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モヤっとするのは記事の方じゃん

久しぶりに何の役にも立たない記事を最後まで読んでしまった。ツイッターのトレンドで目にしたので読んでみたのだが、何ともモヤモヤする記事だったので、このモヤモヤをこの記事の中で処理したい。

記事は『生贄探し 暴走する脳』についてだが、著者の中野さん本人が書いたものではないと思う、というかそうであってはいけないほどのモヤモヤであった。私は『生贄探し 暴走する脳』を読んでいないので、その内容についてはコメント出来ないが、中野さんのプロフィールを拝見すると理系の才女であられるのは一目瞭然なので、このモヤモヤ記事よりはずっとずっと優れていて、信頼の置けるデータやリサーチをもとにわかりやすく書かれたものなのだろう推測する。

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これは記事の冒頭の部分だが、まずタイトルがモヤモヤする。(青のアンダーラインは私が入れました)

タイトルは ”幸せそうな人を見るとモヤっとする...相手が得するのを許せない日本人脳” (最後にリンクを貼っておきます)

まるで日本人だけが脳や思考の構造が違うようなタイトル・・・これだけみると”相手が得するのを許せない”民族は我らが日本人しかいないような印象だ。

さらには”相手も自分も幸せになるヒントを〜ご紹介します” と冒頭でうたっているのにヒントはひとつもなかった。強いて言えば最後の締めとして書かれた”自分が得をしたら相手を思いやれる”みたいなことがヒントなのかな、とモヤっと思う。それはヒントではないけど。

中程でのモヤモヤは、記事があげている”得しているのが近しい関係でもモヤっとする”と言う例をこんな風に表現した箇所。(青のアンダーラインと?は私がつけたものです)

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うーん、この記事の焦点は不公平感、不条理感、不平等感などによる”あいつが得してるのが気に食わない”という気持ち、だと思うのだが(少なくともタイトルからはそうとれる)、

仕事があるのに必死で家事をしている妻、何も家事をしない夫、スマホで若い女の子とやりとり・・・・

これは不公平とか不条理とか不平等とかでモヤっとしているわけではなく、気遣いのできない夫が浮気をしているかもしれないというモヤモヤではなかろうか。夫も妻もフルタイムで同業者なのに夫の方だけ昇給とか妻の会社の方が休みが多い、ならわかるけど(記事の論点は”誰かが得をするとモヤっとするのは脳のせい”)。それ以外でも色々とツッコミどころがある、こんなに短い文章なのに。

読み進めると、以下の脳の性質の説明もある。”人間”の話であり、”日本人”に括っていない。まさか日本人は人間なので人間は日本人、というロジックの誤り(logical fallaies)の見本を見ているわけでもないだろうし。なぜこの記事はタイトルを日本人に限定したのだろう?日本人を対象にした実験データだったのだろうか。

誰かが得をしているとモヤッとするのは、人間が、何かと比較しないと幸福を感じられないというちょっと残念な脳の性質のためでもあります。

文章は長々と、焦点をふらふらと移動させながら、人間は自分以外の人間が得をしている時に同じだけ自分が損をしていると思う、誰かと一緒に幸せになるということが苦手な脳を持っている、と続く。

ちなみにこの記事に参考文献や参考にした統計などの記載は全くない。多分中野さんの著書の中にはあるはず。それにしても”誰かが得をしているのは許せない、と感じる人が相当数、存在したのです”と言い切っている割には記事のどこにも根拠は見えず、もうモヤモヤどころではなくモヤモヤモヤモヤモヤモヤくらいの気持ちなのだ。

そして最後は唐突にこう締められている。

人々が求めているものは、ごくシンプルな幸せです。人々が満足するのは、自分も得をした、と実感できる何かを得られたときです。そのときようやく、人々は他人を攻撃することをやめ、穏やかな心で誰かの不幸をともに嘆き、誰かの幸せを心から喜ぶことができるのです。

自分が得をすると人は満足する、それでやっと他人に寄り添えるようになれる・・・・まとめるとそういうこと? そして”自分が得したから他人に同情・共感できる余裕ができた”というのがこの筆者の考えるシンプルな幸せ、なのかな。

私は文章のプロではないし、自分の文章を完璧だとは思っていないが、この文章のプロが書いた(であろう)記事を読んで非常に苦しくなった。

もしこの記事が英語で書かれていたら私の Critical Thinking(批判的思考)の授業で使いたいほどモヤモヤが満載だった(*アメリカの高校で教師をしています)。生徒たちには誰かの文章を読む時には必ず文章を鵜呑みにせず自分で考え、時には事実関係について調べ、文章に矛盾があるか、意図的な情報・印象操作があるか、などを徹底的に考えろ、と指導している。残念なことにツイッター界隈でのこの記事に対するコメントは”自分もそう”やら”自分は妬まない”などぺらっとしたものだったので(多分記事を全部読んでもいない)書く側も別に気にしていないのかもしれない。こういうサイトには編集長みたいな人がいて校正・プルーフリーディングとかしないのかな。

中野さんの著書を読む機会は残念ながらしばらくなさそうだが、脳科学者でいらっしゃるのでもっと論理的に科学的にわかりやすい文章でその”モヤっとする脳の性質”を書いてくださっているだろうと思う。この本に対しての批判は全くないので(読んでませんし)誤解のないようお願いします。

自分への戒めのためにきちんと書く。文章にして公に発表する行為には大きな責任が伴う。誤解を招かないよう、真実ではないことを伝えないよう、混乱を招かないよう、書く側は先を読んで考えてから発表しないといけない。読む側全員が批判的思考をもとに読む・読めるわけではないので、書く側が配慮せねばならない。私の記事にもそんなモヤモヤが見える時は、書き直すので教えてほしい。

シマフィー 




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