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The World's 50 Best Restaurants™に使われている書体 “Argent”と“Aktiv Grotesk“

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています

今回は飲食業界にちょっと注目して使われている書体をご紹介してみます。


The World's 50 Best Restaurants

美味しいもの好き方々やミシュラン ガイドを意識する場面があるのではないでしょうか。誰もが知るレストランやホテルのランク付け企画ガイドです。このミシュランガイドの他にも“The World's 50 Best Restaurants”(世界のベストレストラン50)というものがあります。

The World's 50 Best Restaurants
Image source: The World's 50 Best Restaurants

このランキングリストは、どんな主体が制作しているのでしょうか。

世界のベストレストラン50は、イギリスのメディア会社ウィリアム・リード(William Reed)(※後述)が作成したリストで、もともとは2002年にイギリスの雑誌『レストラン』に掲載されたものです。

1位から50位までのランキングに加え、One To Watch Award、Icon Award、Best Female Chef Award、Chefs' Choice Awardなど、個人やレストランを対象とした特別賞も設けています。また、特定の地域では、その地域のより多くのレストランを紹介する51~100のリストを事前に発表しています。

世界のベストレストラン50」は、美食家を目指す人々に指針を与え、レストランやバーを旅行したり探検したりする人々を刺激し、新進気鋭のシェフや料理のトレンドを披露し、世界中の様々な料理を紹介するものとして、認知されています。

The World's 50 Best Restaurantsの書体

The World's 50 Best Restaurants
Image source: johnrieber

ロゴのベースになっている書体は、Didoni™

Didoni™

Didoni™
Image source: Myfonts

書体名:Didoni™
カテゴリー:セリフ体
分類:モダンローマン
デザイナー:Phil Martin
ファウンダリー:URW Type Foundry
リリース:?

Didoniは、Phil Martinによってデザインされ、URW Type Foundryからリリースされた書体。

ウェブサイトの本文で使われている書体は、Aktiv Grotesk

The World's 50 Best Restaurantsのウェブサイト
要所要所にはDidoniをそれ以外にはAktiv Groteskという書体を使っています。
Image source: The World's Best 50 Restaurants.com


Aktiv Grotesk

Aktiv Grotesk

書体名:Aktiv Grotesk
カテゴリー:サンセリフ体
分類:グロテスク
ファウンダリー:Dalton Maag

権威的でありながら中立的な立場を保ち、あらゆるメッセージを圧倒することなく引き立てます。Hairline から Black まで、24 種類のスタイルとそれにマッチしたイタリック体で構成された、柔軟で多様なファミリーです。


William Reed

ウィリアム・リードは、食品・飲料部門にサービスを提供するデジタルで高価値のデータおよびイベント・ビジネス企業です。2021年までに、クローリー、ロンドン、モンペリエ、シンガポール、シカゴの5ヶ所に拠点をかまえています。

1862年、ウィリアム・リードはロンドンに出版社ウィリアム・リード出版を設立。八百屋業界で培った人脈と知識を生かし、ロンドンのボウ・レーン(Bow Lane)を拠点に、最初の雑誌『The Grocer』を創刊しました。『The Grocer』は、読者に業界の最新ニュースと分析を提供していました。1年後、『The Grocer』の付録として『Wine Trade Review』も創刊されました。

1864年までには、リードは醸造業界をターゲットに『Brewers Journal』とその付録『Hop & Malt Trades Review』を創刊し、1868年には『Tobacco Trade Review』を自社の雑誌ラインナップに加えました。

ウィリアム・リードは1920年に死去。当時、『The Grocer』は彼の会社で最も有名な出版物であり、食糧省(Ministry of Food)が発表する際に使用していました。

リードの死後、彼の出版社は息子によって運営され続け、2021年、同社はサセックス州クローリーに本社を置くウィリアム・リード社として、同じ一族の後世代によって所有され続けています。


WilliamReedの書体

WilliamReedのウェブサイト
Image source: WilliamReed
WilliamReed.のロゴ
Image source: Wikipedia

このロゴは、Argent CFという書体がベースになっています。

Argent CF

書体名:Argent CF
カテゴリー:サンセリフ体
デザイナー:Connary Fagen
ファウンダリー:Connary Fagen Inc.
リリース:2020年

Argentは颯爽とした表情豊かな書体で、強調されたX-heightと流れるようなレターフォームが特徴。魅力的なイタリック体、特別なスーパーボールドウェイト、幅広い言語サポートが特徴で、Argentは見出し、タイトル、ロゴなどの表示設定に向いています。

表現力豊かで細部まで作り込まれた書体であるArgentは、Greycliff CFArtifex Hand CF、Articulat CFのようなサンセリフ書体など、コントラストをもたらすすっきりとした書体と相性が良い。

ファウンダリーのConnary Fagenは2015 年に設立されたフォントメーカーです。Greycliff CFシリーズなども人気。

My Fonts以外にもAdobe Fontsのなかにもあります。



WilliamReedのウェブサイトのなかで使われているサンセリフ体は、Marr Sans

Marr Sans

カテゴリー:サンセリフ体
分類:グロテスク

Marr Sans
Image source: Commercialtype.com

デザインが特徴的なMarr Sansは、Alexander Wilson & Sonsの後継者であるエディンバラのJames Marr & Co.の1870年代の書体からインスピレーションを得た書体。ポール・バーンズとデイブ・フォスター(Paul Barnes and Dave Foster)は、3つのサイズと1つのウェイトで数行しかなかった書体ファミリーを、ThinからBoldまで拡大し、さらにウルトラ・ブラックのウェイトを追加しています。

19世紀の個性を楽しんだサンセリフ体で、Akzidenz GroteskやFranklin Gothicのような、より厳格で構造的なドイツのグロテスクやアメリカのゴシックに対抗する風変わりなイギリス的な書体です。

Marr Sansは企業デザインからエディトリアルデザインまで、シャープで個性的なテイストを必要とする幅広い用途に適しています。


まとめ

The World Best 50 Restaurantsおよびそれを運営しているWilliamReed社は、ともに書体が持つ意味や歴史を理解した上で、新しい書体を使用しています。

いくぶんチャレンジングな姿勢と見た目(ブランディング)に対しての意識の高さと造詣の深さがうかがえます。

DidoniとAktiv Grotesk、Argent CFとMarr Sansという組み合わせは、飲食業界は特に注目したい使用書体の好例です。

 

参照

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