なぜスポーツシューズに蛍光色が使われ続けるのか?
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
スポーツシューズになぜ蛍光色が使われるのか?
“商品に対する無意識の判断の70〜90%は、数秒の間に色だけで決定されている”
ニューバランスでライフスタイルフットウェアのコンセプトデザインと戦略を担当するジェニー・ロス(Jenny Ross)氏は、このようにニューヨーク・タイムズに語っています(※1)。
「色彩は私たちを興奮させたり、落ち着かせたり、血圧を上昇させたりします。本当にパワフルなんです」。
なかでもナイキのネオンライムグリーン、ヴォルトシューズにおける重要な洞察は、この色が、人の光受容体が最初に気づくのがこの色であるというものでした。光受容体(optical reeptors)とは、光を感受し、それと認める受容体です。つまりナイキのヴォルトシリーズのライムグリーンの蛍光色は、人が一番最初に気づく色だということです。
ナイキの副社長兼クリエイティブ・ディレクターであるマーサ・ムーア(Martha Moore)氏は、この色についてナイキは、HDTV(高精細テレビ)とそれが写す競技場で、色がどのように現れるかについて徹底した調査を行っていたそうです。その結果、感情に強く訴える色としてこの蛍光色を同定しました。
Apple WatchのNikeにも使われている
ちなみにApple Watchのナイキモデルにもこのヴォルトカラーは使われています。
わたしたちの目は印刷物よりもディスプレイに向けることが多くなってきている
プーマのミラージュスニーカーは、スニーカーをエレクトロニック・ミュージックとリンクさせようとしたデザインだったようです。複数の時代をミックスしたような「リミックス」がデザインのコンセプトにありました(※1)。
そしてその色使いは、DJブースやクラブ、音楽のジャケットなどをそれこそミックスしたようにして組み合わされています。ここでも蛍光色が使われていますが、これは色で言えば印刷された色ではなく、そのものが光る色に関連しています。
考えてみると2007年にiPhoneが登場して以降、指数関数的にわたしたちが触れるメディアは紙からディスプレイに移行し続けています。紙とディスプレイでは、ベースになる色の原色が異なります。いわゆるCMYKとRGBです。CMYKはすべて合わせると黒になり、RGBはすべて合わせると白になります。
同じ色を見ているようで紙とディスプレイでは異なっているわけですが、わたしたちの感覚は、紙よりディスプレイのほうになれつつあるわけです。
この色に対する接し方の変化も蛍光色を使った商品が多く現れる傾向と関連があるかもしれません。
まとめ
じつのところ、色彩理論(Color theory)というまだまだ頼りな理論で、この色を使うとこんな効果がある!という断定できる場面が少ないようです。いままで色々調べてきたものの、そういう色と効果のエビデンスを明確に示した記事や論文には到達していません。
なので、蛍光色には人間はハッとする傾向があるのかもなーくらいかもしれません。ただしスポーツブランドは、色とブランドを定着させることに、少なくともナイキは成功しているようで、ヴォルトカラーをみれば、わたしたちは「ナイキ?」という想起する程度に条件づけはされているようです。
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参照
※1
※2
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