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質問から生まれる何か

授業が始まる前、休み時間、ランチ、放課後、ちょっと時間があると生徒たちからいろんな質問が飛んでくる(*アメリカの私立高校で教師をしています)。授業に関しての質問ではなく、割とどうでもいいことを聞かれることが多い。私に興味を持ってというよりかは自分たちの会話の延長で 先生にも聞いてみよ と一応聞いてみた、という感じだ。

好きな色はなに? 好きな食べ物はなに? 好きな俳優は誰? といった "What's your favorite"系の質問から

なぜ歴史の先生になったの? なぜアメリカに来たの? なんで今日は赤い口紅なの? どうやって言語習得した? などの "Why/How"系

スケボーできる? ロシア語話せる? ペット飼ってる? アニメ見る? と "Can you/ Do you"系まで、本当に様々な質問が次から次へと出てくる。たわいもないおしゃべりだがそこから繋がって面白い出来事を耳にしたり、違う話題で盛り上がったりすることもある。

そんな感じの質問の中に、時々ハッとさせらたり、考えさせられることもある。

新入生のロシアからの留学生にこんなことを聞かれた。彼は英語がまだ流暢ではなく、授業中は毎日困った顔をしている。

”私、母国語ならすごくたくさん発言できるんだよ、って思ったことある?” (Have you ever thought "I can say so much more in my language"?)

彼はやっぱり困ったような顔でこう聞いた。辛いのだろう。授業中に手を挙げて発言したい、言いたいことがある、自分の意見もある、知っている内容やすでに習った事を発表したい。そしてそれが出来ない自分に苛立つがどうしていいかわからない。

”あるよ、何度もあるし、ずっと長い間そう思っていたよ、そう思うのは普通だよ” と私は答えた。

彼はちょっとホッとしたような表情になりコクリとうなずいて教室を出た。

この1つの質問から私はこれからの授業で、どうやったら彼が安心して手を挙げ、思うことや自分の知識を発言することが出来るようになるかを丸一日考えた。彼にあらかじめ授業中の質問内容を伝えておこうか、考え・書き・発言という3ステップの流れにしようか、小さいグループ単位での課題を増やそうか、何がいいだろう。

私にとっては彼の質問は授業内容やメソッドを考え直したり、修正したり、改善したりする機会が得られるありがたいものになった。


”先生、この前お寿司が好きって言ってたから、あげる!” そんな風に本当にプレゼントをもらうこともある。モールで買い物をしている時にお寿司柄の靴下を見つけ ”あ、先生が好きって言ってた” と思い出して、わざわざお揃いで買ってきてくれる・・・本当にかわいい!

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質問って、答えを聞くだけじゃないんだなぁ。

そこから生まれるもっと素敵な、もっと新しい、もっと優しい何かがあるんだ。

シマフィー 



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