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欧文書体の種類を知ろう:ディスプレイ編

火曜日なので #デザイン の話です。その他のデザインの話はこちらに。


4回シリーズの「欧文書体を知ろう」の最後になります。今まで紹介したセリフ、サンセリフ、スクリプトはこちら↓。


欧文書体の種類「ディスプレイ」はざっくり言うと「その他」

欧文書体の種類に関しての知識として重要なのは今までの3つ、セリフ、サンセリフ、スクリプトで、ディスプレイに関しては、欧文書体の歴史や成り立ちとしての立ち位置は、ちょっと狭め。とは、言えちゃんと役割のある種類の書体群です。ディスプレイの目指すところは、「目立つこと」です。なので、ディスプレイの他に「デコラティブ(decorative)」とも呼びます。「装飾的な」という意味です。じっくり読んでもらうつもりの無い書体です。そのかわり、ばっちり目立って欲しい。

その他といいましたが、その使われ方をみてみると思いの外、身近です。

映画のタイトルに使われるディスプレイ

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Image: Empire “Bond 25 Title Confirmed As No time To Die”

これは、2020年に公開予定の『007』シリーズの最新作のタイトルです。このタイトルに使われている書体は、(ちょっとおもしろくって)Futuraという書体のBlackというファミリーです。Futuraが書体名です。ポール・レナーという方が1927年にデザインしたサンセリフです。ドルチェ&ガッバーナ、ジル・サンダー、ルイ・ヴィトン、ジレット、メットライフ、オメガ、レッドブル、シュプリーム、アルファ・ロメオのロゴにも使われる超絶人気の書体です。

じゃあ、これサンセリフじゃないか

と思われるでしょうが、そのFuturaのBlackというファミリーはご覧の通りタイトルや装飾に使うようなデザインになっています。ファミリーとは、書体のなかの線の太さ違いなどの「種類」という意味です。FuturaのBlackは、Futuraのコンセプトをもちながら、他のFuturaと大きく異なっています。Futuraについてはこちらで詳しく書きました。


他の映画のタイトルも観てみましょう。


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image: https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcTQhPSXoieg8HXbxlUX3CuqC6RU9AR0A5_T0pShK_gkeH-fiXUA

これは2013年公開のバズ・ラーマン(Baz Luhmann)監督による『The Great Gatsby』のポスターです。ここで使われている書体は、Atlasという書体です。K.H. Schaefer がデザインしたFatima Versalienという書体を2013年にリファインしたものですが、Fatima Versalienは1931年にデザインされた書体で、当時の流行を反映しています。


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image: pgtipsonfilms The Big Short -title banner

こちらの映画は、邦題では『マネー・ショート』。原題は、ご覧の通り『The Big Short』。タイトルに使われている書体は、Engraversという書体です。

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Engravers (on Myfonts)

1903年にアメリカでMoriss Bentonという多作の書体デザイナーによってデザインされた書体で19世紀に人気だった刻字をベースにした書体です。この書体は、大文字しかなく、ディスプレイ/デコラティブのカテゴリに入れて良い書体です。「入れて良い」という気持ちの悪い表現は、デコラティブあともう少し装飾性の高い書体をニュアンスとしては指すからです。


デコラティブな書体の例

なので歯切れよく「デコラティブ!」と呼べる書体も紹介します。

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Source: http://www.flickr.com Uploaded to Flickr by Frank Grießhammer and tagged with “hobo”. License: All Rights Reserved.

こちらは、Hoboという書体で、じつは日本でもそこかしこで見かける書体です。

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1910年にデザインされた書体で、こちらもMorris Bentonのデザインです。


他のデコラティブな書体もみてみましょう。

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Source: http://www.pincelsigns.com Pincel Signs & Murals. License: All Rights Reserved.

これはRosewoodという書体です。1866年から1875年にリリースされたClarendonというスラブセリフをベースにしたデコラティブ書体です。

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Rosewood (on Myfonts)


ディスプレイのまとめ

他の書体は、基本スムーズに読んでもらうことを前提としてデザインされているため、タイトルに使うには少々弱いことがあります。それは日本語の書体にも言えることです。そこでより目立つ書体のニーズが発生します。産業革命以降、広告やサイン(看板)のニーズが増えた19世紀後半ごろにうまれたものが多いように感じます。すぐに消えたものもあれば、こういして長生きした書体もあり、使われている場所や使われ方を観ていくとなかなかおもしろいものがあります。

ただ目立てばいいのではなく、やはりいつでも伝えたいニュアンスがその書体の背景にあります。それぞれの書体についておりをみて紹介していきたいと思っていますが、自分でも「この書体はなに?」という興味を持つことがあると思いますので、そんなときは、Myfontsの書体を画像から調べてくれるサービスを使うと良いでしょう。


逆に書体名を知った後に、その書体が、どんなところで使われるかを知りたくなったときにはFontinuseというウェブサイトが便利です。


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