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教師シマリス

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学校の授業、教育系のアレコレ、楽しく学ぶ工夫、そんなことを書いた記事をまとめました。 現在アメリカの私立高校で歴史と科学などを教えていますが、それ以前は日米を含め6カ国で英語・コ…
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#エッセイ

君が留学決める前に言っておきたい:関白宣言

君が留学 決める前に 言っておきたいことがある かなりきびしい話もするが シマリスの本音を聴いておけ 英語ばかりを 学んではいけない 英語だけ出来ても 何にもならない 読書の時間作れ 歴史・数学・美術史 どれも全部やれ 日本語でいいから 忘れてくれるな 国語の読解も出来ない生徒は 英語で読解、分析、論文、何にも出来ないってことを 発音よくても、教養不足で 落第ってこともあるから 英語以外も今のうちから 黙ってたくさん勉強してこい 今時の若い人、さだまさしさんの ”関白宣言”

宿題手伝い隊:勉強以上に大切な学び

3時に授業が終わり、その後1時間から1時間半ほどのクラブ活動やスポーツの時間があるが、そのどちらもやっていない生徒は家に帰るか残って勉強するか、を選択する(*アメリカの私立校で教師をしています) 私はクラブの顧問はしていないので教室に残り、補習や質問に来る生徒たちを待っていることが多い。 誰も来ない日もたまにあるが、そんな日はザックザックと論文の添削をしている。 今学期は最終学期ということもあり、生徒たちはなんとか成績を上げようと必死だ。遅れてしまった課題やプロジェクト、

メトロポリタン美術館で血の気が引いたって話(again)

今日はルネサンスの宗教画についての授業をした。 色んな絵画を見せながらのレッスンだが、その時に必ず生徒に見せる絵と話す話がある。 一年半ほど前に記事にしたので加筆・編集して再度ここに! 15世紀フラアンジェリコの描いた"キリストの磔"・・・・これは課題に出した絵画だ。私の教室にあるフラアンジェリコの"悲劇受胎"のレプリカとこの磔の絵を比べる課題だ。 生徒たちは食い入るように見ただろう。 近くに寄って見ただろう。 その磔の絵に穴があいている。ちょうどペン先ほどの大きさの穴が

優しいなぁ、ありがとう

もうすぐ3学期が始まろうとしているがちょっとあたふたとしている。 理由はいろいろなのだが、一番は校長先生に ”シマ先生、選択科目ひとつやってくれない?” と頼まれたからだ。大抵選択科目は一年の初めにどれをやるかを提出し、それを協議して他の授業や自分の時間割や生徒の興味なんかを加味しながら早いうちに決まる。でないと準備も追いつかないし生徒たちへのアナウンスも間に合わない。(*アメリカの私立校で教師をしています) なのに先週になって校長先生がむちゃぶりしたのだ。シマ先生、ひと

努力が報われるのは10年後の法則

高校生を教えているとプロとして悩ましい壁にぶち当たることが多い。(*アメリカの私立校で歴史を教えています) 教えていることがすぐに直接何かに役だったり、知識のおかげで得をしたり、お金が貰えたり、そんな目に見える形になってすぐに現れるわけではない。生徒たちは読むのも書くのも面倒くさがるし、授業中にどんなに楽しい講義をしても、彼らが家に帰ってからもっと調べてみようとか深く理解しようと時間や努力を割くことはまれだ。 私は生徒たちには歴史や科学や文学などの教科としての知識だけでな

”Thank you! Have a nice day!”

"Thank you! Have a nice day!" 授業終わりのベルが鳴ると、生徒たちはそう手を振って教室を出て行く。一人残らず、"Thank you!" と言いながら出て行く。(アメリカの私立校で教師をしています) 私も一人一人を手を振りながら "See you later!"と見送る。 8時の授業も、9時の授業も、10時も、11時も、1時も、2時も、同じように教室から出て行く生徒たちは "Thank you! Have a nice day!" と言いながら

イチゴとみかんの魔法

昨日から学年末試験が始まり、教師は来たい人は学校に来て教室で最後の1週間を過ごしていいですよ、と言われたので今日も行ってきました。生徒は全員オンラインですが我が校の教師・職員はほぼ100%がワクチン接種を先月までに終えたので、最後くらいは学校で、との計らいだと思います。(*アメリカの私立高校で教師をしています)。 毎年恒例の学年末のパーティーもあるのですが、今年は任意参加で校庭にテーブルをセッティングするということでした。いくらワクチン接種済みでも室内での会食はなるべく避け

