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【何度も聴いてしまう】選曲が最高な映画7本を選んでみた【Sound Track】

映画を形づくる重要な要素の一つである音楽。
映画音楽は観客の感情を揺さぶり、映像と同じかそれ以上にその映画を印象付ける。これまでも映画から数多くの名曲が誕生してきた。

『ゴッドファーザー』に『STAR WARS』、
どちらもテーマ曲が名刺代わりといっても良いくらいだ。

そうした映画音楽によくあるのが、劇中の場面に合わせてアーティストの楽曲を流すという演出だ。盛り上がる場面で歌を流すことによって、疾走感を強く感じさせたり、悲しみや嬉しさを煽りたてる。映画をより感動的にする演出として、多くの映画でこの演出方法を見かける。

以前、「映画内の歌が印象的な映画」という特集記事を挙げたが、今回は別の趣旨で記事を作成した。対象にしたのは、劇中の一つの場面だけではなく、映画全体において様々なアーティストの曲を使用している作品。

数ある作品の中でもそうしたアーティスト達の曲をまるでプレイリストのように映画全体とシンクロさせている映画。そうした作り手側の選曲センスが素晴らしいと感じる作品を7本選んでみた。

【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー】

2014年製作/121分/G/アメリカ

選曲センスが素晴らしいと聞くと、この監督の名前が浮かぶ人も多いのではないだろうか。ジェームズ・ガン監督の名を一躍世界に知らしめた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』においても、そのセンスは遺憾なく発揮されている。

子供の頃に宇宙人に攫われたピーター・クイル。地球から遠く離れた場所で彼と故郷と繋ぐのはウォークマンとカセットテープだけ。劇中の至る場面でこのカセットテープの曲が流れるのだが、楽曲と場面のハマり具合が絶妙。

最近だと『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』での選曲も素晴らしかった。
この場面の『Hey』の使い方は最高。

劇中で使用される楽曲は1970年代と80年代のヒット曲。お洒落なタイトルバックとともに流れる『Come and get your love』も格好良いし、エンディング曲の『Ain't No Mountain High Enough』も素晴らしい。個人的には映画開始直後に一瞬にして引き込まれた10ccの『I'm not in love』が最高。

続編にあたる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』も本作に負けず劣らず素晴らしい選曲だ。ジェームズ・ガンは作品内容は当然、そのプレイリストも楽しみにしてしまう数少ない監督の1人だ。

ちなみに最新作となる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』(2023年公開予定)の選曲は2017年から始まっているそう。MARVELが苦手という人も『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は入門編としても最適なので、是非ともチェックしてみて欲しい。

【SOMEWHERE】

2010年製作/98分/G/アメリカ

ロサンゼルスの高級ホテルを舞台に、華やかだが空虚な生活をおくる映画スターの男が、離婚した妻のもとで育った11歳の娘と同じ時間を過ごすことで自身の人生を見つめ直していく…

『お洒落映画』といえば必ずといって良いほど、名前の挙がるソフィア・コッポラ。新作が発表されるたびにサウンドトラックに関するニュース記事が挙がることからも、その音楽センスが注目されている事が分かるだろう。

2010年に製作された本作は、ソフィア・コッポラの父フランシス・フォード・コッポラとの思い出や、2児の母となった自らの経験を投影して製作されておりいわば「私小説」のような作品に仕上がっている。

ソフィア・コッポラならここら辺の作品群のサントラも素晴らしい

Foo Fightersの『My Hero』にAmerieの『1 Thing』、Gwen StefaniやPhoenixなどそうそうたる面子が並ぶが、中でもイチ押しなのがThe Strokesの『I’ll Try Anything Once』。同バンドの『You Only Live Once』のデモ楽曲だが『You Only~』よりも柔らかく暖かな印象の曲調となっている。

ジュリアンのしゃがれた声で優しい歌い方と、ジョニー達がプールで戯れる映像が見事にシンクロし、何とも心地よく切ない気持ちにさせてくれる。何か派手な事件が起こる訳ではないが、このソフィア流のオフビートな作品は「映画を観る」という行為を思い出させてくれるのだ。

