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田舎に移住して、農業でもやろっかな。自分にあった栽培作物を決めよう。

移住して5年、ドーナツ化現象の団塊ジュニアです。さぁ、あともう一息、今年も大地の恵みに感謝して、稲を刈る刈る刈る結わえて干す。これ結ぶのが手間かかるんだよなぁ。

農業と農的暮らし

まず、絶対に勘違いしてはいけないのが、農業と農的暮らしの違い。農業は業であり生活していくため、貨幣を得るために商品である農作物を作り売る仕事商売だ。田舎に住んでとりあえずゆる~く農業でもやろっかな、などといった軽い気持ちで始められるような仕事ではない。

一方農的暮らしは趣味もしくは副業として暮らしの一部に農作物の栽培を組み込むことで、農は生計をたてるための主たる仕事ではない。こちらは、田舎に住んでとりあえずゆる~く農的暮らしでもしよっかなぁ、でなんら問題ない。

自分は農業がしたいのか、農的暮らしがしたいのかそこをしっかりと見極めよう。

自然農だとか自然農法だとかの思想に傾倒し田舎に移住して農業がしたい、といっている人たちのほとんどは、農的暮らしがしたいのであって、農業がしたいのではない。

換金作物は何にする?

農的暮らしにしろ、農のある生活にしろ、兼業でやるにしろ、副業でやるにしろ、半農半X にしろ、自給自足にしろ、いづれにしても金額の大小にかかわらず、惚れ込んだ思想に沿って地球環境や食の安全やらを考えながら作物を育て、何らかの方法で換金しなくてはいけない。

野菜の直販でいくとか、観光農園にするとか最初から栽培作物や事業性を決めてしまわずに、いろいろな作物を試してから自分にあった自分に向いているやり方を決めるのも一つの手だ。

実際に作業してみると、人それぞれしんどいと感じるポイントが違うので、この作業ならこの先何十年と続けていっても大丈夫だなと思える作物を探したほうが、後々無理して頑張らずに細く長く続けていけるのではないだろうか。

野菜産直ボックス

たぶん、みな一番始めにこれをやろうとする。毎週もしくは隔週で、四季折々の野菜の詰め合わせセット。その時期に収穫した旬の野菜を箱に詰めて契約してくれている各家庭に郵送する、だいたい一箱2000円~3000円で税別・送料別。

これは無理とは言わないが、かなり難しい。たとえば、5家庭に毎週60サイズの箱を2000円で契約したとする。

送料含めて購入者が支払う額は3000円くらい。毎週毎週60サイズに収まる3000円相当の野菜を収穫できるように栽培できるか、いくら自然栽培とはいえ最低限商品として恥ずかしくない品質の野菜、最低でも6種類くらいを毎週5セットを用意できるか。マイン何とかでなければほとんど無理ゲーだ。しかもこれで得ることができる売上は四万円チャリ~ン。

自然農といえどもある程度の経費はかかるので、毎月40万円の売上を想定すると。50家庭と毎週の契約をする必要があり、毎週50箱を郵送する。年間を通じて何十年にわたり50箱を郵送し続ける。それなりに見栄えのよい野菜を種類豊富に準備するのは当然で、常時50家庭と契約し続けるための営業もしなくてはいけない。

まぁ、ふつうはそのときできてる野菜を、何とかマルシェに並べて、知り合いを作るぐらいしかできない、私はそれすらできなかった。

自然養鶏卵

田舎暮らしと言えば平飼い卵、工場のなかで薬漬けの鶏の卵ではなく太陽の光を浴びて元気に走り回る鶏の卵、皆やりたがるがそんなに簡単ではない。山暮らしでなければ、田舎といえどもそうそう放し飼いはできない。基本鶏は小屋に戻ってくるが、放している間に近所の畑で野菜をついばんでいたなんてことになったら大変だ。小屋も基礎周りはしっかりしておかないとハクビシンが入れば全滅です。

