白杖と音声ナビで 6000 キロ歩いた男

56歳までメーカーで研究開発系の業務を担当 早期退職して自営。65歳ころから目が悪くな…

白杖と音声ナビで 6000 キロ歩いた男

56歳までメーカーで研究開発系の業務を担当 早期退職して自営。65歳ころから目が悪くなって白杖で歩いています。以後、視覚障害者の移動支援に関する開発のまねごとを続ける。老後の生き方はプログラマさんと合作でつくった音声ナビでは累計6000キロは歩いております。

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【8】 皆が満足できる視覚障害者用歩行ナビが出てこない理由

「お金を払っても使いたい、と思えるほど役に立つ視覚障害者用歩行ナビは、まだ存在しない。なぜか。 最大の理由は、晴眼者用に作られたナビの、ユーザインターフェイス部分を音声化した程度では性能不足、ということになります。 第1章 視覚障害者用歩行ナビの実情 『1-1』  視覚障害者用歩行ナビの実情  「新しい音声ナビが出た」と期待をいだいて試して見たら、代わりばえのしないシロモノで、またしてもがっかりした、という視覚障害者は多いかと思う。 晴眼者むけのナビでは 「実際の歩

    • 【7】自作した音声ナビではどのように経路地図を作るか?

      白杖で歩く人を音声でナビゲートするためには、既製品の、つまり晴眼者を前提とした歩行地図では役不足であることはすでに述べた。 要約するなら ① 精度・分解能が足りない。 ② 希望の道が地図に載っているとは限らない。 ③ 自分好のみにカスタマイズできない。 では、自作した音声ナビ「お散歩の友」においては、どうやって経路地図を作っているのか。 2つの方法について説明します。 【自分で歩いて作る】 お散歩の友 にも ナビレク にも自分で歩いてその経路を取得・保存する機能があり

      • 【6】自作音声ナビにおける誘導の手順

        本稿では、友人とゼロから開発した音声ナビ「お散歩の友」で使っている誘導の手順について書く。 【背景】 私はさらに視力が低下しても、少なくも自宅周辺を一人で歩けることを欲した。 私も、開発パートナー氏も、カーナビは、使ったことがある程度で、特に詳しくはなかった。 同氏は、プロのプログラマーであったが、スマホアプリは経験がなかった。 よって、2人とも、既存のナビやスマホのユーザーインターフェイスに呪縛されることはなかった。結果敵にこれはプラスに作用した。 【外部地図によ

        • 【5】視覚障害者用ナビでは、リルート機能はむしろ有害

          あるナビの紹介を聴いていたときは、リルート機能は便利だと思った。だが、実際に歩いてリルートさせてみると、無用なばかりか危険ですらあることがわかった。 【リルート機能とは】 カーナビで、ナビが案内する経路とはちがう道をある程度以上すすむと「リルートします」と言って、案内経路を変更する。 そのときのアルゴリズムは「Uターンすることなく最短で最終目的地に行ける」である。 運転する人なら下記の経験があるはずです: ① 違った道に入ったとき、しばらくは無音になる。 ナビのアル

        【8】 皆が満足できる視覚障害者用歩行ナビが出てこない理由

          【4】視覚障害者はタイムラインの上で生活している その2

          いうまでもなく、われわれはX、Y、Z軸と時間軸で定義される4時限空間で生活しています。 しかしながら視覚障害者は、白杖のリーチより先にある物体は直接的には知覚することができません。必然的に、時間軸のもつ重みが相対的に大きくなります。 この事実は、経験してみないとなかなか理解しづらいと思います。たとえば、同行者と駅のホームを(緊張しながら)歩いているときに「松本息のあずさががらがらだ」ということばはおおいに迷惑なのです。時間軸の浪費です。 私のナビも望月さんのナビレクも、

          【4】視覚障害者はタイムラインの上で生活している その2

          【3】視覚障害者はタイムラインの上で生活している その1

          視覚障害者用音声ナビで無音は許されない、という話しです。 ミミから得る情報は時間軸の上に配置されています。オシロスコープで音声波形がゆっくり右から左にながれているアレです。 たとえば https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/o105497 という文字列をいちいちミル人はいないでしょう。 ですが、画面が見えないと、すべて音読されるのを待つよりほかないのです。飛ばし身ができないのです。 晴眼者が3時限空間で生活しているように

          【3】視覚障害者はタイムラインの上で生活している その1

          【2】カーナビの呪縛から逃れよ

          私が友人と開発した音声なび、そして、アメディア社のナビレク以外のナビアプリは、私の知る限り、すべてカーナビ類似んの動作をします。 ちなみに、私も、ナビレクを開発した望月さんも視覚障害当事者であり、カーナビ業界の人ではないです。望月さんはアメディア社の社長として日々活躍されているビジネスマンでもあります。 以下、晴眼者用のナビと視覚障害者用のナビの本質的な相違点について述べる。 【ちがい1】 前をよく見て歩けるか否か。 晴眼者用のナビは、基本、迷子にならずに目的地につれ

          【2】カーナビの呪縛から逃れよ

          【1】オトコだけで生理用ナプキンを作るだろうか

          本稿では なぜ多くの視覚障害者用歩行ナビが役に立たないものになるのか、その要因を分析します。 目の悪い人が一人で歩く助けとして、音声で案内するナビアプリがいくつか出ています。ほとんどが無量です。 自分でもちょっと試してみたのですが、とても毎日使う気になれるものではありません。でも、Youtubeを見ても 「使い物にならない」 という投稿はないです。そんな投稿をする動機がないですよね? 私は、友人と独自の音声なびを作り、それで6000キロ歩いております。自宅から大通りまで