【ホワイトライズ】

2004年製作/116分/アメリカ

結婚式を控えたマシューは、街で偶然、昔の恋人リサの姿を見かける。リサとマシューは、かつて深く愛し合っていたが、2年前、リサは突然マシューの前から姿を消していたのだった。彼女の後を追いかけるマシューだったが、彼の前にリサと同じ名前の別の女性が現れる…

元はフランスのサスペンス映画『アパートメント』のリメイクにあたる本作。リメイク元が大好きなので、こちらもチェックしようと思ったのが鑑賞のキッカケ。キャストや演出などは『アパートメント』の方が好きだが、音楽に関しては断然こちら。

『アパートメント』は1996年製作。出演はヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ。
色味や演出はこちらの方が好き。

『ホワイトライズ』のサントラは、StereophonicsにDeath Cab for Cutie、Snow PatrolからMogwai、Mumなど、エモ系バンドから北欧ポストロックまで網羅した充実の内容となっている。ここら辺のネーミングでピンときた方は是非プレイリストをチェックして欲しい。

この中でも筆者が特にやられたのは、The Postal Service による『Against All Odds』のカヴァー。この曲でサントラを購入することを決めたくらいハマった。映画の場面を使用したPVもあるので興味ある人はチェックしてみてくれ(タイトル名リンク先参照)

更にジョーネット・ナポリターノによるCold Playの『The Scientist』のカヴァーも素晴らしい。作品自体も謎めいた展開に引き込まれる傑作なのでお薦めしたい(リサ役のダイアン・クルーガーも可愛い!)。

【ラスト・ナイト・イン・ソーホー】

2021年製作/115分/R15+/イギリス

エドガー・ライト監督作品と音楽の親和性はかなり高い。2004年製作の『ショーンオブザデッド』では、Queenの名曲『Don't Stop Me Now』に合わせて、籠城したパブを舞台に、登場キャラクター達が大立ち回りをするという名場面があるし、2017年の『ベイビードライバー』では、主人公のベイビーの動きが音楽と完全にシンクロしている場面もある(そもそも『ベイビードライバー』の主人公は事故の後遺症で耳鳴りから逃れるために常に音楽を聴いているという設定だ)。

『ショーンオブザデッド』の例のシーンは自分の映画史上最も笑ったシーン。
『ベイビードライバー』を見ると音楽と動きのシンクロがより洗練されている。

エドガー・ライト監督の最新作にあたる本作は、ロンドンのソーホーでデザイナーを志すエロイーズが、夢の中で1960年代のソーホーで歌手を目差すサンディと意識をシンクロさせていき、その内に恐ろしい体験をするという『タイムトラベル×サスペンス』もの。

劇中で使用されるのは60年代のイギリス音楽。これは子供の頃、両親のレコードを聴いて育ったというエドガーライト監督の思い出が起因しているとのこと。劇中では、一つ一つの場面で使用される音楽と場面背景との関連性をもたしているというこだわりよう。

筆者自身は60年代のイギリス音楽を詳しくないために、本作との出会いは新しい発見だった。『Last Night In Soho』(タイトルの由来も映画のエンディングで初めて知った)をはじめ、アニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディが歌う『Down town』、『You're my World』など繰り返し聴いてしまうような楽曲が魅力的。

映画の素晴らしい所は、物語の面白さやメッセージ性だけなく、その国の文化やファッション・音楽、歴史的背景などを知るという新しいキッカケをくれるところにもあると思う。そういう意味も含めてこの作品を選ばせてもらった。

【WAVES】

2019年製作/135分/PG12/アメリカ

選曲が素晴らしいという意味なら、この作品を外すことはできないだろう。『WAVES』の日本での宣伝文句は「プレイリスト・ムービー」なのだから。

プレイリストムービーとは、楽曲が登場人物の感情に寄り添うように使用され、時には音楽が登場人物の心の声を代弁するという演出にちなんだものらしい(ちなみにその言葉自体が存在するわけでなく、日本の配給会社による造語)。