放し飼いができないと、日々自分で考えた餌を配合して与えなくてはいけない、中島正の「自然養鶏法」をしっかり読んで手に入りやすい残さなどと腐葉土を用意し与える。まぁ、ホームセンターで完配合飼料を購入して与えてもよいが、いずれにしても毎日欠かさず餌をやり続けるのは大変なことだ。

自家消費用に10羽程度の小屋を建てるのも大変だし、小遣い稼ぎを兼ねて20羽程になれば2x3間ぐらいはほしい、生活しながら建てるにはかなりの時間が必要だ。そこそこの運動場を用意しようと思えば柵を作るのにワイヤーメッシュ数十枚必要だし、頑張って3畝くらい用意してもすぐにツルツルになってしまう。

できた卵を販売すれば日銭が入るというが、たとえば1つ50円で一パック500円、自然養鶏法ではだいたい一日平均7割の産卵率らしい(実際は波がありすぎて統計なかなかできない)、20羽だと毎日14個の卵が手に入る計算(実際は全部が売り物にはならない)で売上は700円/日、21000円/月チャリ~ン。

50羽くらいから自然養鶏を始めるといいというが、50羽の鶏を飼うのはほんとに大変なことだ、生き物を飼うのは大変だ。しかも順調にいって35個x50円x30日=52500円/月チャリ~ン。高校生のバイト代。私は7羽で降参。

原木しいたけ

すごくおいしいし、あげるとすごく喜ばれる。原木一本当たりの収穫数を気にしなければ菌さえ打ち込みさえすればあとは放っておけば勝手にできる。一つ一つが小さく軽いので大根などと比べれば圧倒的に収穫しやすく単価も高い。生でさばけなければ干し椎茸にすればいいので野菜のようにダメにしてしまうこともない。ただし、原木が重い、ひたすら重い。

野菜も卵もそうだが、普通のサラリーマンくらいの給料を普通のサラリーマンくらいの時給換算で稼ごうとして効率を求めると、なかなか難しいものがある。通常しいたけは12月頃から3月頃までで、冬の入りと春の入りにしいたけの発生温度をまたぐときに大量発生する。それ以外に収穫しようとすれば、水に浸けるなど重い重い原木を動かす余計な労働をプラスして発生操作なるものをする必要がある。

しいたけ農家は一万本からの原木を管理して、毎年数千本の新しい原木を仕入れ菌を打つ。地域にもよるが樹種はだいたいくぬぎかコナラだろう。一度伐った木がまた原木として使用できる大きさになるのに25~30年かかる。周辺の山だけでは回せないので、大量の原木を他所から運んでこなくてはいけない。また原木の数が増えると伐ったり、運んだり、移動したりとなにかと大型機械も必要になる。

私は100本弱を管理している。だいたい四年間くらい発生するので、毎年25本くらいの原木を新たに用意する。最初は近くで伐りやすく運び出しやすいくぬぎを原木として使用していたが、周辺に少なくなってきたので、最近は少し山に入って伐って運び出しているがとにかく重くてしんどい。

シーズンズ中だいたい月平均60サイズ3箱の生しいたけと1箱干し椎茸、3000円と5000円くらいだとすると14000x4ヶ月で56000円、どうにもならん。

タケノコ

なんかの記事でタケノコでフェラーリを購入した、という話を読んだ。これはすごい、たしかにタケノコは勝手に生えてくるので原価はただ、売上が粗利。山から採ってくるとのことだったが、普通竹は放置しておくと生い茂って竹林ではなく竹藪になる。たぶん、ちゃんと竹の年数や太さや間隔などを考えてある程度間引くなどの管理をしていたのではないか。

竹林を広範囲にわたって管理するのはかなり大変だ。日当たりが良くないとタケノコは生えないので一本太い竹を残し周りは伐る。しかし、時期になるととにかく竹も笹も生えまくる、タケノコとして収穫しない分は刈り倒しておくがそれでも次々にでてくる。若いうちに刈り倒しておけばそのまますぐに土に帰るが、成長してからだと枝を落として並べるか、そのまま一年ほど放置して燃やすか、いずれにしても処分に手間がかかる。

