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【エッセイ】自転車日本一周記8

北海道は広かったんだよ

北海道で旅人に会ったのは3人。それが多いのか少ないのかは分からない。あっ。すれ違ったバイカーたちに手を上げて挨拶したことは何度もあったね。でも、実際に話しをしたのは3人。
それを順番に話していこう。

トホダーとの出会い

ひとり目は北海道に入ってすぐのことだ。懸命に歩いている青年がいた。歩いて旅をする人のことをトホダーと呼ぶことをその人から聞いた。
18歳の彼は歩いて北海道を歩くと話してくれた。3ヶ月くらいを目安にしていると言っていた気がする。
北海道の広さを考えれば徒歩で旅することはちょっと自分では難しいように思えた。なぜって、街と街の距離が遠すぎるのだ。1日歩いて人里にたどり着けなかったらと思うと不安でしかたがないだろう。
なぜって。それは北海道を走っていればわかるさ。3日前にこの場所にクマが出ました。そんな看板があるんだ。そんなところで一晩を越す勇気はないよ。きちんと計画すれば可能だろうけれど、そんな細やかさはあいにく持ち合わせていない。

自転車で世界

次に会ったのは同じく自転車で旅している人。でも彼はフランス人だった。日本語はカタコトだけれど話せた。そしてなぜだか一緒になってこちらの言葉もカタコトになった。
違う国の人と話す経験がなさすぎてとまどってしまったのだ。お陰で韓国人ですか? なんて聞かれたりもした。
彼は北海道からさらに北上してロシアに入ると言っていた。
そうだね。なぜだか日本一周をすると次は世界? なんて聞かれることも多い。しかしあんまりその気になったことはない。日本は安全で気軽に旅が出来る数少ない国である。そう思うからだ。

そして3人目は前回の記事に書いた。大阪からの自転車で旅する人。年も近く、時期も同じ。そんな人に出会えたことは幸運だったと今でもそう思う。

他にも出会いはたくさん

がっつり話をした人は少ないけれど、あいさつや。親切にしてもらったことはたくさんある。

例えば根室。
実は寝る場所に困ったことはなんどかある。ちょうどいい場所がみつからないのだ。都会であればあるほど、浮浪者防止なのか、ベンチに横になれないように手すりがついている。あまりに人通りが多いところで寝ているのも気まづいし通報されかねない。だからちょっと大きめの公園を探すのだけれどちょうどいい場所がなかった。
あたりも暗くなって寝る場所に困っていたところ、バーベキューが出来るような場所があって、人の気配もなかった。屋根もついていたし風よけもある。いいところを見つけたと思ってさっそく寝る準備をした。するとだ。
なにんかのグループが現れて隣のテーブルでバーベキューを楽しみ始めたのだ。
めっちゃ焦った。何か言われるかドキドキした。結局そのグループは楽しそうにするだけして、去っていったのだが。帰り際。
「寒いから、火を残しておくよ。こっちを使いな」
と声かけてくれた。
顔すら合わせていないのに。きっと邪魔だだったろうに。傍にあった自転車と寝袋姿を見てそう言ってくれたのだ。

どうやらこのときの北海道は本当に寒かったらしく。5月だというのに氷点下になることも度々あった。それを寝袋ひとつでしのいでいたので。朝。あれ死んでるんじゃねぇか? なんて心配されることも多々あった。そんなときは大げさに伸びをして生きてますよー。なんてアピールをしなくてはならなかったんだ。

他にもコンビニで買い物してたらカラスがカバンを襲ってますよ。なって言われたこともある。大きなカラスが自転車と一緒においていたリュックの中身を掘り出そうとしていた。餌なんて入ってないのに。それも声を掛けてくれなければきっと中身を持っていかれていたかもしれない。

いろんな人に助けられた。それは間違いない。


納沙布岬







5月の北海道

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