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アメリカ生活:シマリスのだいたい今

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最近のお話をまとめました。シマリス界では最近とはだいたいここ10年以内のことです。
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#教師

名前=自分:名前を正しく覚えてもらうことの大切さ

昨年秋に公開されたトム・ハンクス主演のSF映画 "Finch" ーー既にご覧になられた方も多いだろう。 私たち夫婦は公開された時から観ようか、観ようか、と毎週末のように言い合っていたのだが、結局は昨夜まで延ばし延ばしにしまっていた。 というのも、アポカリプス後の地球、トム・ハンクス、ロボット、犬、という設定だけで悲しくて、寂しくて、泣いてしまうだろうとわかっていたから。 まだ観ていない方のためにあらすじは控えるが、この映画を観ながら、以前教えた・現在も私のクラスにいる留学

サイコパスがいる教室

その女生徒がいるクラスは朝一の授業に彼女がいるかいないかの違いで、教室の空気が大きく変わる。(*アメリカの私立高校で教師をしています) 彼女が遅れて入室するとクラス全体がシーンとし嫌な空気が漂うのがはっきりとわかるが、気づいていないのは本人だけだ。 私は医者ではないのでこんなことを言うのは間違っているのかもしれない。 でもこれまで毎日顔を合わせ、会話をしてきて、私は彼女がサイコパスかソシオパスであろうと感じている。 本来はサイコパス・ソシオパスは病名ではないのだが(本当

避難訓練(アメリカ版)

日本の学校での避難訓練はどんな事態を想定してのことでしょうか。 地震か、火事か、洪水か・・・そんな天災が思い浮かびます。 私の勤める学校でも定期的に避難訓練があります(*アメリカの私立校で教師をしています)。 校舎内での火事を想定した Fire drill ファイヤードリルが主なのですが、アメリカならではの避難訓練もあります。 銃を持った人間が侵入してきた時を想定した Active shooting lockdown drill アクティブシューテングロックダウンの練習で

覚えてたの?

何気なくぽろっと言ったことを生徒たちはよく覚えている。 おかしなことに授業中に ”ここは重要だよ!” と言ったところはあまり覚えてない、なんでやろ(*アメリカ東で高校教師をしています) そんなだからついつい口を滑らせたりしないように、何か心にひっかかるようなことを言わないように気をつけているが、ひょっとしたら私が知らないだけで生徒たちはいつまでも覚えている一言があるのかもしれない。 今日は去年のクラスにいた男子生徒が ”先生、これプレゼント!” と白い包みを抱えてやって

手を繋ごう

”先生、カフェテリアまで手を繋いでくれない?” 何年か前のことーーーそう真顔でお願いしてきたのはかつて私のクラスにいた12年生の男子生徒だった。(*アメリカの私立校で教師をしています) 私はちょっとだけ戸惑った、というのも我が校は生徒にハグをしたりすることは禁止されていないけれど(一般的には教師は生徒を触らない、という決まりがあります)、手を繋いで歩くことはまずない。 私の困惑が表情に出ていたのだろう、彼は”今日だけ、お願い”とにっこりする。 普段はそんなこと言わない

大人になって出来なくなったこと

大きくなって、大人になって、出来るようになったことはたくさんある。小さい頃にやってみたかったことや馬鹿馬鹿しい夢なんかも叶えることができる。 私はいやしんごろ(食い意地が張っている)のでほぼ全ての夢は食べ物に関することだが、いわゆる”大人買い”でかつてちびちびとしか食べられなかったものや高くて手が出なかった食べ物などを食べる”夢”(しょぼいw)も叶えられた。 大きいアイスクリームにスプーンを突っ込んで食べる ポテトチップスを4種類同時に開けて食べ比べをする 生ハムを塊で買

行けなかった日本への修学旅行

2020年の2月、私は同僚2人と生徒22人を連れて日本へ修学旅行へ行くはずだった(*アメリカ東の私立校で教師をしています)。 旅行が決まった10月から、生徒たちと一緒に放課後集まって簡単な日本語や文化、食事のマナーや訪問先などの課外レッスンを続けてきた。生徒たちはみなそれぞれに楽しみにしていることがあり、またみんなそろってワクワクしていることもあった。顔を合わせれば日本の話になり、話せば話すほど期待が膨らむ。 計画を立てる前に生徒たちにどんなことをしたいのかを打診するのだ

