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バンダイスピリッツより展開されているプラモデルシリーズ「30MM」を題材にしたオリジナ…

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バンダイスピリッツより展開されているプラモデルシリーズ「30MM」を題材にしたオリジナルストーリー「30Minutes to Mars」を不定期連載中です。 バンダイスピリッツ様の公式ストーリーとは異なる、あくまで二次創作であることをご理解頂きつつお楽しみください。

最近の記事

30Minutes to Mars第3話「DOG FIGHT」④

漆黒の空に、二色の線が走る。 紅いアルトと、蒼いポルタノヴァ。 紅のアルトE1は、右手に持った両刃のハルバードを。 蒼のポルタノヴァ・アドニスカスタムは、左手の高周波ブレードを。 森林上空を舞う二機は、互いに持ち合わせた近接武器を相手の飛行装置へ見舞わんと、後方を取り合うドッグファイトに突入していた。 双方の軌道が重なる瞬間ごとに、持ち手の都合上、正面からぶつかり合う重金属製の刃が、幾つもの火花を生む。 (航空機乗りの技術が、今になって役立つとはな) エグザマクスの普

    • 30Minutes to Mars第3話「DOG FIGHT」③

      ━━━十一号車上空━━━ 「···少し先行しすぎたか」 フライトバックパック装備のアルトを全て迎撃したところで、気付けばアドニスは、ソロンのスカラバエウスが強襲中の、陸戦艇付近まで進んでいた。 未だ、前方車両の撹乱を担当するポルタノヴァ達は殆ど健在のようだ。 彼らの報告と合わせても、通過した車両中に目標物は無かった。 となれば、これより更に後方の車両群へ、引き続き単機で向かう必要がある。 すでに防衛戦力を陸戦艇へ引きつける事には成功した。 このまま真下に居るだろうソロンや

      • 30Minutes to Mars第3話「DOG FIGHT」②

        ━━━一号車上空━━━ 「アドニス小隊各機に告ぐ。目標上空へ到達。これよりアーティファクト奪取作戦を開始する」 『『了解』』 闇の中、森林地帯上空に浮かぶ機影。 先頭を行くアドニスの号令に応えるのは、背後を翔ぶポルタノヴァ・アピスのレイジー・スラッカー中尉、そしてアドニス機と同じく蒼いカラーリングを纏った、ポルタノヴァ・スカラバエウスのソロン・アーネスト中尉。 両機とも地球の生物を模したアーティファクト、カテゴリー名アニマギアと一体化した機体を繰り、下方からの攻撃を警戒す

        • 30Minutes to Mars第3話「DOG FIGHT」①

          ━━━第4ケイブ━━━ 数日が経過し、いよいよマンザ小隊の所属する、ラーク司令旗下エクスプローラーズ大隊の引越し当日となった。 二十台を超えるアーティファクト輸送車が一列に並び、アイドリングを始めている。積載された大小無数のコンテナがそびえる様は、軽く小山のようですらあった。 普段の任務ではトレーラーで移送されるエグザマクスも、今回は各種資材に荷台を譲り、自らの脚で輸送車と並走する。 もちろん、万が一の襲撃や車両トラブル時に積荷の輸送を引き継ぐため、ケイブ所属の小隊はフル

        30Minutes to Mars第3話「DOG FIGHT」④

          30Minutes to Mars 第2話「悔恨」④

          「レイジー達が火星に?」 「はい。二人とも今はどの部隊にも所属していないようです」 オリンポス山の麓に接岸した、バイロン火星方面軍の拠点、戦艦「エクソダス」内の自室にて。 次なる作戦に向けた部隊再編に追われるアドニスは、遠く離れた知己を頼っていた。 壁に備えられたモニター向こうに居るのは、バイロン空挺部隊時代の部下であり、今は本国の参謀本部に配属中のワイドリー少尉だ。 地球侵攻の先陣を切った空挺部隊では、その戦果と相応に少なからぬ犠牲も出た。 もはや言葉を交わすことの

