屋で立ち上がる月見蕎麦の湯気を見ながら、
数年ぶりに父と会話した気がした。

「まだまだ頑張ろう」と思った。

90年生まれの社会人4年目。日々デジタルなマーケティングをしてます。ハーフで、元ひきこもりで、映画とハイボールが好き。