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欧文の小文字は文字間をあけてはイケナイ

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


欧文のルール

日本人は知らない欧文(主に英語)のルールというものがあります。これは英語の授業でも教えてくれません。それゆえか翻訳者からの原稿にも、このルールに則っていないものがすごく多くあります。
知っておくと何かとアドバンテージになるので少しずつご紹介していきます。ご紹介した欧文のルールはこちらのマガジンにストックしていきます。


デザイナーも知らないことがある欧文ルール

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わたしたち日本人は欧文のルールについて知る機会というものがあまりありません。積極的に勉強する他ないのですが、ではプロのグラフィックデザイナーに任せれば大丈夫かというと残念ながらさにあらず。かなり著名なデザイナーでも、欧文ルールを熟知していないことが伺えるデザインをよく見かけます。今回は、そのなかのひとつ、字間、レタースペースについて。


欧文の小文字は文字間をあけてはイケナイ

欧文の組版に精通しているグラフィックデザイナーは多くはいないようで、サインや雑誌、書籍などのデザインで欧文組版のルールからいって「アウト」なものをよく見かけます。何がアウトかというと、そのひとつは、

小文字の間を開けてしまうこと。

それも意図しないでやってしまうことがあります。↓こちらは英文を左揃えにしたものです。

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これを両端揃えにすることにします。このとき、テキストの種類を日本語として適用すると……

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こんなふうになってしまいます。日本語の場合は、文字間の調整は行のスペースにもよるものの、このように行っても良いんです。なぜなら日本語の文リズムは、仮名と漢字の大きさや濃度によって形成されているから。文字間をあけても、あまりリズムは崩れません。しかし欧文のリズムは、単語間とワードの上下の凸凹感で形成されています。たとえば「play」は、

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という凹凸をふくめて「あーplay」か、認識されています。これが、「PLAY」となると読み手の意識は、ぐぐぐっと止まってしまいます。なぜなら「Play」らしさが消え、かつ行のなかに黒い長方形が現れるからです。

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えっっと「PLAYね。なんで大文字!?」という具合の反応を引き起こします。ちなみに強調するなら、全部大文字にするのではなく、イタリックを使います。文章のなかにイタリックが出てくると欧文を普段使っているひとたちは、「はいはい、強調または何かのタイトルとかね」と認識します。

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イタリックについてはこちら詳しくかきました。

話を戻しますが、文字間があいてしまうと欧文は、違和感が強くなりすぎて読みづらくなってしまいます。なので、どこを開けるのかというと単語間です。

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あー読みやすい!ってなります。


小文字の起源が重要

欧文はさきに大文字が生まれ、しばらくしてから小文字が誕生します。だいたい8世紀後半ごろ。このころ文字を書く対象は紙ではなく(まだ製紙法が広まっていない)、羊皮紙。数少なく、貴重な羊皮紙に文字を書くにあたり、少ないスペースに多くの文字を書いて節約したい。そしてスムーズに書きたい。そこで聖書を書き写す修道僧たちが、小文字を開発、統一していきます。この頃の小文字をカロリング小字体といいます。すなわち、小文字は詰めてスムーズに書くために生まれた文字。それを離してしまうのだから、違和感が生まれてしまうわけです。

大文字の文字間は開けても良い

いっぽうで、大文字は紀元前に生まれています。どのように使われていたのかというと碑文です。

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The inscription in situ, Oct 1963. Courtesy James Mosley
source: The Trajan Inscription

平筆を使って石に描き、それに沿って掘られたのが当時の碑文。平筆を使っているため、横線は細く、縦線は太くなっています。

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Individual brushstrokes (left), shown combined (center), and compared to the inscription4
source: The Trajan Inscription

続けて詰めて書く小文字とは違い大文字は、このような起源があるため、比較的文字間をひったりとあけて良いんです。大文字は文字間をあけると歴史が深く、落ち着いた高級感が出てきます。好例としてルイ・ヴィトンのロゴを挙げることができます。ルイ・ヴィトンは有名な書体Futura(フツラ)をそのロゴに使っています。文字間をあけることで高級感を出しています。

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画像引用:FASHIONSNAP.COM 「ルイ・ヴィトン」日本最大規模の店舗が大阪・御堂筋にオープン、初のカフェ併設店に

同じFuturaを使っていても文字間を詰めると印象がガラリとかわってきます。

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FedexもそのロゴにFuturaを使っていますが、このように印象がぜんぜん違ってきます。文字間がつまり急いでいる(速い)印象を与えます。(こっちは小文字混じりですが)。


まとめ

欧文圏でも小文字の間をあけているデザインはたまにあります。しかしそこには「敢えて」というニュアンスがあり、「秩序を壊した」ニュアンスが含まれています。知らないまま、小文字の文字間をあけるのとは、大きく異なります。

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