春休みのクリスマスプレゼント

今日で2学期は終了!明日から待ちに待った春休みなのだ〜(*アメリカの私立校で教師をしています) 昨日くらいからぼちぼち生徒たちの欠席が目立つようになってきていたのだが、今日の午後の授業は15人中、6人しかこなかった(笑)。週初めにすでに期末試験は終わっているので、家族や友人と旅行に出たり、留学生は帰国したりするため最後の1.2日はまともな授業は出来ない。 そんなわけで、今日は復習とエクストラクレジットのゲームクイズだけで、あとはポップコーンを食べながらドキュメンタリー映画

きっちり3日後に死刑

なんだかぶっそうなタイトルだが、これは今日私が生徒にしたアドバイスなのだ。 彼はヘロヘロに弱っていた。涙をうっすらと浮かべながらガールフレンドに振られたのだがまだ未練があり苦しい、との訴えだった。 ここ何日もご飯が喉を通らず眠れずやる気も起きない、と世界の終わりのような表情の彼だったが話を聞いているうちに、15歳の恋愛も35歳も恋愛も終わりは似たような顔なのだなぁと思っていた。こんな顔をした35歳の男を前に見たことがある。 彼はもうこれから先どう生きていくのかわからない

流れない時間

オフィスを片付けていたら大きな箱に入ったままのプレゼントを見つけた。 開けてみると巨大な砂時計が入っている。確か何年か前の卒業式で ”お世話になったお礼に” と生徒のお母さんにいただいた。記憶では ”サハラ砂漠の砂が入っています” と言っていたような気がするが、上部の刻印はロンドンになっている。 みなさんはこの砂時計を見て、何か気づきませんか? え?普通の砂時計にしか見えない? ならもうちょっと寄ってみましょうか。 サハラ砂漠の砂ですよ。どうですか? 何か見えてきませ

驚きの手作りプレゼント

授業の一環で手作りクラフトの時間があり、生徒たちは毎日色んなものを自分で考え、自分で作っている。(*アメリカ東で教師をしています) ここ二週間で蝋燭作り、組紐、陶芸、刺繍、まな板、カギ編み、ビーズブレスレット、チョコチップクッキーなどを作ってきた。うまくできない子もいるし、すぐに飽きてしまう子もいる。そして思いがけない新しい趣味を見つける子もいる。 10年生に2人、スポーツ万能の男子がいるのだが、彼らは二人ともクロスステッチと刺繍にハマっていた。音楽を聴きながらもくもくと

跳ねる子供

ここ何日か卒業生たちのことを考えていた。 私がこの学校で受け持った初めての生徒たちは今30歳になっている。ちょっと信じられない・・・・30歳?時間はいったいどこに行ってしまったのだろう。もちろん私もその分歳を取ったのだが、彼らが17歳から30歳になるのと比べたら自分の人間としての変化なぞ取るに足らないほど小さいような気がする。(*アメリカの私立校で教師をしています) 来て2年目に7年生の学習サポートを担当した。そのクラスの生徒たちはLD(学習障害)があったり英語が母語でな

一言も二言も多い大人

”もちろんデビーはいい先生よ〜だってもう母親を10年もやってるんだから” 数年前の職員会議で中学部の校長がこう言ったときに、私はつい ”はぁ?” と声を出してしまった。(*アメリカの私立校で教師をしています) 前に立つ彼女にはもちろん聞こえなかっただろうから、彼女はまだ続ける。”お母さんをしてると教えるのも上手なのよ!” 今度は私の隣に座る独身男性教師がこっちを向いて言った "What the f--k? 何だよ、オイ”(*f--kは悪い言葉ですのであまり使わない方が良

老後を語る

まさか自分が老後のことを考える歳になろうとは思いもしなかった(笑) 若い頃は好き勝手に生きてきて、”まぁここで死んだらそれまでか” と思いながら毎日を過ごしてきたけれど、歳をとってくると欲が出てきてできるなら150歳まで生きたい(笑)。 世の”定年退職”の年齢までには程遠いけれど、夫と私はもう引退後の話をしている。もし可能ならば5年くらいを目処に二人とも仕事を辞めて、好きなことをして暮らしたい。そのためにはお金がいることを最近学んだ。夫の大学は州立なので、辞めてもこれまで