ちなみに竹はすぐに燃やせない、ふしのなかの空気が膨張して破裂するので物凄い音がする、この音ともに回りを気にせず燃やすのはかなりの剛の者だ。

移住当初、家の裏手にある溜池の周囲が竹に埋もれて大変なことになっていた。7年かけて冬の間コツコツと竹を切り出し、一年間積んでおき次の年に燃やし、また一本づつ切り出という作業をした。竹藪の竹をほぼ全て刈り、3畝ほどのスペースに太めの竹を残しそこを自分の竹林とした。たった3畝だが竹林として維持し続けるのは大変だ。

朝どりタケノコを羽釜でゆでてチルドで送ると、都内まで次の日には届けることができる。60サイズの箱にタケノコの水煮をいっぱいに入れて送るとすごく喜ばれる、がいくらで販売できるのか、3000円か、送料込みで4000円。どんなに美味しくてもタケノコに4000円は普通ださない、10回採りにいって10回皮むいて茹でて送っても粗利三万円、小遣いだ。

日本蜜蜂、養蜂

手間はあまりかからない、小さく軽いので送料もかからない、単価が高いので大量に扱わなくともそれなりの額は稼げる。非常に優秀な商品である、がしかし問題が一つ、最近めっきり蜜蜂を見かけなくなった。

養鶏と違い養蜂は飼育というより、巣箱を貸して蜜で家賃をもらう賃貸みたいな不動産投資、不労所得。自然界に日本蜜蜂がたくさんいれば巣箱を設置して、年に一回ほど採蜜するだけ。一箱から毎年3升くらいもらう、1升二万円くらいで売れるので、20箱くらい入居してもらえば副業でも複業でも十分ありだ。

食の安全やらを考えたときに日本蜜蜂のハチミツは重宝する。精製砂糖の代わりになるのはサトウキビかテンサイかハチミツしかない、テンサイはよくわからんがサトウキビは沖縄に住まない限り厳しい、日本蜜蜂はほとんど地域で養蜂することが可能だし、それじたいが栄養価があり美味しい。朝子供がパンにジャムじゃなく、ハチミツをぬってくれるとちょっとホッとする。

ただ、いかんせん今は蜂がいない。10年ほど前までは巣箱を設置さえすればいくらでも蜜蜂は入ったらしい、私が手解きをうけたじーさんは25箱飼っていたとのこと。理由は分からない、じーさんはアカリンダニが原因だと言っているが、ネオニコチノイドじゃないのかな。私はかろうじて自家消費用に一群残すのみだ。

お米

まったくお金にならず、かなりの労力を必要とする。とにかく自然農で田んぼをすると、時間がかかり他にいろいろなことができなくなる。うちの家庭では年間3俵(180kg)ほどお米を食べる、若干少ない方だがそれを自給しようと思えばかなり大変だ。

お米の収量の指標は今も昔もだいたい一反10俵、自然農はその7割くらいと言われているので、7畝の田んぼで約5俵のお米を収穫できる計算になる。5俵つまり30kgの米袋10個あれば、多少その年の収量が落ちても、多少友人に配っても、子供たちが食べ盛りのときもまぁ自給はできる。

しかし、その7畝の田んぼを管理して5俵の収量をあげるのはかなり難しい。自然農を始めて数年は間違いなく5俵なんて収穫できないし労力は何倍もかかる。不耕起にして土が落ち着き、自家採取の種が土に馴染み、水管理鳥獣対策ができるようになりようやくその収量に近づくことができるかできないか。

ちなみに、慣行農法なみに収穫できたとして、一反の広さを田植え草取り稲刈り水管理できたとして、600kgの収量。いまネットで売られている自然農のお米並の値段で売れたとして10kg=10000円。一年間かけて育て、すべて直販できて粗利で60万円。そもそもの設定がまずありえないが、あり得たとしてこんなもんだ、収入の柱とするには程遠い。


それで、結局なにがいいのか?

何をやれば、田舎でゆる~くテキトーに農的暮らしを楽しみながら、普通のサラリーマンくらい500万くらい年収で稼いで家族を養っていけるのか…


そんなものはない。








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