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著名デザイナーのマル秘を集めに集めた「マル秘展」がすごい

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

仕事終わりや休日は興味の赴くまま美術展などに行くことが多いのですが、見た展示会で「これはすごい!」と思ったものを不定期にCOMEMO上でも紹介しています。ちなみに、私的2019年のベストは「カルティエ 時の結晶」展でした。

2020年も心動かされる展覧会との出会いが楽しみでしょうがないのですが、最近では「マル秘展」が素晴らしかったです。これは「日本デザインコミッティー」に所属する26名のデザイナー・建築家によるスケッチや図面、模型などの「原画」を集めた展覧会。誰もが知っているような著名な方々が「これ見せちゃってもいいの!?」というレベルで思考プロセスがわかるメモやプロトタイプ等を大公開。普段は最終完成品しか見る機会がないため、大変に貴重な展示だと思います。

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東京・六本木ミッドタウン内にある「21_21 DESIGN SIGHTギャラリー」。安藤忠雄氏による建築が特徴的です。ギャラリーのディレクターでもある三宅一生氏の服づくりのコンセプト「一枚の布」に着目し、一枚の鉄板を折り曲げたような屋根が目を引きます。長さ54mにもおよぶ鉄板を折り紙のようにした屋根ももちろんのこと、日本最長の複層ガラスなど、世界屈指の日本の技術が結集。そのような地で日本を代表するデザイナーのマル秘が公開されています。

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日本デザインコミッティーは1953年に設立。銀座松屋のサポートにより百貨店内にコミッティーメンバーがセレクトした品を置く「デザインギャラリー」を開設。現在のセレクトショップの草分け的な存在です。これまで各分野を代表するデザイナー、建築家、評論家が自主的に参加し、現在は40代から90代まで26名のメンバーで構成されています。

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会場入口に設置された「デザインギャラリー」の歴代のポスターやDMが展示されています。これだけでも、日本の戦後デザインの歴史が垣間見える貴重なものです。

続く部屋ではメンバーがスケッチをする様子を映像で紹介。スケッチの実物や筆記用具なども一緒に展示されており、まさに「原画が生まれるところ」を追体験できるように構成されています。デザイナーの頭の中にある想像が、手と筆記具を介して現実に投影されていく様はつい見入ってしまうほど。1つ1つの線が重なり、形として浮かび上がってく。シンプルなプロセスだけに、各デザイナーの個性が感じられます。

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圧巻なのが、原画の展示スペース。ひとりひとつのケースにはデザイナーごとにメモやスケッチ、道具、プロトタイプなどが収められ、まるで実際にデザイナーの机を見ているような展示となっています。また会場にはどのように見ればいいかのガイドが掲示してあり、次の6ステップが紹介されています。1)分野ごとの方法の違い、2)デザイナーごとの方法の違い、3)筆記用具や道具、4)デザインの質の変化、5)デザイナーの考え方、6)原画を観察してスケッチ。実際に会場内では、デザイナーもしくは美術学生と思われる来場者が熱心に写真をとったりスケッチ・メモをしている姿が見られました。デザインの勉強をしている方々にとっては、またとない機会のはずです。

残念ながら私はスケッチなどはできないのですが、どのように製品になっていくのかのプロセスを見ることが非常に面白かったです。展示も広く知られているようなデザイン・製品も数多くあり、デザインを専門にしていない人でも楽しめる工夫がされています。

たとえば、これ。

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誰もが見たことある、アノ容器です。デザインとしても大変優れていると思いますが、ウエストのくびれにも実は意味があるのです。内容量が少ないため、まっすぐにしてしまうと一瞬で一気飲みができてしまう。くびれを設けることで、一気飲みしたとしても一回止まるようになっています。これにより最低でも二口はかかるということで、少しずつ味わいながら飲んでほしいという思いを叶える構造となっています。

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上記は松永真氏のコーナー。ティッシュの「Scottie」(スコッティ)など、広く知られるロゴデザインや企業CIで有名です。カルビーやバンダイなどのロゴがどうやって最終形になったか、その流れも見ることができます。年ごとのメモ帳のボリュームも圧巻!日々の膨大なインプットとアウトプットから、広く愛されるデザインができているのだなぁと思います。

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本会場の照明も担当した照明デザイナー・面出薫氏による「東京駅丸の内駅舎ライトアッププロジェクト 2012」のコーナーでは、照明計画の素案と共に検討の際の建築模型も展示されています。スイッチによりどのような照明効果が得られるかを、来場者がいろいろ試せるようになっています。

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隈研吾氏のコーナーでは、まもなく開業するJR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」駅のスケッチやメモ書き、折り紙を用いたプロトタイプが多数展示されています。日本の伝統的な折り紙をモチーフとしつつ、軽くて強度のある構造を模索した経過が感じ取れます。

一回では消化しきれないほどの濃厚なデザイン体験。ぜひ、二度、三度と繰り返し見てみたい展示会でした。これだけのものを公開してもらい(絶対に大変な交渉だったはず)、かつ展示にまとめきったディレクターの田川欣哉氏(Takram)に敬意を評したいです。

21_21 DESIGN SIGHT 企画展「㊙︎展 めったに見られないデザイナー達の原画」会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
会期:2019年11月22日(金) — 2020年3月8日(日)
開館時間:10:00 — 19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日(12月24日、2月11日は開館)、年末年始(12月26日—1月3日)
入館料:一般 1,200円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
特別協賛:三井不動産株式会社
特別協力:株式会社松屋
展覧会ディレクター:田川欣哉
企画協力:日本デザインコミッティー
グラフィックデザイン:佐藤 卓
会場グラフィック:藤巻洋紀(TSDO)
会場構成:中原崇志
テキスト:土田貴宏
映像:ドローイングアンドマニュアル

(公式HPより抜粋)

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※ 掲載写真はすべて筆者撮影。

#COMEMO #NIKKEI

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