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教師シマリス

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学校の授業、教育系のアレコレ、楽しく学ぶ工夫、そんなことを書いた記事をまとめました。 現在アメリカの私立高校で歴史と科学などを教えていますが、それ以前は日米を含め6カ国で英語・コ…
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#留学生

君が留学決める前に言っておきたい:関白宣言

君が留学 決める前に 言っておきたいことがある かなりきびしい話もするが シマリスの本音を聴いておけ 英語ばかりを 学んではいけない 英語だけ出来ても 何にもならない 読書の時間作れ 歴史・数学・美術史 どれも全部やれ 日本語でいいから 忘れてくれるな 国語の読解も出来ない生徒は 英語で読解、分析、論文、何にも出来ないってことを 発音よくても、教養不足で 落第ってこともあるから 英語以外も今のうちから 黙ってたくさん勉強してこい 今時の若い人、さだまさしさんの ”関白宣言”

自信ってどうやってつけるの?

”先生、授業に関係ないんだけど質問があります” 周りの生徒が作文のアウトラインを書くのに忙しくしている時に、そっと手を挙げた女の子が訊いた。(*アメリカの私立校で教師をしています) ”どうやったら自分に自信がつくんですか?” まだ8年生、韓国からアメリカに来たばかりのの彼女は小さい体に大きなバックパックを背負い、私が放課後に教室を開放しているエクストラヘルプにやってくる。 英会話は上手に出来ているし意思の疎通ももちろん出来るが、授業で使うスライドや映像や小説となると難し

春休み、ハグをしてあげる

明日から春休み、という4月。 10日間の長い休み前日、私は留学生たちと教室で小さなパーティーをした。(*アメリカ東の私立高校で教師をしています) 長期休暇があると留学生たちは母国に帰国することが多い。 まだ15歳や16歳の彼らは帰国が決まると何日も前からソワソワし、帰ったら何を食べようか、誰に会おうか、楽しい計画を立てる。 私がその最後の日に臨時で教えたのは留学生の英語教科クラスの一番下の”1”というレベルの子たちで、10人余りのかわいい子たちがそれぞれにお菓子や飲み物を

宿題手伝い隊:勉強以上に大切な学び

3時に授業が終わり、その後1時間から1時間半ほどのクラブ活動やスポーツの時間があるが、そのどちらもやっていない生徒は家に帰るか残って勉強するか、を選択する(*アメリカの私立校で教師をしています) 私はクラブの顧問はしていないので教室に残り、補習や質問に来る生徒たちを待っていることが多い。 誰も来ない日もたまにあるが、そんな日はザックザックと論文の添削をしている。 今学期は最終学期ということもあり、生徒たちはなんとか成績を上げようと必死だ。遅れてしまった課題やプロジェクト、

昼休みくらい自由にさせてやれ

私が勤める学校は割と自由な思考や先進的な考えをした教師が多いと思うが、なんだか古臭い考えの大人も未だに多数存在する。(*アメリカの私立校で教師をしています) 10年ほど前から留学生が増えてきて今では15、6カ国からの生徒たちが勉強しているが、ランチの時間は同じ言語を話す生徒たちだけで固まりがちになっている。日本人の子は私とランチを食べたがるし、中国語やスペイン語や、母語の話者が多い国からの生徒たちは大きな集団になってテーブルを占領したりする。 その様子を”排他的だ、アメリ

留学生が落ちた穴、あっちとこっち

私が教える小さな田舎の私立校にも留学生が来ている(*アメリカ東で歴史を教えています)。 6−7年前に留学生の数が一気に増えた時期があった。その大半は中国、ブラジル、ロシアのBRICS(インドからはいなかった)の経済発展が著しい国からだった。この子達の親御さんはどんなご職業なのか知らないけれどとにかくお金持ちで、プライベートジェットやリムジンでやってくる生徒もいた。 彼らのほとんどは高校を卒業してアメリカの大学に進学するというプランのもとにやってくる。彼ら自身がそう決めたの

