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全ては、自分の"思い込み"である

 前回の続き。いかに、我々は物事を「知覚」しているか。どのように自身の脳で捉えて、認識・解釈しているのか。そして、それは正しいのか。正しいって何なのか。

 どうせ人生を生きるならば良い結果がほしいし、理想や目標を掲げ、それが達成するよう、1日に1mmずつでも進歩したい。自分自身の思い込みによって結果が変わるとするならば、その思い込みを変えていきたいと思うのは、自然な事。自身の思い込みを変えて、望むような人生を歩みたい。そんな意思を持つ人にとって本書は「より良く自分を扱うヒント」が隠されているように思う。

 思い込みが、現実をつくっていく。思い込みが、自身の行動を変え、結果を変える。ネガティブに思考すれば、ネガティブな事象が起こる確率が高まる。反対にポジティブに思考すれば、ポジティブな行動(そもそも行動の試行回数が増える場合も多い)が生まれ、ポジティブな結果を生み出すこともある(もちろん結果が伴わないことも多いし、そんなに人生甘くない。でも行動からしか結果が生まれないことも事実といえる。)

 わたしたちは思い込みによって、今やるべきこと、考えるべきことを決め、次にするべきことを決めている。
 やるべきことや考えるべきことを決めているだけでなく、やるべきでないことや考えるべきでないことも決めている。思い込みそれ自体は、正解でも間違いでもなく、ただそれが、自分という人間を形づくっているだけだ。

 人間は、生まれで決まるのか、それとも環境で決まるのか。それは、設問自体の設定が間違っていると、著者は述べる。

 それは設問自体が間違っている。神経の発達に関する研究によると、どちらかひとつというわけではないからだ。しかも、生まれと環境の組み合わせですらない。むしろ、生まれと環境は、常にお互いに環境を与えあっているのだ。遺伝子の役割は、ある特定の性質を伝えることではない。遺伝子が伝えているのは、細胞と周りの環境との間で行われるやりとりのメカニズムだ。つまり遺伝と発達は、本質的にエコロジーの影響を受けるプロセスだと言える。

想像上の知覚は、繰り返し想像することでより本物らしくなる。それをコントロールできれば、脳を作り出す主観的な現実を変えることができる
 今日ポジティブなことを考えれば、統計的に明日もポジティブなことを考える確率が上昇するということだ。なんだかスピリチュアルめいた話だと思うかもしれないが、科学的に証明できる現象だ。

