見出し画像

「係長になるのは係長になる準備ができている職員だ」ってどういうこと?

私が勤める市役所では、係長級(3級)に昇任するためには試験に合格しなくてはなりません。毎年夏頃に出願し、秋に試験があり、年度末までに結果が発表されます。

昇任試験を設けている団体はけっこう多いですよね。係長に昇任するタイミングの場合もあれば、課長(管理職)に昇任するタイミングの場合もあるようです。

私も随分前に試験に合格して主査になり昨年からは係長(うちは主査も係長も同じ3級)を務めているわけですが、noteなどで発信していることもあって試験対策の相談をいただくことがあります。


とはいえ、それぞれの団体で試験は異なりますし、相談者の個性も異なりますから、一概にこうすれば合格するはずというアドバイスは困難です。


ただ、それぞれの相談者のお話をお聴きして「何となくこういうことかな」と思うことがあります。

それが「係長OS」です。

※以下、管理職昇任試験の場合は係長を課長または管理職と読み替えてください。


OSというのは様々なアプリケーションを働かせるためのベースのシステム。つまり「係長OS」は、係長としての様々なスキルや知識を機能させるために、ベースとなる係長としての価値観です。

例えば、自ら片付けるよりもチームとしての効率と育成にやりがいを感じるとか、上司からの指示に従うだけじゃなくてチームのメンバーの負担や他のチームとのバランスも考慮する必要があると感じるとか、チーム内でメンバーそれぞれに対して育成につながるような健康的な興味関心を抱くとか。

そういった価値観があることで、マネジメントの知識であったり調整や傾聴のスキルを係長として活かせるわけです。


話を昇任試験に戻します。

どうしたら試験に受かるのか、というご相談は、筆記試験対策ではなくて小論文や面接の対策が中心です。

筆記試験はひたすら問題集で法令などを頭に入れるだけなので、あまり勉強法に悩まないのかもしれません。

一方、小論文や面接は、どう書いたらいいのか、どう受け答えをしたらいいのか悩みますよね。

でも、どんなに悩んでも、究極的にはその組織の文化や価値観の影響もありますし、面接官や採点者の個性にも影響を受けてしまうので、そこで正解探しをしても有益な答えにはたどり着けない、と私は考えています。

だから私も相談者にどんなことをお伝えいたらいいか悩むわけです。


そんな中で最近思うのが、冒頭でも書いた「係長OS」という仮説です。

小論文でも面接でも、様々な問いに対して一つひとつ「正解」を憶えていくのは限界がありますし、対策していない問いと向き合ったときに自信をもって回答することができません。

そうであれば係長OSをインストールした状態で、その価値観のうえでは目の前の問いにどんな判断をするのが自然かを考える訓練をする方が対策としては効率的かつ網羅的だと思うのです。

◆メンタル不調で休職していたメンバーが復帰した際に、どんな業務を担当してもらうか。
◆年上で先輩のメンバーが自分の指示をちゃんと受け止めないとき、係長としてどう関わるのか。
◆チームのメンバーからLGBTQの当事者であることを打ち明けられたら、係長としてどうするか。

どれも問題集的な正解はあるはずですが、それを暗記するのではなく係長OSのうえではどう考えるのが自然かという受け止め方をして回答を考える訓練を重ねることは、実践的で本番に強い対策のような気がします。


私は、若い頃に先輩から「係長になるのは、係長になる準備ができている職員だ」という話をよく聴かされていました。係長の部分はときに課長になることもあります。

ビジネス書やネット上の記事などでも同じような言説を目にすることがありますが、皆さんは見たことがありますでしょうか。
あちこちで聴いたり読んだりするということは、そのように感じているひとが少なくないということなのかもしれません。

「係長になる準備ができている」

以前先輩らが話していたのは、昇任試験がない組織の場合、人事や上司は職員をよく見ていて「この職員は係長にしても大丈夫そうだな」という職員に係長を務めさせるという意味でした。

でも、実は昇任試験で係長になれるひとも同じなのかもしれません。

人事や上司が「係長にしても大丈夫そう」と思う職員も、昇任試験で小論文や面接をクリアできる職員も、「係長OS」が共通していると考えるのは乱暴でしょうか。


最後に、この係長OSをインストールするにはどうしたらいいのか考えたいと思います。

ひとつは、逆説的ですが、小論文でも行政判断でも面接でも、試験対策として参考書や問題集をやり込むこと。ただし、問題をやり込むだけではなく、それぞれの回答の抽象度を上げて、判断のもとになる価値観を理解すること。それが係長OSにつながります。

もうひとつは、日ごろの業務の中でひとつ、二つ上の職位で考える習慣をつけることです。係員のひとは係長や課長、係長級(主査)であれば課長や部長の視点で、日々の業務を理解し、判断するのです。「課長だったらどう考えるかな」そうやって訓練することが、その職員としての価値観の芽を育むことにつながります。

どちらも共通するのは、目の前のものを漫然と眺めるのではなく、抽象度を高めたり視座をあげるということ。

もちろん、これらで身に付くのは入口に過ぎません。

でも、試験の小論文や面接も、試験のない組織の人事や上司も、「あなたがその入口に立っているのか」を知りたいんだと思いますよ。


皆さんは、如何お考えでしょうか。



昇任試験に向けた面接対策の相手が必要だったり、そもそも昇任したいのかどうか分からないといった状況の方はよろしければ個別キャリア相談をご利用ください。


★個別キャリア相談受付中★
「このモヤモヤについて相談したいな~」と思ったら、いつでもご連絡ください。国家資格キャリアコンサルタントとして、モヤモヤ解消のお手伝いをしています。

《個別キャリア相談》
【内容】仕事を含む人生全般(=キャリア)の困りごとや漠然としたモヤモヤについてのご相談(壁打ちや面接対策のお手伝いなども対応可です)
【日時】平日夜(21~22時)または土日60分間/回(土日午前と水曜夜が比較的調整しやすくなっています)
【料金】無料(アンケートにご協力ください)
【場所】オンライン(zoom)
【予約方法】申込フォームからご希望の内容、時期(できるだけ早く/今月中/1か月以内に等)または日時をご連絡ください。日時は候補を複数いただけると日程調整がスムーズです。

★ご案内★
2021年2月に初の著書を出させていただきました。

主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という想いで、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。

そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。

よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。

また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。

★連絡先★
原稿の執筆や勉強会の講師、仕事や働き方のお悩み相談(キャリアカウンセリング)等のご相談・ご依頼については、下記のフォームからご連絡ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?