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偽マルチリンガルの微笑

私が”使える”言語は母語の日本語を含めて3ヶ国語、”わかる”(聞いてわかる・読んでわかる・なんとなくわかるw)のを入れても全部でせいぜい5−6か国語だ。その中でも自信を持って自由に使えるのは日本語と英語の2つだけだ。(*アメリカの私立高校で教師をしています)

だけど生徒たちは私が何ヵ国語もペラペラのマルチリンガルだと思っている(笑)。

なぜかというと私は英語ではない外国語にパッと反応するからで、授業中でも休み時間でもランチのテーブルでも、Non英語の言葉をすかさずキャッチしそちらの方に視線を送っているからだ。大抵は視線と微笑みを送っている。

現在我が校に通う留学生は、中国・韓国・フィリピン・フランス・スペイン・イタリア・ドイツ・ポーランド・スロバキア・ロシア・ポルトガル・ベトナム・インドネシアなどなどからで、毎日クラスや廊下やカフェで目にする彼らの母語は色々だ。普段はみんな英語で会話しているがドイツ人が2人いればもちろんドイツ語の会話も聞こえてくる。

そしてみんな悪い言葉を使ったり教えたりしている(笑)。なのでアメリカ人の生徒もいろんな外国語の悪い言葉を口にするようになる。そして留学生は英語の悪い言葉をすぐに覚えて使いたがり、それがどれほどの悪さなのかがよくわからなくても使う。アメリカ人の子も一体覚えたてのロシア語がどれほど悪いのかはわからないまま使う。

ただどの子も”これは教室で先生がいるところで使っていい言葉ではない”というのは十分にわかっている。

私はフランス語やロシア語などの悪い言葉は習わずともこれまでの生徒が使っているのを聞いて覚えたので、それらがどこからか聞こえてくると、その方面を じーーーー っと見ることにしている。すると生徒たちはバツの悪そうな顔をして "Sorry, Ms. Shima" と謝る。私は "Watch your mouth" と不気味な笑みを浮かべて返す。

ポーランド語やヘブライ語なんかの悪い言葉は知らないけれど、短い外国語が聞こえてくると、その方面を じーーーー っと見て薄ら笑いをすることにしている。面白いもので、同じ微笑でも受ける側の心情で意味が変わる。なので受け手が勝手に解釈する我が微笑は、不気味とも愛情とも興味とも取られる。私はただ薄ら笑いを浮かべるだけで良い。

それが悪い言葉だった時には生徒は "Sorry" といい、そうでない時(何かが見つからない〜とか次の授業に間に合わない〜とかの独り言)には "Ms. Shima! You understand Polish? ポーランド語わかるんだ” と驚く。もちろんわからないけれど、私はそのままニコニコとしている。

それがどんな言語でも同じ対応なので、生徒たちの間ではシマ先生は20言語くらいは理解できる、という噂になっており割とみんなその噂を信じているっぽい(笑)。

先日、9月に来たばかりの先生が私の教室にやってきて ”シマ先生、私ブラジル人生徒の保護者と面談があるんですが、通訳に来ていただけませんか” と聞かれた。”ポルトガル語はオブリガーダしか知らないよ” と笑って断ると、心底驚き ”え?ペドロがシマ先生はポルトガル語がペラペラだ、と言っていましたよ” と目を丸くするので ”違うけど、そういうことにしておいて” と薄ら笑いを浮かべながらお願いした。

”脅威のマルチリンガル・シマ”の評判はどんどん広がっていて、私の周りで悪い言葉を使う生徒はどんどん減っている。

シマフィー 

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