モヤっとするのは記事の方じゃん

久しぶりに何の役にも立たない記事を最後まで読んでしまった。ツイッターのトレンドで目にしたので読んでみたのだが、何ともモヤモヤする記事だったので、このモヤモヤをこの記事の中で処理したい。 記事は『生贄探し 暴走する脳』についてだが、著者の中野さん本人が書いたものではないと思う、というかそうであってはいけないほどのモヤモヤであった。私は『生贄探し 暴走する脳』を読んでいないので、その内容についてはコメント出来ないが、中野さんのプロフィールを拝見すると理系の才女であられるのは一目

アメリカ人とケチャップの悲しい話①

 西宮ながた整体院さまのトマトとケチャップに関する記事を読んでの感想は うちにもおっきなケチャップあるな ケチャップやピザを野菜・健康と思っているアメリカ人は周りにはいないな でもアメリカ人は日本人よりはケチャップ消費量は多いな でした。 ながた先生が”本当にアメリカ人はケチャップは野菜で健康だと思っているのでしょうか?”と聞いてらっしゃいましたので私の徹底的にリサーチしてその疑問に答えようと思います。ソースは記事の最後にまとめて貼ります。 私は歴史の教師ですのでちょっと

15歳を教えるのは傷つくけど楽しい

私の生徒は2005年2006年生まれ。私にとってみればまるで先週のような感覚の時間に生まれています。*アメリカの高校で歴史を教えています 見た目が大人っぽい子もいるし、大人顔負けの知識や才能を持つ子もいるし、話し方や考え方が大人っぽい子供もいて、体格もいいので時々そんな最近に生まれた、“小さい”子だということを忘れそうになりますが、ふとしたことでこの子たちの世界は私の世界と全く違うものだということがわかります。 そのほとんどが笑えることであり、今時の若いものはとか最近の高校

役に立つ英語:誰も教えてくれなかったあの言葉

ウンコという単語は学校でも英会話教室でも習いませんでした。さらには”なんて言うの?”なんて友達に尋ねたりしたこともありませんでした。馬鹿馬鹿しいと感じる方もいるかと思いますが私の実体験からこの記事を書いています。 留学して一年ほど経った頃に寂しさのあまりペットショップで見たチワワを買ってしまった私がその2週間後に彼を連れて初めて獣医さんに行った時の事でした。 ワクチンを打ったりした後にお医者さんに Next time you come, please bring a st

OMG, I KNOW IT IS RUM!

ある日、ランチを終えて郵便物がないか職員用のメールルームをのぞいた時に、入口からでも自分の名前のボックスに何かが突っ込んであるのが見えた。 ビンのお尻のようなものが見え、その上には手紙と小切手の封書が乗っているのが見える。 何だろうかと思い、近づいて手を伸ばそうとした時に反対側のドアから入ってきた人がいた。ペギーさんだった。理事長先生の秘書を長年している人で優しいおばさんだ。 ”あら?シマのボックスに何か入ってるわね” 彼女も私の名前の下のビンに気がつく。 そして自分

メトロポリタン美術館で血の気が引いた

15世紀フラアンジェリコの描いた"キリストの磔"・・・・これは課題に出した絵画だ。私の教室にあるフラアンジェリコの"悲劇受胎"のレプリカとこの磔の絵を比べる課題だ。 生徒たちは食い入るように見ただろう。 近くに寄って見ただろう。 その磔の絵に穴があいている。ちょうどペン先ほどの大きさの穴が、キリストの膝横にあいている。下に居る男はそれを見上げているようだ。私はそれを見た時に自分の顔からサーっと血の気が引くのがわかった。 バスに何時間も揺られてニューヨークシティにあるメトロ

辞める人

今日の職員会議で数学の先生が1月いっぱいで辞めると聞いた。 他にもっといい条件の仕事が見つかったらしくちょっと遠くに引っ越すらしい。 仲が良かった先生ではないし、接点がたくさんあったわけではないが、見慣れた顔がまた一つ日常の中から消えるのはやっぱり寂しい。 生徒にも慕われ、面白い授業をする先生だった。料理も上手でケーキやクッキーを焼いて教室に持ってきていたのをおすそ分けしてもらったこともある。 ここで必要とされ、慕われていたのに、辞める。辞めたかったのだろうか? 再来週か