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病むこともできなかった私が、かわいそうすぎて(後編)

自分のことをかわいそうだと、思いたい人はいるだろうか。私はぜったいに思いたくなかった。


多くの人を、ものを、下に見る癖があった。

例えば、カフェで雑談している暇人、商店街の零細個人商店、専門学校、ブルーカラーの人、女性、主婦、障がいを抱える人たち、マイルドヤンキー、動くだけの人、考えるだけの人、あとはなんだっけ、発展途上国とか....

いくらでも書き出せる。変なものもいろいろある。少しでも優位に立てる隙があればオートマティックに見下した。見境がない。

今見ると"優位に立てる隙"なんてない。優劣なんて本来ないからだ。

しかしそうでもしなければ、私よりかわいそうな人を作らないと、生きていけなかった。許してくれとは言わないけれど、そういうメカニズムになっていた。セルフ士農工商みたいなものだろう。(農民に被差別意識を持たせないため、侍の次に偉いということになっており、さらにその下にはえた/ひにん階級があった)

逆に私が敬っていたのは(私の優位に立っていたのは)、

社会的成功、社長、名誉、影響力、テレビの中の世界、有名人、男性、偏差値上位、まあそんなとこ。

女性を馬鹿にしすぎたせいもあり、私は女性じゃないということにしないとならなくなり、性別が迷子になったりもしていた。

なんというアホ.... 


いや、どこまでもかわいそうな子だった。


これを書いていながらも「読んだ人に憐れまれたらいやだな」と少し感じている私もいる。でも、どうなのそれは。かわいそうだったことをかわいそうだだって認めないの、本当にかわいそうだよ。


* * *


ボーカロイド、通称ボカロの話をする。

初音ミクや鏡音リン/レン、その他たくさん。ソフトで歌を歌えるように(歌ってもらえるように)なった。今では当たり前のように使われ、ライブなど開かれているけれど、10年以上前にその存在を知った時は驚愕だった。不思議な声だけど肉体を持たない、言葉を運んでくるその声はどこかあたたかかった。

声だけではない。ボカロPと呼ばれる作曲家の人たちの歌詞には深く共感してしまうものがとても多かった。恋愛以前の、自分自身の傷やアイデンティティについて言及する曲も多く、思わず引きこまれた。


社会人1年目の私は、ニコニコ動画でボカロ曲を聞きながら朝まで泣いていた。

同期とも仲良くなれず、部署でも表面上の付き合いばかり、誰も私を理解しないし自分でもやりたいこともないので話すこともなく、指摘されないように動くばかり。社内政治が死ぬほど苦手で、喫煙者だけど社内の喫煙所に行けないから、外に出て吸いに行っていた。


優しすぎるボカロ曲やその歌詞は、そんな私を間違いなく救っていた。
泣きすぎて苦しかった。

私は、今まで平気な顔をしすぎていたから。

平気な顔をして、学校へ行き、勉強して、部活して、塾へ行き、勉強して、中学受験して合格して、学校へ行き、勉強して、部活して、塾へ行き、大学受験して合格して、卒業して、入社して、勤務した。

不登校にはならなかった。将来引きこもりになるんじゃないかって思いながら、結局ならなかったし、鬱にもならない。

明るい道を歩く私を守りたくて、私はずっと頑張ってきたよ。

弱音も悪口も吐かなかったよ。

それでも心はさみしすぎて、裏道をゆく私は、

小学生のころから万引きを繰り返し、中学で自傷行為をし、高校で摂食障害気味になり、性別違和に悩まされていたんだし、大人になってからは人と簡単に出会える出会い系や風俗まがいの場所へ転がっていった。

お金目的でもなんでもない、私は単に人の心に触れたかっただけだった。


そんな話を、私の親はほとんど知らない。

自傷が少しばれたり、自分は女じゃないんだとか、少し話したりもした、でも、裏の私の話は受け入れられなくて、常に明るい道に引きずり戻された。大人になってから話そうと思ったこともあったけれど、きっと私は一生話さない。

人にはその人が理解できて受け入れられる範囲があり、それを超える話はその人の安全ラインを脅かすから難しい。私が自殺未遂でもしたり死んだりしない限りは、あるいはそういうことをしたとしても、一生分からないかもしれない。