また、名前の由来はユニークな製作スタイルにもある。脚本にあてて楽曲を選んでるのではなく、事前にプレイリストを作成し、そこから脚本を書いていく通常とは真逆の事が行われている。まさに音楽からイマジネーションを導き出した映画といえるだろう。そしてプレイリストムービーという名に相応しく、本作では実に31もの楽曲が使用されている。

Frank Ocean、Kendrick Lamar、Kanye West、Radioheadなど、洋楽ファンなら何かしらの琴線に触れるであろう豪華な面子。筆者個人の好みは、緊迫した場面で掛かるKanye Westの『I Am A God』と、使われたこと自体が嬉しかったAnimal Collectiveの『Loch Raven』。

ある家族の崩壊と再生の物語を描いた本作はその映像美も素晴らしい。トレイ・エドワード・シュルツ監督が描く世界は、美しいだけでなく、胸を刺すような痛みや憤りも感じさせる。135分という時間の中で様々な感情を揺さぶられた。

【スターフィッシュ】

2018年製作/99分/イギリス・アメリカ合作

この映画も今回の趣旨に沿っている映画といえる。何故なら主人公は親友が遺した7本のミックステープを見つけて世界を救うという「音楽」を核とした作品となっているからだ。

本作は監督のA・T・ホワイトが、友人の死と自身の離婚という大きな問題に直面した際、山小屋に一人こもって書き上げた脚本を元としている。そうした経緯のためか本作は非常に内省的かつ難解な構成となっている。

加えてホラー要素もあるため、鑑賞時は音楽に気を回す余裕もなく(ジャンプスケア演出が苦手なので身構えてしまう)、この作品の音楽をじっくり味わうことはできなかった。本作に使用されている音楽を意識したのは鑑賞後。

この映画に使用されているサントラをまとめたSpotifyのプレイリストがあって、改めて聴いてみたらこれが凄く良い。90年代後半から2000年代のオルタナティブやポストロックバンドの楽曲を中心に構成され、映画の作風に合っていたことを改めて感じさせてくれた。

映画のラストで流れるシガーロスの壮大な楽曲(Ekki múkk)も素晴らしかったのけれど、個人的に惹かれたのはSparklehorseというオルタナティヴ系ロックバンド。2010年にバンドの中心人物だったマーク・リンカスが亡くなっているということで、劇中にこのバンドの曲を使ってる辺りに監督の意図が感じられる。

エンタメというよりはむしろアート寄りな作品のため、ハマる人は確実に得選ぶだろう。その分刺さる人には強烈に刺さること必至。セカイ系や考察系の作品が好きな人にこそお薦めしたい。

【トップガン】

1986年製作/110分/アメリカ

最後に紹介するのはこちらの作品。トム・クルーズ主演のアメリカンロック。80年代を代表する傑作として名高い作品だが、サントラも同じくらい評判が良い。

実は今のようなオムニバス形式でヒットソングを入れるようになったサントラは、本作が火付け役だったとのこと。オープニングから流れる『Danger Zone』や、一度聴いたら忘れられない「Take My Breath Away」などいずれも劇中の場面とのハマり具合は抜群。80年代を象徴する楽曲は映画の内容同様気分をアゲてくれる。

5月27日から公開される続編『トップガン マーヴェリック』でもレディー・ガガの新曲がリードトラックで入るなど、サントラ面でも盛り上がるであろうことが期待できる本作。36年ぶりの続編ということでこちらも選ばせて頂いた。未見の人はこの機会に是非本作もチェックしてみては。

【劇中に登場する「歌」が印象的な映画を特集した記事】

今回の記事と少し意趣が異なるが、今回の記事が気になった方はこちらも是非。

【本記事内で紹介した作品の紹介&感想】

今回の記事で紹介した記事の紹介&感想(全てではないけど)興味を持った人はこちらもチェックしてみて。


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