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日向ぼっこ

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日向ぼっこ 未完作品 雨がずっと降るようになった地域。
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日向ぼっこ01(お題)

 ある日、ずっと雨しか降らなくなった。
 広い地域で、日夜問わず、ずっと。そして戦争が起きた。

 「今日から配属になりました。レオと言います。よろしくお願いします」
まだ未来のある青年はそう言って所長に敬礼した。
「よさんかね、ここはもうそういう場所ではないのだよ」
レオは少したじろぎ、敬礼を解いた。
「場所を移そうか、ついてきなさい」
所長は丸眼鏡を白衣の袖を使って拭った。パスッパ

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日向ぼっこ02

「そういえば、レオが来てから1週間だね、所長」
クロの手の中にあるアルミ缶が「プシュ」音を立てた。
「そういえばそうだな」
所長は手元の書類にサインをしながら返事をした。その時ドアがガチャリと音をたてた。
「おはようございます」
レオはプラスチックのコンテナボックスにさらにノートパソコンを持っていた。
「レオくん大丈夫かー」
所長が書類から目を離してレオの方を見た。
「大丈夫です…」
レオは机の上

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日向ぼっこ03

 食堂でご飯を食べた後、いつもの少し狭い部屋に戻るとナツがパソコンの画面を見ながらコーヒーを飲んでいた。ナツは普段はノートパソコンを使っているがそれでは性能的にドローンを動かすのは難しいらしくデスクトップ型のパソコンに操縦桿のようなコントローラーが接続されていた。
「ナツ。流石に散らかし過ぎ」
クロは散らかった机を見てため息をついた。クロがチラリと見るとレオは黙々と机に散らかったプリントを片付け始

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日向ぼっこ04

第4話

「すぐに所長を呼んできてくれ」
ナツはいつもと違い、震えた声でレオとクロに話しかけた。クロはその声から察してすぐに部屋のドアを蹴破る勢いで飛び出していった。
「一体なにが見えたんです?」
レオはナツがいまも目を離さずにいるモニターをみた。
「……これがカメラの映像ですか?」
モニターにはドローンから送られてくる映像は空に浮かぶ円盤を映し出していた。それは戦前の映画に出てきそうな見た目で空

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日向ぼっこ05

 「で、なんで二酸化炭素の割合がおかしいんですかね」
ナツはため息をついた。パソコンの画面にはまだできて間もない円グラフによって空気中の気体の割合が示されていた。
「…わかったかも」
クロがナツのパソコンのキーボードを叩いて気温のデータを表示させる。
「やっぱり」
クロ以外は置いてきぼりになった。
「クロどういうことだね?」
所長が口を開く。
「この機械は雨を降らす機械なんだよ」
クロはパソコンを

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日向ぼっこ06

フロントガラスに引っ付いて必死にワイパーが首を振っているのを見て「勤勉だなぁ」とクロはシートベルトをいじりながら思っていた。
車のエンジンを掛けたときからラジオは少しノイズが混じりながら最近の戦況を伝えていた。
「なぁ、戦場ってどんな感じだった?」
「はい?」
レオは戸惑いながら聞き返した。
「戦場にいってたんじゃなかったっけ?」
「ああ、ぼ、僕ですか?」
クロは少し笑いながら
「お前以外この車に

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日向ぼっこ07

「設計課はどこですか?」
クロは建物に入り、受付のカウンターを見つけるとすぐにそう聞いた。
受付はクロの容姿に驚きながらも
「そこに書いてありますので…」
と受付の指差す方をみると案内板が柱に掛けてあった。少し雑な案内だが不十分でもない対応というような感じだった。
「ありがとうございます」
クロは丁寧にそう言うとレオの手首を掴んで引っ張って行く形で案内板の前に向かった。
「設計課は、設計課は…」と

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日向ぼっこ08

「タングステンね、まぁ使えるよ」
クロはおどけながらそう言った。
「よし、ここにも試作品を作るために工作機械は揃ってる。後で作ろう、あともう一つ問題があってな…」
「なんですか?」
レオは対戦車ライフルを箱に戻しながら聞いた。
「誰が撃つかってことだ。勿論、ここからは届かないし、当然撃つ場所は前線で、しかも余剰はほとんどない」
余剰と言えば幾分か聞こえはいいがほとんどは数ヶ月前まで銃も持ってなかっ

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