わたしを愛してくれたもうひとりの母へ #ひかむろ賞愛の漣
「わたしはいっちゃんの第二の母だから」
彼女はいつもそう言って笑っていた。その笑顔に、また会えるのだと信じて疑わなかった。別れはいつも唐突だと、身に染みて知っているというのに。
彼女の訃報を聞いたのは、実家から引っ越して5年程経った頃だった。実家は同じ関東圏内だから、帰ろうと思って帰れない距離ではない。だが電車で少し大回りをしないと帰れないこと、特急電車を使わないと時間がかかること、あまり父と顔を合わせたくないことなどを理由にして、あまり帰っていなかった。
その日、久