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顔で選ばれなかった恋

私は綺麗な顔をした男性が好きだ。綺麗と言うのは人それぞれだと思うので、自分のラインでの綺麗をここに宣言すると・・・

輪郭や鼻の線がはっきり直線でカクカクしている鋭角的なひと

清潔で長くてサラサラ・ふわふわ・もしくはくるくるの髪の毛が顔にふんわりかかるひと

まつ毛が長くてバッサバサのひと

やや顔色が悪く寂しそうな、物憂げな表情も様になるひと

口元がキリッと引き締まってて、笑うと歯並びが綺麗なひと

どの人種の男性でもこんなタイプに惹かれる。これは多分過去の刷り込みによるものだと思っているが、長年生きてきて色んな男性とデートしたり付き合ったりしたが、この(自分なりの)”綺麗な顔”の基準は変わっていない。

はるか昔のコロラドでの大学生時代、私はある男性に一目惚れした。大学のカフェテリアでコーヒーを飲んでいたその彼(アーロン)はイケメンなどという簡単な言葉で表現してはいけないほど美しい男性だった。初めて見た時、柔らかい陽の光が片側だけを照らし、ホリの深い顔が余計に彫刻のような無機質を感じさせるのに、茶色いふわふわの髪の毛が肩までかかり、顔を傾けてコーヒーを飲むたびになびいていてこれぞ 美青年!という様子だった。

私は生まれて初めてナンパをした。
彼の正面に座ってあれやこれやと質問攻めにして、電話番号を聞き出した。

それから毎週のようにデートに誘い、ボーリングに行ったりピクニックをしたり、映画を見に行ったりおいしいものを食べに行ったりした。
ちなみにデート代は全て私持ちである。アーロンは苦学生で学生ローンを貰いながら安いアパートに暮らしていて、全くお金がなかった。着ているセーターはボロボロでパンツも擦り切れている。そんな彼に私は新しいシャツやCDやトースターをプレゼントして、車がなくバスで通っていた彼の送り迎えも喜んでやった。それもこれもこの美しい顔のアーロンに恋をしていたからで、もっと仲良くなり私の正式なボーイフレンドになって欲しかったからだ。

バブル時代のお友達はこれを読んで、シマフィー はアッシーでメッシーでミツグ君だったのだな、と思ったはず。
それが何だか分からない若い世代のお友達はどうぞググってみてくださいな。私はまさにそんな存在だった。

半年ほどそんな近しい友達付き合いが続き、バレンタインデーが近いある夜私の家でステーキディナー(私持ち)をしてビールを飲んで(私持ち)ブロックバスターで借りてきた映画(私持ち)をソファーでだらんと座って観ていた。
途中で私は彼の膝に寝っ転がり横目でチラッと彼の顔を見上げた。シャープな顎の線と長い鼻の穴とバッサバサのまつ毛が薄暗い部屋の中でも本当に美しく見えた。

映画そっちのけで彼の顔にうっとり見惚れていた私に、アーロンは顔を動かすことなく言った

”シマ、僕、シマのことは好きだけど親密にはなれないんだ。僕はアジア人の顔は好みじゃないんだ”

ごめんね、と小さく言う彼はやっぱり美しかった。

私はガバッと起き上がり、平常心を装って ”そーかー、OK" とだけ返した。

”なんだよ、今までめっちゃナイスにしてたのに、結局顔が大事なのかよ!”と一瞬怒りがわいたが、よく考えると自分だって顔で選んだのだ。

顔で選んだ男に顔で選ばれなかった私の恋の話。

シマフィー 





#忘れられない恋物語

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