人はだれでも、自分なりの脳の癖がある。

 人間は自分の意見しか聞かない。私たちは何らかの思い込みを持っていて、その思い込みを裏付けるような証拠ばかりを探すことで、その思い込みをさらに強化する。人間のこの傾向は、議論の方法から人間関係、職場の振る舞いまで、人生のあらゆる場面で顔を出す。確証バイアスは記憶にも影響を与え、自分自身に対する思い込みを裏付ける出来事ばかりが記憶に残る(そして自分自身に対する思い込みは、大抵間違っている)
 思い込みはあなたそのものだ。それらの思い込みによって、外界からの刺激の重要性を判断し、そして自分にとっての現実を定義する。自分や他人をどのように知覚し、その結果としてどのような人生を送るかを決めている。
 私たちは生まれた順番に1番合った態度を身に付けていく。例えば最初に生まれた子供は、弟や妹の世話をすることで、親の愛を勝ち取ろうとするかもしれない。そのため、真面目で、権威を尊重する性格になる。対照的に後から生まれた子供は、親に認めてもらえるような自分の隠れた才能を磨こうとする。そのため彼らはよりオープンで冒険を好み、権威に対してそれほど敬意を払っていない。家族というエコロジーの中で成功を手に入れる戦略が、やがて知覚の思い込みになり、試行錯誤をして頭の中に記憶されるのだ。
 様々な経験を通して脳の中で育った思い込みは、あなたの知覚に影響与えるだけの存在ではないということ。むしろ思い込みはあなたそのものだ。それらの思い込みによって、外界からの刺激の重要性を判断し、そして自分にとっての現実を定義する。自分や他人をどのように知覚し、その結果としてどのような人生を送るかを決めている。
 実際の知覚の種類は無限ではない。それどころか、むしろかなり少ない数だ。なぜそうなるのか?それは経験から生まれた思い込みがあるからだ。経験から生まれたバイアスによって、思考や行動が生まれる神経伝達物質の通り道(シナプス)の数が制限される。そのため刺激(インプット)と、その刺激から生まれた神経のパターン(アウトプット)、つまり知覚は、脳内のネットワーク構造の制約を受ける。
この電気化学の構造は、試行錯誤を通して脳を作っていくプロセスそのものだ。経験によって、可能な反応が決まってくる。その経験は、ほんの数秒の経験かもしれないし、数千年にわたる経験かもしれない。または豊かな環境での経験かもしれないし、貧しい環境での経験かもしれない。つまり人間の反射弓は、肉体の中だけでなく、エコロジーの中にも存在するということだ。
進化の過程で獲得してきた経験と、自分自身による経験を組み合わせると、あなただけの思い込みができあがるのだ。その思い込みのおかげで生き残ることができるのだが、同時に思い込みのせいで、反応を生み出す電流が大幅に制限されることもある。つまり、アイディアが制限されると言うことだ。
試行錯誤の経験とは、つまるところ可能性の空間を探検することに他ならない。
どんな時でも可能性は限られていて、小さな一歩の積み重ねで未来が作られていく
脳の吻側帯状回と呼ばれる部位が、周りに合わせるという反応を生む物質を分泌している。また、これは集団的な尖度と考えることもできる。これが意味するのは、周りの人の可能性の空間が、自分の可能性の空間に影響与え、自分だけなら自然に生まれるような知覚が制限されると言うことだ。
自分の脳の働きを自覚していれば、いくつかある選択肢の中から、自分で反応を選ぶことができる。自分が今知覚しているものを知覚する理由がわかっていれば、選択肢が手に入る。そして選択肢があると言う事は、意識的に選べると言うことだ。
新しいものの見方はまず自覚することから始まる。知覚する自分を知覚することだ。
理解することによって類似点が見つかり、バラバラだったデータにまとまりができる。人は理解した瞬間に脳にかかる負荷が小さくなるのを感じることができる。不安やストレスも小さくなり、心も落ち着くものだ。
 伝統的な学校では、依然として計測可能なこと(暗記学習で答えが出ること)を教えているが、これでは子供に理解すると言うことを教えることはできない。暗闇で鍵を落としたのに、街頭で寺された場所で鍵を探すのと同じようなものだ。私たちは暗闇を無視して、明るく照らされた場所だけで、せっせと定量化できるデータを集めている。ビックデータの構築が可能になったのは技術の進歩のおかげだが、データを集めることそれ自体は簡単だ。難しいのは、なぜの問いに答えること。そして理解することだ。大切なのは、「たずねる価値のある質問をみつける」こと。良い質問は、無意味な情報から現実を作るときの脳と同じ働きをする。
 大きなひらめきは、いきなり訪れない。大きな飛躍のように見えるかもしれないが、長い時間をかけて、小さなアイディアを積み重ねた結果がひらめきにつながっている。自分の可能性の空間から、人は一足飛びに、外に出ることはできない。過去においてベストだった選択と言う脳の回路に、思考や行動を制限されているからだ。
 Appleの社員は、過去の思い込みに何故と問いかけることで新しい思い込みを獲得していった。なぜ?と問いかける度に彼らの脳の構造が変わり、可能性の空間が新しくなった。1人の人間だけでなく、集団としての可能性の空間が変わったのだ。
革新的なアイディアは、小さな質問の積み重ねだ。
あなたには選択肢がある。創造的になることを選べば、未来を変えることができるだろう。
創造的になっている脳では、皮質が活発に動いている。つまりアイディアをたくさん生むほど、脳の温度も上がる脳内のネットワークが広がり、つながりと相互作用が増えている状態だ。そして脳の活動を抑止する力も小さくなっている。ちなみに精神拡張の作用があるドラッグを摂取した時も同じような状態になる。

インペリアルカレッジロンドンで、あるチームが行った研究で明らかになった。

 通常であれば人が何かを見るとき、脳内の活動は1次視覚野と呼ばれる部位に集中している。ところがLSDを摂取した後で同じものを見ると、視覚野がより活動的になるだけでなく、それ以外の多くの部位でも活動が起こる。言い換えると、LSDによって脳内の活動範囲が広がり、脳の様々な部位がつながったということだ。この生理的な変化と並行して、LSDを接種した人の多くは、エゴが消えて周囲との一体感が増したと言う感想を持つ。この一体感が増すと言う効能があるために、カップルセラピーやうつ病の治療で、少量の精神確証トラックが使われることもある。薬の力で脳内のより多様な部位がつながると、頑固な思い込みが消えて、新しい視点を獲得できると言う。可能性の空間が広がり、その結果として未来の過去が変わり、未来の知覚も変わるのだろう。
 思い込みを疑い、可能性の空間を変えるだけで良い。こう考えると、人間を創造的なタイプとそうでないタイプに分けるのは、間違いだということがわかるだろう。
 なぜの質問を積み重ねることで、自分の見るという行為を客観視できるようになる。なぜと言う質問は、頑固な思い込みを崩す時だけでなく、それを見つける時も有効だ。なぜと尋ねることで、自分の中に複数の現実、矛盾した現実を同時に持ち、それぞれを検証することができる
 ある状況に向かうときに、自分の思い込みを自覚していれば、たとえその思い込みが間違っていても強いネガティブな感情は持たないと言う事だ。自分の思い込みの正体がわかっていれば、感情的なリアクションも小さくなる。私のかつての同僚が、ある状況で人がどのくらい幸せになる日を幸せを感じるかを予測する公式を発見した。ここでカギになるのが、その状況が期待とかするかどうかということだ。それに加えて期待通りの状況になるだろうと期待すると、その状況を楽しみにする気持ちがさらに大きくなると言う。つまり幸せとは、何かを楽しみにすることの中にあると言うことだ。幸せを感じる脳内物質のドーパミンは、何かいいことや楽しいことを期待しているときに1番多く分泌される。そして実際にその状況になるとむしろドーパミンは減少してしまう。

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