偽マルチリンガルの微笑

私が”使える”言語は母語の日本語を含めて3ヶ国語、”わかる”(聞いてわかる・読んでわかる・なんとなくわかるw)のを入れても全部でせいぜい5−6か国語だ。その中でも自信を持って自由に使えるのは日本語と英語の2つだけだ。(*アメリカの私立高校で教師をしています) だけど生徒たちは私が何ヵ国語もペラペラのマルチリンガルだと思っている(笑)。 なぜかというと私は英語ではない外国語にパッと反応するからで、授業中でも休み時間でもランチのテーブルでも、Non英語の言葉をすかさずキャッチ

フィリップのボルシチ

あぁ、ボルシチ食べたいな。今日は朝から風が冷たく、ランチの時間にカフェテリアに向かう道すがらそんなことを考えていた。(*アメリカの東海岸で教師をしています) そして一人の男子生徒の顔が思い浮かぶ。フィリップはどこかロシアあたりからの留学生で、毎日しかめっ面で、いつも一人で行動している子だった。ランチも一人、休み時間も一人、図書館でも一人、まっすぐに背筋を伸ばして長い足を大きく組み、静かに座っている。誰かと話をしているところはほとんど見なかった。 10年生の途中から来たので

14歳とビートルズ: Here Comes the Sun

先週書いたカワイコちゃん一等賞のアランくん。 その後もポロシャツに歯磨き粉のシミをつけてきたり、ランチでアイスクリームを4つ食べてお腹が痛くなったりと、着々とカワイコちゃん大賞を総なめにしています。ただアイスクリームを4つ食べた事は私には翌日まで黙っていました。怒られると思ったようです笑。 14歳は小さな子供でありながら、大人の視点もぼんやりとわかっている、そんな時期なのですね。アランくん以外の生徒もみんなみんなカワイコちゃんで、毎日学校に行くのが楽しみなほどです(*アメ

生徒の間違いに見える小さな世界

デスクの掃除をしていたら、何年も前の科学のテストを発見しました。消化器官のテストです。 惜しい!マウスは mouth (口)でmouse (ネズミ)だからなぁ。 日本人っぽい間違いだな〜と思ったのですが、中国からの生徒でした。このエラーを見るだけで中国語にはTHの音がないのがわかりますね。 英語が母国語ではない生徒たちは面白い間違いをします。後になって一緒に笑う子たちもあれば、恥ずかしさのあまりプリントを捨ててしまう子もいます。 私にとっては笑える答案は癒しであり学びで

Empathy:留学生の気持ちを教師に体験してもらう

10年前我が校の教師研修で、英語がまだ初級レベルの生徒に授業中どのような配慮をしたらいいのか、を同僚教師たちと話し合ったことがある(*アメリカの私立高校で歴史を教えています)。 それまで我が校には留学生が5-6人しかおらず、至れり尽くせりで学習サポートしてきたが、その数が一気に40人ほどにまで増え、どの教師もあわあわしていたからだ。 どんな子供でも私たち教師にとっては大切な生徒であり、一人一人がそれぞれの成功を掴めるように授業の内容や形態、使う資料や講義の方法などもフレキシ

”正しい英語”は誰の英語か

12年生の英文学の先生と話をする機会があった(*アメリカの私立高校で教師をしています)。留学生の2−3人が文学の授業をパス出来ないかもしれない、という内容で、その会話の中で聞き捨てならないことを言われた。 彼らは正しい英語を喋れないからな〜 もう何年も、何年も、我が校の職員や教師に言い続けているけれど、彼らは一向に考えを改めてくれない。 正しい英語、というものはない。発音でも文法でも、英語には色々と種類があり、これだけが正当で正解、というものはない。 シンガポールもイン

口を開かない子供

*アメリカの私立高校で歴史を教えています。 3年前にブラジルから兄弟で我が校に留学してきた男の子がいた。お兄ちゃんは10年生(日本の高1)で私の歴史の授業を取っていたので初日からその子のアメリカ生活を見てきた。 ステレオタイプかも知れないがブラジルからの留学生は皆明るく陽気で人気者が多い。英語がまだ上手ではなくても人懐こく友達はすぐに出来る。 だけどマルコは違っていた。彼は全く声を出さなかった。 初日の授業前に“歴史のMs. Shimaよ”と挨拶する私に顔を真っ赤にして頷く