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D43 | 43歳のデザイナーが考える43この考察

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デザイナーが考える、デザインのこと、考え方、生き方など綴ったZINE「D43」。その全文を公開していきます。
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D43 | 00 デザイナーが考えていること

デザイナーが日々考えていることをまとめたら、おもしろいかも!そうして生まれたのがDシリーズというZINEです。その最新作(2019年2月現在)の「D43」の全文をnoteで公開したいと思います。 D43というZINEについて DはDesigner(デザイナー)の頭文字。43は発行当時の僕の年齢です。43歳のデザイナーが思うあれやこれやを43編の短い文章で綴った本です。38歳の時に作った「D38」からはじまり、「D43」で5冊め。  「D43」では初心に戻り、あらためて僕が

D43 | 01 デザインとは関係をよくすること

デザインを学んで、生業にして、考え続けて5万時間以上が経った。ずっとデザインとは何か?何ができるのか?考え続けてきた43歳の今、辿り着いた定義が「デザインとは関係をよくすること」。僕は今、何かと何かの関係をよくするための仕事をしている。  例えば商品の魅力を伝えるパッケージを作るということは、商品とそれに関わる人の関係をよくすること。それが入社パンフレットなら会社とこれから入社する方の関係を、ブランディングなら、そのブランドと社会との関係を。そういった何かと何かの関係をよく

D43 |02 エネルギーの流れをみる

「デザインとは関係をよくすること」。これが僕が普段使う表現なのだけれど、もっとドライに言うと「デザインとはエネルギーの流れをよくすること」とも言える。最近デザインについて考えると、それはいつしかエネルギーのことになっていて、エネルギーについてあれやこれやと考えることが増えている。エネルギーについて語り出すと、止まらなくなってしまうので、それは別のzineにまとめることした。(まだ仮題だけれど…「E43 デザインのこと考えていたら、エネルギーのことになっていた」)  エネルギ

D43 |03 現在地と目的地と行く方法

たとえば車でどこかに行こうと考えると、今どこにいて、これからどこにいきたいのか?そしてどの道を通るかを知ってなければならない。つまり「現在地」と「目的地」と「行く方法」が必要になる。ところが、これが人生やビジネスになると、途端にこの3つが曖昧になったりする。  よくなりたいとか、変わりたいとか、成功したいとか言うけれど、どうよくなりたいのか、どうなったら成功なのか?その「目的地」が見えていないことは多い。と言っている自分自身がそうだった。どこに行きたいのか決めないまま、ノウ

D43 |04 ものを作るのがデザインじゃない

…というわけで、僕の考える「デザイン」とはものを作ることじゃない。もちろん直接的に、ロゴやパッケージやパンフレットやキャラクターやwebサイトや…ものを作ることはたくさんある。というか、ほぼ毎日なにかを作っている。でも、そうしたものを作るのがイコールデザインではない。  やっぱり、関係をよくするために、エネルギーの通りをよくするためにものがあった方がいいから、作っている。もの作りは手段だ。  でも、でも、やっぱりものをしっかり作ることは大切だ。イコールデザインではないけれ

D43 |05 体験をデザインする

以前のDシリーズでも似たようなことを書いたけれど、ポスターを作るときにポスターを作ってはいけないと考えている。大切なのは、そのポスターがあることでどんな空間になるのか?だったり、見た人がどんな思いになるのか、どんな行動がしたくなるのか?というポスターがあることで起きる「体験」を作っているのだと思う。そこをポスターを作っていると勘違いしてしまうのが、とてもこわい。  カフェはコーヒーを提供するけれど、サービスの本質はコーヒーそのものではなくて、飲むことで感じる気持ちや、安らぐ

D43 |06 誰をしあわせにするのか?

仕事をはじめるときにまず考えるのが、この仕事で「誰をしあわせにするのか?」「誰がしあわせになるのか?」ということ。当然そこには仕事を依頼してくれるお客さんが含まれているので、いわば、誰と一緒に仕事をするのか?を決めるのが一番はじめの仕事になる。  「誰を?」というと自分以外の人を想像してしまいがちだけど、僕はここに必ず自分自身も入れるようにしてる。つまりお客さんだけではなく、自分もしあわせになれる仕事をするということ。さらにその仕事仕事でメッセージを伝えたい対象の方がいるの

D43 |07 本当に相手のためになっているか?