          30Minutes to Mars 第2話「悔恨」④

          30Minutes to Mars外伝 黒犬街道機体解説2「アルト・ブラックドッグカスタム」

          地球連合軍特務部隊「イマジナリー」所属に所属するワンマンアーミー、コードネーム「ヘルハウンド」が駆るエグザマクス・アルトのアーティファクト改修機。 アーティファクト『魔狼の心臓』の効果により、僅かなりと損傷を負わせた対象を、炎で包む能力を持つ。 この炎は自然界で発生するものとは性質を異にし、本来ならば燃焼するはずのない水中、宇宙空間など如何なる場所であっても発生が可能である。 ヘルハウンドはこの性質を最大限に活用する為、腰部外装に取り付けた有線式遠距離攻撃用クロー装備(

          30Minutes to Mars外伝 黒犬街道機体解説2「アルト・ブラックドッグカスタム」

          30Minutes to Mars外伝 黒犬街道機体解説1「アルト宇宙仕様機(試作型)」

          アーティファクト移送任務の護衛に当たるグレッグ少尉のため、地球連合軍より支給されたエグザマクス、アルトの宇宙戦対応型カスタム機。 狙撃用アーマーのセンサー性能を更に高めた新型頭部ユニットと、360度いかなる方向へも瞬時に姿勢制御を行うため、各所に増設された小型のスラスターが特徴。 地球連合の制式採用機には、アーティファクトの技術がフィードバックされている━━━━━ グレッグ少尉の持論は、当人の預かり知らぬところで、皮肉にも本機が実証している。 連合軍は、いずれ来る宇宙空

          30Minutes to Mars外伝 黒犬街道機体解説1「アルト宇宙仕様機(試作型)」

          30Minutes to Mars外伝「黒犬街道」

          ここはまだ地球軌道上。 グリニッジ標準時が適用される範囲内だ。 モニター端で上下に並ぶ地球時間のタイマーと、その時間に"四十分が加算された"状態で表示されているタイマーとを見比べる。 彼のホームであるドイツ、リムブルクは正午を過ぎる頃合である。 ふと、前方を見やる。 宇宙空間では全ての距離感が曖昧になってしまうが、モニターの計測表示を頼るのであれば小型戦艦数隻分の距離を置いたあたりか。 漆黒の空間内に、場違いなほど強い輝きを放つ、三角形状のフィールドがある。 時空転移

          30Minutes to Mars外伝「黒犬街道」

          30Minutes to Mars 第2話「悔恨」③

          火星の各地に点在する「ケイブ」(秘匿性に優れる洞穴や遺跡群を利用する機会が多いことから、そう呼ばれる)。 エクスプローラーの活動拠点、アーティファクト保管庫としての役割のみならず、長い任期を地球と異なる環境で過ごすエクスプローラー達のストレスを軽減する為、各ケイブでは様々な施策が取られている。 地球時間での日中に相当する時間帯には洞窟の天面に擬似的な青空を投影するスクリーンを備え、イミテーションではあるが樹木や芝生を再現したレクリエーションスペースを。 酒やタバコといった

          30Minutes to Mars 第2話「悔恨」③

          30Minutes to Mars第2話「悔恨」②

          バイロン火星方面軍の拠点は、かつて地球人が神々の宮殿の名を冠して呼んだ巨大火山、その裾野付近に接続した、都市ひとつ分の居住スペースを内包した巨大艦「エクソダス」である。 内部にはアーティファクト確保を任とする星遺物回収大隊をはじめ、地球方面攻略からは外れた後方支援部隊が数多く存在していることや、独自の指揮系統を持ちながらも、通常の軍隊同様に階級制度が存在することなどは地球側からも推察されている。 が、保有している戦力とその供給源、地球側のようなゲートを利用した輸送ルートを持

