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蜂蜜が狙いじゃない蜂蜜案内人

人間とWin-Winの関係で共存している動物、と聞いて何が思い浮かびますか?
犬、猫、などのペットでしょうか。
Win-Win の関係は Mutualism (相利共生)と言われ、異種の生物がお互いに得をする共生関係です。私がパッと思い浮かぶのはクマノミとイソギンチャク(外敵から守られ、餌を与えられ)、クエなどの魚とクリーナーシュリンプやベラ(クエの口内を掃除して餌を得る)などです。
人類が生物と相利共生している関係はほとんどありません。
動物・植物の相利共生は家畜化が根底にあり生物種は人間によって“変えられて”あるものですので、自然界にある真の相利共生とは違うような気がします。
今回読んだ文献にヒトと消化系バクテリアの共生が相利共生との説明がありましたが、これが一番しっくりきました。

そんな中、ミツオシエというアフリカの小鳥は人間との相利共生にある種です。
人間に蜂の巣のありかを教え、人間が蜂蜜を取った後の蜜蝋や蜂の子を食べるこの鳥は近年になって研究が進み、東アフリカに住む民族との共生が明らかになってきています。蜜蝋を消化する酵素を持っていることがわかっていますが、それ以外にも果物、虫、鳥の卵などを食べるようです。
翆野 大地さんのこちらの記事で詳しく説明されていますが、今回自分で調べてみて へーーっと思ったことをまとめてみました。

学名: Indicator Indicator

それでは学名はかくあるべき!のお手本のような学名を見てみましょう(ふざけた学名の話はこちらをお読みください)。

英語名はGreater Honeyguide 和名はミツオシエ
属は Indicator (指し示す、という意味)
種は Indicator

ですので、学名は Indicator Indicator となります。もう指し示す気満々です!
この学名を見ると発見され登録された時にはすでにこの種が蜂蜜のありかを教えてくれる鳥というのはわかっていたようですね。
Indicator 属には11種おりますがそのうち Indicator Indicator (Greater Honeyguide) とindicator variegatus (Scaly-throated honeyguide: 種名はVarietyバラエティの語源になるラテン語から来ています, 和名はウロコミツオシエ )の2種だけが蜂蜜のありかを教えることがわかっています。

人間=蜂の巣を壊せる動物

Honeyguideは“蜂蜜案内人”の通り人間や他の動物(これまでに証明されているのはHoney Badger というアナグマのみですが、ヒヒも案内したとの目撃あり)を羽ばたきと鳴き声で教えます。その存在を昔から知っていたモザンビークのヤオ族は独特の呼び声でミツオシエを呼び寄せ、蜂の巣に案内してもらうそうですが、彼らはこの野鳥を家畜化しているわけでも訓練しているわけでもありません。世代から世代へと呼び声は受け継がれている様です。このビデオでその様子がちょっと見れます。

そう考えるとミツオシエの方が人間の音を覚え、人間が蜂蜜を取る手段を持っていることを学んだようですね。例えば蜂蜜に興味のない動物には教えるそぶりは見せないので、果たしてその知識が遺伝しているのか、学習するのか(寿命は12年ほど)まだわかっていませんが、人間=蜂蜜とってくれる、と理解しているのは明らかです。実際にケニアではミツオシエにいくらパタパタと合図をしてもらっても人間が蜂蜜を取りにはいかなかったことから、もうその様な行動パターンは見られなくなっているとの報告もあります。

親から子へと受け継がれているのでは、と思われますがミツオシエはカッコーの様に他の鳥の巣に托卵し、産んだ後は知らん顔の様ですのでそれもない様です。
生まれたヒナにはくちばしに鋭いフックが付いており、それで他の卵やヒナを殺し、餌を独り占めします。画像をみてちょっとゾクッとするくらい鋭いフックでした(汗)ので見てみたい方は Honeyguides + chicks で検索してみてください。翆野 大地さんのこちらの記事でも紹介されています

やっぱり人間はズルイ

さてそんなミツオシエですが、残念ながらずる賢い奴らに利用されている様でちょっとがっかりです。やっぱり人間が絡むと良くない結果が生まれます。ミツオシエに蜂の巣を教えてもらっても、また違う場所にある蜂の巣を教えてもらえる様、蜜蝋や蜂の子を隠して与えないまるで貧しい農民から年貢を巻き上げる悪大名の様な部族がいるのだそうです。もうこうなるとWin-Winではないのでどうにか近い将来ミツオシエがその部族に愛想をつかしてくれることを願うばかりです。

翆野 大地さんのおかげで楽しい勉強ができました。本当にありがとうございました!

シマフィー

参考文献

Audubon Blog: Greater Honeyguide | Audubon Society of Western PA. aswp.org/pages/audubon-blog-greater-honeyguide. Accessed 15 Nov. 2020.

Greenfieldboyce, Nell. “How Wild Birds Team Up With Humans To Guide Them To Honey.” NPR.Org, 25 July 2016, npr.org/sections/thesalt/2016/07/21/486471339/how-wild-birds-team-up-with-humans-to-guide-them-to-honey.

Martin, Karlo. “Indicator Indicator (Greater Honeyguide).” Animal Diversity Web, animaldiversity.org/accounts/Indicator_indicator/. Accessed 22 Nov. 2013.

Novus310. “Honey Guide Bird(Amazing Partnership).” YouTube, 3 Mar. 2009, youtu.be/mVtSYRmlirg.

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