仕事の初期で考えることのもうひとつがこれ。一度、相手のために何ができるか考えるのだけれど、「本当に」相手のためになっているのか?を自問自答する。  そのときは、一度、自分ができるできないや、損得や条件を外して、本当に相手の方は何を望んでいるのかな…と考える。相手が「まるまるがほしい」と言っているから、まるまるを渡すんじゃなくて、どうしてまるまるがほしいんだろう?本当に必要なんだろうか?と考えていく。そうすると本当はしかくしかくが必要なんじゃないか!と気がついたりする。  

D43 |08 自分が関わってしあわせになれること

相手が本当に望んでいること、本当に相手のためになることがわかった上で、どう関われば相手も自分もしあわせになれるのか?を考える。  もちろんここで、自分が関わらない方がよい、という選択肢が出ることもある。この「断れる」という選択肢があるかないかで、やらされている仕事か、自分でやっている仕事かに分かれると思う。自分ごとになるということ。この工程を通ると、相手に言われたからやるのではなく、自分でやると決めたからやっている、と自覚しやすくなる。  「やる」と決めるということは、自

D43 |09 スポットライト係

こうして、自分が自分が…というと自分本位や自己中心的に思われるかもしれない 笑。でも、僕はそもそも人間は自己中心でいいと思っていて、その上で、相手を本当に思いやるのが大切だと思っている。一般的な自己中心というのは、自分のことしか考えていないこと。でも、自分のことしか考えていないのって、本当に自分を大切にしてるんだろうか?自分のことしか考えていないのは自己中心じゃなく、自分だけ主義だ。  僕は自分を中心に考えつつ、そのエネルギーで相手をしあわせにしたい。だから相手に向き合った

D43 | 10 自分も楽しむ

スポットライト係を楽しむのには、そのスポットライトを当てる対象を愛しているのが大切だと思う。もちろん、自分のライトの技術で、その対象がより素敵に見えるという満足感を得る楽しみもある。でも、もっと大きい楽しみは、その対象が輝いていること自体。  具体的にデザインの仕事で言うと、デザインで関わることによって、お客さんがよい状態になること、それ自体が楽しい状態。そのためにはお客さんを心から応援しているという状態が必要。仕事の中で、何かを作ること自体も楽しいけれど、その前に、お客さ

D43 | 11 お客さんのため =自分のため

06の「誰をしあわせにするのか」からここまで似た話をしてきたのだけれど、まとめると「お客さんのため=自分のため」。この状態を作れたときに、最高のエネルギーが発揮されることが経験からわかった。相手のためにやっていることが自分にとっても嬉しい。自分が楽しむことで、相手もよい状態になる。これって最強だと思うのです。  自分が札幌から車で稚内に行きたいとする。そうすると途中の留萌に行く人がいたら、そこまで送っていくのはなんの苦でもない。同じ方向に行くから一緒に送ってくよ、状態。元か

D43 | 12 お客さんの言う通りにはしない

僕はお客さんが神様とは思っていないし、お金をいただいていても、デザインという価値を提供している僕の方が価値を提供していると考えている。お金はどなたからでもいただけるけど、僕が行うデザインやSHIMAUMA DESIGNが提供する価値は、僕たちにしか生み出せない。じゃあ僕らの方が偉いのか?というとそんなこともなくて、人と人、お客さんと僕やSHIMAUMA DESIGNはイーブンの関係。お互いが尊重しあって一緒によくなっていくパートナー。敬意を持って接する、とてもとても大切な存在

D43 | 13 お客さんをどんどん強くしていく

お客さんがレベル7のものを求めている場合、7をお渡ししたら仕事としては成立する。納品完了。でも、僕が10渡せる力を持っているのなら、僕は10を渡す。7で止まるんじゃなくて、もっと先に行ってみませんか!って。これをオーバーワークという人もいる。でも、ここで7を渡していたら、それを続けていたら、僕の力が7になってしまう。そうすると10が必要なときに、10の力を出せなくなる。  求めらていた7に対して10が示されると、人の価値観は広がる。自分が思っていたものより世界が広いことを実