          【1】オトコだけで生理用ナプキンを作るだろうか

          初夏の八ヶ岳山麓のシカの鳴き声

          みなさん、野生のシカの鳴き声を聞いたことがありますか? 万葉集にもあるように、シカは秋に鳴きます。 ですが、それ以外の貴説にも鳴くようです。 先日紹介した野鳥の声の動画の途中にシカの甲高い声が入っています。がさがさいう足音も聞こえます。 下記をたたくとじきに数回甲高く鳴きます。 https://youtu.be/sUS8LbZNLy4?t=800 黒四角 シカがなく理由  発情期オス鹿が縄張りを主張するとき  威嚇するとき  警戒するとき https://nara

          初夏の八ヶ岳山麓のシカの鳴き声

          八ヶ岳山麓の野鳥の声をYoutubeに上げました。

          https://www.youtube.com/watch?v=sUS8LbZNLy4 家から1.5キロ上がったところ、緩やかに傾斜した雑木林で野鳥の孤影を録音しました。 バイノーラルマイクをICれこーだにつなぎ、そのまま1時間放置して録音したものです。 画面が見える方のために、あわせて写真をスライドショウで追加しました。おなじ日の朝に撮影したものです。 このあたりは、音声ナビを使って何千回も歩いたところで、どのポイントに立てばどんな景色が撮れるかわかっております。

          八ヶ岳山麓の野鳥の声をYoutubeに上げました。

          屋外における視覚障害者のスマホの使われ方

          私はスマホの画面が見えない視力になりつつあります。並行して、友人と音声なびアプリをゼロから開発し、それで毎日歩いております。 その体験から 「視覚障害者を前提としたアプリ、とりわけ屋外で使うアプリを開発するにあたっての留意点、あるいはノウハウをまとめてみました。 最初に結論を言うなら「開発者自身が目隠しをして使えないようなアプリは、視覚障害者も使えない」ということです。 トヨタの車の設計者は、だれよりも一番、自分で運転して確認するはずです。 開発者は、動作原理はもとより

          屋外における視覚障害者のスマホの使われ方

          「障害者との共生」はバイラテラルであるべき

          共生(INCLUSIVENESS(という耳障りのよい言葉があります。 障害者の中には、これを「健常者が障害者を理解し、助けること」と理解している人がいます。 これに大志、私は、障害者が健常者のことに思いを馳せることも共生のうちだと考えております。バイラテラルです。 社会コスとはすべての納税者で分担するしかなく、優先度をつけ、効率の最大化をはからなくてはいけません。障害者以外にも困っている人はおおぜいいます。 (普通名詞としての)コード化点字ブロックは、上記の条件に 外れます

          「障害者との共生」はバイラテラルであるべき

          レーザーを使った転落予知装置の模型、襟元に装着

          先に紹介したレーザーセンサーは、そのままでは目の悪い人が身につけて 歩くのには向いていません。あくまで原理を確認するためのものです。 そこで、現実的に使えそうな小さくまとめたダミーを作ってみました。単なる模型で、動作はしません。(写真) 以下、構造を説明します。 ICレコーダーの、長さ方向をやや短くしたような箱を、横位置にします。  左右の端面にベルトをつけて、えりモトの位置になるように首から提げます。 本体のボトムには 5ないし7個のレーザーダイオードが並べて配置

          レーザーを使った転落予知装置の模型、襟元に装着

          視覚障害者むけ遠隔サポートサービス、AIRA

          米国ではAIRAというアイコサポートに類似したサービスが提供されています。というか、アイコの方がAIRAに乗っかっている、というのが正しいのですが。 https://www.aira.io/ ビデオ使った視覚障害者の遠隔サポートです。どちらも有料です。 下記は米国の動画ですが、どんなものかよく分かります。 https://www.youtube.com/watch?v=fMhNhpTJ9sw https://www.youtube.com/watch?v=BHiIP

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          「車の自動運転の開発は困難に直面」に思う

          海外をみても、日本をみても、実にいろんな音声ナビが登場していますが、どれ一つとして定番になるほどは普及していません。視覚障害者用の話しです。 り理由は「性能不足」です。 「こんなもので歩けるワケがない」 というのが真の声です。 そのまた理由は 晴眼の歩行者用のナビを音声化したのではだめ」ということになります。 分かり安く説明します。 現在のカーナビのスタート時には 「前方よく見て、実際の状況にあわせて運転してください」とリマインドします。晴眼の歩行者用のナビもおなじで

          「車の自動運転の開発は困難に直面」に思う

          レーザーを使って路肩からの転落を予知する

          旧友の池上さんと力をあわせ、下記を試作しました。 https://www.youtube.com/watch?v=jb0H-rIhZd4 視覚障害者が転落するときのリスクは衝突のリスクより10倍はヤバイです。怖いです。 夜盲症の人は、暗いところがわからないので、懐中電灯を使って歩くのですが、それでも路肩から落ちてしまいます 存在するものを見つけるのは容易だけど、下り階段や穴など、存在しないものを見つけるのは難しいです。普通の deep learning では無理です。

          レーザーを使って路肩からの転落を予知する