見出し画像

かわいいのに意外におしゃれな書体 “Hobo”

ビジネスに役立つデザインの話

日本人は欧文書体の知識がすくない。でも使う場面は多い。

デザインの知識は、経営陣にはある程度あったほうが良い場面が多々あります。今回の話が、どんな場面で役に立つかちょっと思いつかないんですが、書体についてぼんやり知っておくほうが良い気がします。なんとなく。


“Hobo”という書体

Hoboは、こんな書体です。

Typeface “Hobo”
By Fred the OysteriThe source code of this SVG is valid.This vector image was created with Adobe Illustrator., CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=35900717

すごい特徴的な書体で、1回で覚えられそうです。

書体:Hobo(アリアル)
デザイナー:Morris Fuller Benton
リリース:1910年
カテゴリー:ディスプレイ
販売元:Adobe, Linotype, ITC….

サンセリフ(ゴシック体)にもカテゴライズできるんですが、ディスプレイじゃないかなー。欧文書体の種類は、サンセリフ、セリフ、スクリプトそしてディスプレイの4つが大まかな分け方です。サンセリフがゴシック体、セリフが明朝体、スクリプトが筆記体で、ディスプレイは目立つ用の書体。他の記事で詳しく書いているので、興味がある方はそちらを参照ください。

“Hobo”の意味と由来

ホーボー(Hoboes)

Hoboとは、「ホーボー」と読み、アメリカ合衆国で19世紀後半から1930年代の不景気の時代に、仕事を求めて渡り歩いた貧しい労働者を意味した言葉です。発展して「路上生活者」という意味にもなっています。ちょうど書体Hoboがデザインされた時代(1910年)とも重なります。書体は、もともとはAdface(大量生産の時代に突入し、広告業界が生まれ、発展した時代でもあります)という名前でしたが、これが特許をとるときにはHoboになっていました。名前の由来は諸説あり、うちひとつは、字形が弓形のため、弓足のホーボーたちに似ているという説、ほかには、名前のないままにスケッチされて鋳造所(活字を作るメーカー)に送られてきたものにそこからぜんぜん進展しないまま放置されていた書体だったため、「あの古いホーボー(That old hobo)」とあだ名を付けられたという説もあります。またデザイナーのベントン氏が住んでいる地域にはロシア人のコミュニティがあり、そこでロシア語の「新しい」という意味の「ново」という表記を葉巻の広告でみかけて、この文字にインスピレーションをうけてデザインしたという説もあります。

"Do not attempt to light with match" の部分がHobo
By Ruth Hartnup from Vancouver, Canada - "This Room is Equipped With Edison Electric Light", CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=72820299


デザイナー、Moriss Fuller Benton

この書体のデザイナーであるモリス・フュラー・ベントン(Moriss Fuller Benton)氏は、天才で、多作です。わたしのなかで多作の人は天才としています(たとえばアインシュタイン)。

モリス・フュラー・ベントン(Moriss Fuller Benton)
By Unknown - presumably family or American Type Founders - Original publication: Not knownImmediate source: Fontdeck website, also reproduced here, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=51522879

ベントン氏がアメリカン・タイプ・ファウンダーズ(ATF)に勤めていた38年間にデザインした書体はかなりの数に登るため、Wikipediaでもリストになっています。有名な書体をいくつか挙げてみると、Century Roman、Franklin Gothic、Engravers Old English、News Gothic、Bodoniなど。かれの活躍した時代は、ジャズエイジとも重なります。派手で狂騒の時代。多くの書体が求められた時代でもあったのではないでしょうか。


Hoboのデザインのニュアンス

Source: commons.wikimedia.org Wikipedia Commons. License: All Rights Reserved.

Hoboは、人気で、ご覧のようにテレビ番組のタイトルにも使われたのですが、デザインのニュアンスにはアール・ヌーヴォーらしさがあります。アール・ヌーヴォーは1890年から1910年にかけて起こった芸術運動で、ミュシやエミール・ガレなどがわかりやすい例です。

アルフォンス・ミュシャ
エミール・ガレ作の花瓶

アール・ヌーヴォーについてはこちらの記事に詳しく書きました。


おしゃれな”Hobo“

ブルーノートのロゴには……
https://www.wikidata.org/wiki/Q885822#/media/File:The_Blue_Note_NYC_2008.jpg

写真は、ニューヨークにあるブルーノートというジャズ・クラブです。東京にもあり、同じロゴが使われています。このロゴにHoboが使われています。

https://www.jazziz.com/the-blue-note-new-york-ny/


Hoboが意味するもの

Hoboは、いろんな場面でいろんな具合につかわれているので、ひとくくりにできないデザインの書体です。東京の下北沢あたりの町の電気屋さんの看板にも使われていました。強いていうならば、アメリカっぽさはある書体です。生まれがアメリカなのもありますし、生まれた時代もアメリカ的です。だから使われ方にも、なとなくアメリカらしさを含むことが多いです。最後に、今朝、わたしが自宅のバスルームでみかけたHoboがこちらです。

かわええ

これはアメリカとか関係なく、ただただかわいい(笑)。犬用のシャンプーです。


参照




よろしければサポートをお願いします。サポート頂いた金額は、書籍購入や研究に利用させていただきます。