それでもいい。私が本当にわかって肯定してほしかったのは、親にじゃなくて、みんなにじゃなくて、私自身にだったから。


ボカロ曲が好きなのも、どこか恥ずかしかった。

なんか、メンヘラみたいだし。

でも、いいじゃん。メンヘラでも。

好きなものは好きだもん。

そんな私も一緒にやってこ。


自分の話をよくよく聞いたら、自然にそう思えて。そう思えたら限界感も焦りも消えて、どこかあったかい気持ちになったから不思議だね。


以下に貼ったのが当時救われた曲。まったく色褪せない......すごく好きなので、歌詞の下にどこがどうすごいのか書いておきます。

今なぜかつらい人、がんばりきれない人に聞いてほしい曲です。

そしていつか、自分の話を自分に話してほしい。自分の話を聞いてあげてほしい。あなたに一番聞いてほしいのは、自分自身の話だよ。

話そうと思える、聞こうと思えるいつかでいい。

だましだましでも、生きていれば、きっとそう思える日は必ずくる。


私もこれからもたまに振り返って自分の話、聞いてきこうと思うよ。




※歌詞は上記の動画の字幕から転記させていただきました。

ハロ/ハワユ(初音ミクsoft・ナノウさん)

ハロ 窓を開けて小さく呟いた
ハワユ 誰もいない 部屋で一人
モーニン 朝が来たよ 土砂降りの朝が
ティクタク 私のネジを 誰か巻いて

ハロ 昔のアニメに そんなのいたっけな
ハワユ 羨ましいな みんなに愛されて
スリーピン 馬鹿なこと言ってないで 支度をしなくちゃ
クライン 涙のあとを隠すため

もう 口癖になった「まあいっか」
昨日の言葉がふと頭を過(よぎ)る
「もう君には全然期待してないから」
そりゃまぁ私だって 自分には期待などしてないけれど
アレは一体どういうつもりですか

喉元まで出かかった言葉
口をついて出たのは嘘
こうして今日も私は貴重な言葉を浪費して生きてゆく

何故隠してしまうのですか
笑われるのが怖いのですか
誰にも会いたくないのですか
それ本当ですか
曖昧という名の海に溺れて
息も出来ないほど苦しいの
少し声が聞きたくなりました 

本当に弱いな

一向に進まない支度の途中朦朧とした頭で思う
「もう理由をつけて休んでしまおうかな」
いやいや分かってますって なんとなく言ってみただけだよ
分かってるから怒らないでよ

幸せだろうと 不幸せだろうと
平等に残酷に朝日は昇る
生きていくだけで精一杯の私に
これ以上何を望むというの

なぜ気にしてしまうのですか
本当は愛されたいのですか
その手を離したのは誰ですか
気がついていますか
人生にタイムカードがあるなら
終わりの時間はいつなんだろう
私の生きた分の給料は誰が払うんですか

サンキュー ありがとうって言いたいの
サンキュー ありがとうって言いたいよ
サンキュー 一度だけでもいいから
心の底から大泣きしながらありがとうって言いたいの

なぜ隠してしまうのですか
本当は聞いてほしいのですか
絶対に笑ったりしないから話してみませんか

口を開かなければ分からない
思ってるだけでは伝わらない
なんて面倒くさい生き物でしょう 人間というのは

ハロ ハワユ
ハロ ハワユ
ハロ ハワユ

あなたに ハロ ハワユ


「馬鹿なこと言ってないで」
「本当に弱いな」
「分かってるから怒らないでよ」


これ、自分で自分を責めてるんですよね。誰かのセリフじゃないの。これ、自分なの。今まで馬鹿だと弱いと言われたことを自分で繰り返し続けている。怒られたことを、今は怒られていないのに、自分で代わりに怒ってるの。おそろしいよな....

でもね、ここは奥にいる自分の声が聞こえている瞬間。救いだなあ。心のそこから大泣きしながらありがとう、って私もまだできないから憧れるなあ。

「生きていくだけで精一杯の私にこれ以上何を望むというの」
「一度だけでもいいから心の底から大泣きしながらありがとうって言いたいの」


多分Youtubeで自動再生で出ると思うけど、ハロ/ハワユが響く方にはこちらも。救われなさがふっきれてて逆にいい。とてもいいです。



* * *


・前編はこちら


・近況

パートナーと二人で個人応援のいろんな活動を再スタートしました。
こんな私と、また別の生きづらさを抱えたパートナーだからこそできる仕事でもあると思ってます。カウンセリング/占い/デザイン各種/天然石。一見バラバラですが、全てその人らしさを応援するサービスです。


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