          30Minutes to Mars第2話「悔恨」②

          30Minutes to Mars第2話「悔恨」①

          また一機、撃墜された。 空中で動力を失ったアルトは、黒煙をたなびかせた鉄の塊となり、眼下の市街地へと墜落していく。 数秒遅れて下方から、大質量の鉄塊が激突した轟音と、瓦礫や鉄クズの混ざった粉塵が巻き起こる。 その場に居たであろう住人達の悲鳴や恐怖に引き攣る顔は、それらの音と粉塵に掻き消された。 彼等の最期の瞬間を直視せず済んだことに後ろめたい安堵を覚えながら、再度前方へ向き直る。 機内サブモニターを一瞥すると、後方の市街では、先に撃墜された二機によって引き起こされたの

          30Minutes to Mars第2話「悔恨」①

          30Minutes to Mars機体解説4「アルトE2」

          アルトE2(エクスプローラーズ・ツー) フランク機 第113エクスプローラーズ小隊のスカウト(斥候)兼ストライカー(攻撃手)であるフランク・マルコ専用アルト。 標準的なアルトの近接戦闘用オプションアーマー仕様となり、アーティファクトをはじめとするこれといった特殊兵装を持たない。 しかし元アマチュアボクサーであるフランクの格闘センスによって、そのポテンシャルはほぼ理想値まで引き出されていると言えるだろう。 機体の損傷を有り合わせのパーツや下位クラスのアーティファクトで補う

          30Minutes to Mars機体解説4「アルトE2」

          30Minutes to Mars第1話「火星」④

          『隊長!隊ちょ···ウオォォォォォォ!!??』 目的地まで半ばほど進んだ2機に、悲鳴交じりの通信が飛び込んできた。 『フランク!?どうした、無事か!』 ただならぬ声に、身を乗り出しながら問いかける。 『すまねえ隊長、やっちまった!奴ら、アーティファクトを起動しやがった!こりゃクラスAの化けも···!!』 悲痛な叫び声にノイズが重なる。 と同時に、先ほどの比ではない激しい振動が洞穴全体を震わせた。 「クラスAだって!?」 必死で姿勢制御を試みるジミーが、悲鳴に近い声

          30Minutes to Mars第1話「火星」④

          30Minutes to Mars機体解説3「ポルタノヴァ アドニス機」

          ポルタノヴァ アドニス機 バイロン火星方面軍、星遺物回収大隊に所属するアドニス・ドライブ少佐の駆るポルタノヴァ改修機。 指揮官特権としてパーソナルカラーに改められた他、一般的なポルタノヴァとの主な相違点は指揮能力向上の為に備えられた頭部のブレード型アンテナ、両肩のバインダーシールド、推進力を大幅に強化した専用バックパック等。 これら兵装はアドニスの主戦場である、空での戦闘を想定したものだ。 大推力での飛行時には、先鋭的なアンテナ形状や可動式のシールドにより、常に最適な空

          30Minutes to Mars機体解説3「ポルタノヴァ アドニス機」

          30Minutes to Mars第1話「火星」③

          残る2機へと肉薄するフランクの機内に、新たな熱源接近の警告音が響いた。急制動をかけても間に合わないと瞬時に判断し、そのままの勢いで前方へと機体を投げ出す。 器用に受け身を取りながら前転するアルトの背後を、数条の光線が通過する。 「新手かよ!?」舌打ちをしながらも、素早く射線の元へと視線を巡らせる。 自機の左後方数十メートルの距離に、先ほどまでは認められなかった青い機影があった。 頭部には鋭利なブレードアンテナ。両肩にはシールドらしきバインダー状のプレートが備わっている。右

          30Minutes to Mars第1話「火星」③

          EXAMACS近代戦術論

          かつてのスカイフォール以降、近代戦場の主役へと躍り出たEXAMACS。 本記事では、日々拡大の一途を辿る地球防衛戦線において、我等が地球連合軍の一員として参戦する諸兄らの為、その性質と戦術論について簡素ではあるが述べたいと思う。 初めに、多くのメディアで目にするEXAMACSの呼称「人型機動兵器」であるが、この表現は実は正確ではない。 EXAMACS、正式名称 Extended Armament & Module Assemble & Combine System(拡張

          EXAMACS近代戦術論