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好きな人の夢を見た。

眠っている間にみた夢の話を人から聞かされるほど、つまらないものはない。
話している本人は、こんなに不思議なストーリーだったと興奮して饒舌に語る。
けれど、聞かされている方は脈絡のない展開についてゆけず、イメージしても感情移入しづらく、飽き飽きしてくるのだ。


───── と、何かに書いてあった。

確かに、人の夢に興味を持てるのは、夢占いをする人くらいだろう。

そのことを承知で、あえて書かせてもらおう、ごめんなさいね。



まず、夢の話じゃなく、現実のこと。

わたしには、気になっている人がいる。

その人に逢いたい、二人でゆっくりと話したい。
彼のことを色々と知りたいと思う。
それが恋だというなら、そうですね、としか言えない。

けれど、残念ながら気軽に逢える間柄ではない。
例えば、お休みの日に一緒にご飯でも食べませんか?と誘ったところで、向こうは平日も休日も用事が立て込み、めちゃくちゃ忙しく過ごしている。

何よりも、友達でも何でもない、ただの知合いといえばその程度。
ご飯でも食べませんか?と突然誘うことすら、彼からすれば奇妙極まりない。


逢えないから、余計に募るものがあるのか。
ずっとずっと、彼のことが気になっている。


そんな彼について、
「 実はもう、何とも思ってないかもしれない 」
と、昨日、唐突にそう閃いた。

何の接触も進展もない人なんだから、
そんなふうに気持ちが切れてしまうことは珍しくも何ともないはず。


そう思っていた、その晩に見たのだ。

その、彼の夢を。

以下は、夢の話。




彼が働いている場所に、わたしが用事があって赴いた。

部屋の片隅に、立っている彼の姿があった。
顔ははっきり見えないけれど、横顔と背格好は間違いなく彼だ。
ドキッとした。
正直、逢えて嬉しかった。

と、次の瞬間、その彼の姿は『 想像 』のものだと夢の中でわたしは気づく。
その部屋の片隅に彼がいる、のではない。
そこに彼がいる、と夢の中のわたしが想像で見ていた幻の姿だと。

『 なんだ、本当はそこにいないんじゃん 』と、夢の中のわたしは苦笑した。

そして、その部屋を出たところに廊下があり、そこで偶然彼と再会しないかな、と部屋を出ながらわたしは期待していた。
この期待の時には、彼の姿は想像上でも一切現れず、本当にそうならないかな、と願う気持ちでしかなかった。





ここで、彼には逢えないままこの場面は終わる。

夢の中のストーリーはまったく違うシチュエーションに変わってまだまだ続いた。
けれど、彼とはまったく関係のない展開なので、そこまでここに書くものじゃない。


目が覚めて、嬉しいような、呆れるような微妙な気持ちだった。


夢の中で逢えた、ならまだキレイごとかもしれない。
逢ったことを、夢占いの対象にすることだってできたはず。

そうじゃなくて、そこまで至らず、夢の中でも逢えないうえに、逢いたくて彼の姿を夢の中で想像していたのだ。


夢に見るほど好き、どころか、夢の中でわざわざ想像するほど好き、なんだろうか。
もう何とも思ってないかもしれない、などと感じた昼間は何だったのか。


この夢をひととおり思い返した後、スマホの中の彼の携帯番号を眺めた。

きっと架けることも、架かってくることもない番号。


そっと画面を消して、
とにかく、ちゃんと生きよう、とただただそう思った。

生きていれば、いつかまた逢える日がくるかもしれない。
その時に、残念な姿と情けない生き様の自分でいたくはないから。


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