スーパームーン皆既月食という言葉のあれこれ
今日はスーパームーンかつ皆既月食だった。
流行りに乗っかるべく外に出てみたが。曇っていたのでよくわからなかった。外にいた人はみんな月食が起きている(であろう)方向の空を見上げていた。向日葵のようだ。俳人ならばこれで一句よんでいるのだろう。
スーパームーンという言葉が気づけば市民権を獲得していることに気づく。ムーンが付く言葉は長きにわたってセーラームーンが覇権を握っていたはずなのに。朝日新聞の記事のデータベースでざっくりとスーパームーンについて検索すると2012年ころに満月という意味で初めて登場している。世にではじめてから10年程度といったところだろうか。若造である。しかもスーパームーンはそこまで頻繁にみられるものではない。オールスター感謝祭よりもレアな存在なのにここまで浸透しているのは恐れ入った。
そもそもだが皆既という言葉にも常々違和感を感じていた。月食か日食の時にしか使われない言葉ではないか。今の時代は「やばい」のような様々な状態を表現できる言葉がもてはやされているのに、月食と日食だけにしか使われない言葉なんて。明治頃の外来語に対する訳語だろうか。
日本国語大辞典を見てみると、どうにも中右記(1135年)に『一月一六日「夜月蝕皆既、帯蝕出東山、暦道勘文已相叶也」』という記述があるようだ。さらに中国では春秋左伝にすでに記述があるそうだ。予想よりもはるかに歴史の古い言葉だった。
最近になってよく耳にするようになった「スーパームーン」と歴史ある言葉の「皆既」月食。このように考えてみるとエモさが増したように感じる。
皆既という言葉について一応、言海でも調べてみた。皆既とひくと日蝕を参照せよとのこと。日蝕の項にはかいつまんで言うと、日月の若干面を蝕することを分蝕といい、全面を蝕することを皆既というと説明されている。ということは皆既という言葉を用いたならば、月食日食を指し示すということだ。ほかの言葉につくことはできなさそうである。潔いくらい専門用語だった。
ちなみに言海によれば18年ごとに日食が41回、月食29回おこるそうだ。詳し。大槻先生は私たちに様々なことを教えてくださる。
英語だとtotal eclipseというらしい。無理やり日本語と対応させるならば皆既がtotalで食がeclipseとなるだろうか。
皆既の意味はよくわからなかったがtotalだとすんなりわかる。逆にeclipseの意味がわからない。
今後、より日本語を効率化していく流れがおきたら皆既という言葉は淘汰されて「トータル月食」という言葉に置き換わっていくかもしれない。その時はトータルテンボスで韻が踏めるのでそれでリリックを作る所存だ。
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