そろそろデジタルクリエイティブが復興して欲しい
サントリーの水曜日(みずようび)のデジタルコンテンツが面白い。
こちらを手がけたのが、Whatever所属の古い仕事仲間たち。
いやあ、素晴らしいなあ。感動するなあ。でも、盛り上がっているのギョーカイとその周辺だけなのかもなあ。と思わずにはいられない。
この作品をお知らせしていたテクニカルディレクターのさくーしゃのエントリーに「懐かしい、インターネット的な感じ」という言葉があって、ああ、まさに、こういうクリエイティブって懐かしいものになっているんだなあ、と痛感させられた。
およそ10年以上前、flashが全盛の頃、デジタルにおけるクリエイティブ、ブランディングがもてはやされていた。動画、音声に加え、インタラクションや、快適なインターフェースを施した「WEBサイト」は、新時代の総合芸術とでもいうべき表現の可能性があって、テレビでもグラフィックでもない豊かな情報体験、ようは格好いい体験を提供していた。
それは、ネット環境がPCベースの時代の話。
4Gの普及くらいから、相対的にPCではなくスマホ主流のコミュニケーションになっため、余りにもリッチな表現は、スマホの処理能力的にも、可処分時間の長さ的にも無用の長物となってしまった。
それでも、あの、PC時代のデジタルクリエイティブはかっこよかったなあ。
プロダクトやメッセージを、グラフィカルにかつエモーショナルに、さらにはインタラクティブなゲーム性をもって体験させることで、商品イメージや企業イメージを向上させていたことは間違いない。
そういうデジタルクリエイティブでブランディングというのは、flashによるクリエイティブからスマホ時代になってシンプルに「動画」に取って代わったし、あるいは「アクティベーション」という生活者と企業の接点を作る運動体そのものになっていくわけだけども。
それでもあの、flash的クリエイティブで達成しえた「ハイセンス」なものっいうのは、物作りの立場として恋しくなる気もするのです。
で、そういうハイセンス・表現力豊かなクリエイティブってやつは、ブラウザという枠を超え、端末を飛び出してインスタレーションやVRの世界に表現の場を移していく。チームラボとかライゾマティクス的なやつ。あるいは、アプリというかゲームアプリの中でその表現力に磨きをかけている。グラフィック的にも、テクノロジー的にも進化しながら。
で、話をデジタル上のブランディングにおける表現ということに戻すと、そういうのはなくなっちゃっているなあとは思う。スマホムービーの時代になってもリッチな制作費をかけた映像コンテンツはもちろんつくれるんだけど、小さな画面ではスケール感に限界がある。いや、その限界に挑戦する必然性がなくなってしまったのだろう。
でも、一部クライアントが雑誌広告を捨てきれないのも、ブランドの世界観をグラフィカルに表現したいときに、スマホ上だと余りその場所がないんだよね、という直感に由来する動機は少なからずあると思う。
写真の世界もそう。スマホに「最適化」することも大事だけど大判の印刷物で、あるいはギャラリーで体感するダイナミックな世界観はとても大事だ。そして、それは小さな画面では描けない。
では、いらないのか?
いらないというにはもったいない。広告において好意度や評価を高めるために「格好良さ」「美しさ」は依然として重要なファクターだと思うし。
なんか、キュレーションサイトとかSEOサイトとかがPVの総量をめちゃくちゃ引き上げてしまったため、月間数十万PV程度のサイトなんて意味ない!とか言われがちだけどそんなことなくって、そこに集まってくれる人たちだけのためにもしっかりとしたブランディングの余地はあるはず。
ただ、手間はかかる。お金はかかる。手間とお金がかかった分の効果が見えない。
なんだよ、効果って。と思う。
そろそろ砂漠に水を落とす論の広告は限界を迎えるだろう。最終的なコンバージョンを掴む方法は、必ずしも規模の経済ではないはずだ。
依然として、世の中の入り口はスマホ画面。この画面の中で感動させたり驚愕させることへの注力が、そのクラフトマンシップが、やがて世の中的にも、ビジネス的にも報われる時代が来ると信じて、そういう取り組みを応援したいし、自分のメディアでもやっていかなきゃなあと思う。
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