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《週末アート》 モダニズムってにゃに?

《週末アート》マガジン

いつもはデザインについて書いていますが、週末はアートの話。noteは、毎日午前7時に更新しています。


モダニズムの3ポイント

  • モダニズムとは「今までのやり方を続けるのは嫌です」という思想&運動

  • 第一次世界大戦と産業革命が工業を洗練させ、クリエイターたちに拒絶から需要へと態度を変えさせた

  • 建築、文学、絵画など分野によってさまざまなスタイルになりますが、「純化」という概念が多かれ少なかれ通底している


”モダニズム”ってにゃに?

モダニズム(modernism)は芸術運動のひとつですが、その分野が広く、またモダニズムという言葉自体が「現代的思想」という意味で、なれば「現代的」は、その時代時代で変容していくものなので、はなからちょっと曖昧さを含んでもいるので、わかりにくい思想・運動です。なので、まず冒頭では、“モダニズムの尻尾”というか、掴みどころを明確にしちゃいたい思います。

時代ですが、モダニズムは、(そのなまえに関係なく)19世紀末から20世紀前半、第二次世界大戦前くらいまでの時代の芸術運動です。その分野は、小説や詩などの文学、演劇、絵画、音楽、建築、写真、ファッションにまでほぼすべての表現分野をカバーしています。象徴主義、印象主義、キュビスム、ダダイスム、シュルレアリスムなども広義的には、このモダニズムに含まれると考えられています(※1)。そして、「じゃあどんな運動・思想なのよ?」と問われれば、それは、こうなります。

伝統主義やリアリズムを排して内容、形式、手法の大幅な刷新を模索する思想

もっとありていにいえば、「伝統に則るのをやめて、新しいものを創造したい!」という運動です。そしてこれに「戦争と産業革命が鍛え上げた工業技術や素材を使いたい」も加わっています。だから上のまとめをもっと(ワタシ的に)わかりやすくまとめるとこうなります。

新しい技術や素材を使って、今までとは違うものを作りたい

モダニズムには前衛的なものを含みますが、それはこの思想が、コンベンショナル、つまり従来的な表現から逸脱を目指しているだから、必然「既成概念からの逸脱するための実験や勢いや戦い」といった意味の「前衛的」が着くことになります。モダニズムとは、だいたいこんな感じです。そしてこのモダニズムの輪郭を明確にするのが、それまでの芸術とそれ以降の表現運動(ポストモダニズム)です。今回は、そこまでは、話を広げず、その具体例を見ていき、上記のコンセプトと符号しながら、話を終えたいと思います。これで、だいたい「ねぇ、モダニズムって何の?」と尋ねられても、「ざっくりいうとね」と応えられるようになるはずです。それでは、次にモダニズムの具体例を分野ごとにみていきましょう。

建築

建築におけるモダニズムにとって、従来的な様式は「装飾」でした。ゆえに「装飾をなくしていくこと」+「新しい素材」が「モダニズム(様式)建築」となります。その具体例は、モダニズム建築の巨匠と呼ばれる、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライト、ヴァルター・グロピウスらと日本の前川國男(まえかわくにお)と丹下健三(たんげ けんぞう)(敬称略)。全体をみれば、なんとなく「モダニズム建築」の様相がみえてきます。

ル・コルビュジエ

ポワシーにあるヴィラ・サヴォワ(1928-1931年)
By Valueyou (talk) - I created this work entirely by myself., CC BY-SA 3.0, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=19648390

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ミース・ファン・デル・ローエ

(建築費を巡って訴訟にまで至った)ファンズワース邸

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フランク・ロイド・ライト

カウフマン邸
Sxenko, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3171223による

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ヴァルター・グロピウス

メットライフビル(旧パンナムビル)(1958)
Postdlf, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=667586による

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前川國男

東京海上日動ビルディング本館(旧・東京海上ビルディング本館)
Wiiii - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5091622による

丹下健三

代々木第一体育館(1964)


絵画

冒頭でも触れたように、キュビスム、ピュリスム、シュルレアリスムまたそれらに加えてポップアートなどもなんとなくモダニズムに含まれます。

パブロ・ピカソ『アヴィニョンの娘』(1907年)
ピート・モンドリアン『コンポジション2、赤、青、黄』(1930)
画像引用:Artpedia

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文学・詩

ジェームズ・ジョイス、トーマス・スターンズ・エリオットなど。

ジェームズ・ジョイス

ジェイムズ・ジョイス(James Joyce)(1882 – 1941)は、アイルランド出身の小説家、詩人。小説『ユリシーズ』(1922)が最もよく知られています。『ユリシーズ』には、「人間の精神の中に絶え間なく移ろっていく主観的な思考や感覚を、特に注釈を付けることなく記述していく文学上の手法」である「意識の流れ」の技法が見られます。

ジェームズ・ジョイス


トーマス・スターンズ・エリオット

トーマス・スターンズ・エリオット(Thomas Stearns Eliot)(1888–1965)は、イギリスの詩人。

レディ・オトリン・モレルによって撮影されたT.S.エリオット(1923)


まとめ

フランク・ロイド・ライト、ソロモン・グッゲンハイム美術館(1959)
Jean-Christophe BENOIST - 投稿者自身による著作物, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19322217による

ほんとうなら、ひとりひとりの詳細について触れていきたいのですが、今回の狙いは「なんとなくモダニズムとは何かを知る」ことですので、モダニズムとはにゃにか?という概念と具体例の紹介に留めています。こうしてみるとちょっと見えてくるのが、表現の分野ごとにちょっとずつ「モダニズムの様相が変わってくる」ということです。狙いは一緒で選択する手段が異なっているともいえますし、そもそも狙っているのかどいうかもまたはっきりしません。「時代圧」のようなものだけかもしれません。それでも、戦争と産業革命がわたしたちに「つぎの時代」へ突き進もうとする動機をがっつり与えたことは確かです。それがモダニズムです。そして表現者たちも観察者たちも「つぎの時代」を「現代」と捉えています。なので「モダニズム」なわけです。


参照

※1

※2

*3


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