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アリさん大戦争 〜終わらない攻防戦6日間の記録〜


なにか物足りない、と感じていた生活の中に、あるものが入ってくるようになった。本日で3日目だ。

私の生活に入ってきたもの。それは…


蟻(アリ)である。


アリに突然に関心をもったのではない。生物学や昆虫に関心があるわけではない。突然私のお家に入ってきて、毎日食料探す。

それはもう不可抗力だった。
私とアリさんの攻防戦が始まるのは。



1日目。


窓付近においてある観葉植物に向かって窓枠の隙間から行列をつくっている彼ら。

久しぶりに、アリの行列を見た。
せかせかと何やら白いものを持って、頑張って運んでいた。
シロアリではない。ただの外にいるアリだ。

窓の隙間から入ってくるくらいだから、1ミリ〜2ミリくらいの小ささではあった。行列を見たときにはびっくりしたが、黒光りする家に入ってくるあの俊足なヤツとは違って、びっくりの後の心の安定感は違った。

とにかく冷静だった。

おつかれさん、と心のなかで思いながら、アルコールをかけて駆除をし、窓枠の出入り口となっているであろう場所にテープを貼った。

列を乱さずやってきた。
(写真は攻撃後)



1日目、昼過ぎ。

外の天気が怪しくなってきた。窓から外を見ようとカーテンを開く。
ふいに、さっきのテープを張った出入り口を見る。

彼らはいない。
こうかはばつぐんだったようだ。

ついでに出入り口に沿って窓の下の方に目をやる。
すると、窓縁に沿って働く数匹の彼らがいた。

どっからきたん。
またアルコールをかけ、窓枠の隙間はすべてテープによって塞がれた。


2日目。

朝、アリさんはいなかった。
完全勝利だ。
アルコールも効くものなのだなと思いながら、観葉植物を眺める。

彼らは見当たらなかった。

2日目、昼過ぎ。
ヨガマットの上で、ストレッチをしていた。
ふぅと息を吐きながら前屈したとき、白い床にゴミが落ちている…と思いきや、これが動いた。

彼らが攻めてきている…!

とっさに私は周囲の状況確認を始める。マットの周りには2匹。退治。

ズンズンと窓の方へ向かう。すると、
窓縁にはいないものの、窓縁と壁のつなぎ目に当たる部分(ここでは縦枠と言おう)に攻め込まれていた。

くぅ、、、奴らはまだ諦めないのか。

またもアルコールを使用し、出入り口を塞ぐ戦法をとる。
最後に重曹スプレーを辺りに撒き散らし、毒薬まみれの床にしておいた。
これで君たちの侵入は不可能であろう。


3日目。

朝から彼らの姿はなかった。
窓枠を隅々確認した。各ゾーン5秒間目視した。

私の家はマンションの2階に当たるため、外からは私の姿はバッチリ見えるのだ。画家さんがいれば、「窓縁を眺める女」としてモチーフになってやってもいいよ、とかいうつまらない冗談を思いつくくらいにはまだ冷静だった。

それでも、2匹程度は様子見に来ていた。
侵入口を塞ぐことは難しいと考えた私は、ネット情報で知った、「酢」を試してみることにした。

3日目、夜。

大量に、侵入してきていた。

酢は効かなかった。
というのも、我が家にあるものはオーガニックのリンゴ酢であったため、きっとそれが原因で引き寄せてしまった。

泣きながら、また、攻撃をする私。終わらない。

今度は「シナモン」を試すことにした。


4日目。

夜。
シナモンがばらまかれた窓付近。戦いの激しさを伺わせる。

昼も彼らの姿はなく、これは本当の終戦か…
と思ったのも束の間、反対側の壁の隙間から、侵入しているではないか。
しかも結構な数だ。いつの間に。

昼にいなかったから、これは油断した…。
圧倒的な相手の戦略勝ちだ。


5日目。

昼過ぎ。またも観葉植物を標的に奴らは侵入してきていた。

だが、もう私には落ち着きが出てきていた。観葉植物まで辿り着けそうだけれど、たどり着けないようにシナモンを撒き、「シナモンロード」を作って奴らを床で遊ばせるくらいにはなっていた。

彼らを殺めることはしなくなって、むしろ行動観察をしているようになった。


6日目。

ついに、彼らはいなくなった。
ここに、食料はないと気づいたようだ。

まだ安心はできないが、私の生活ルーティンに入ってきていた「アリ戦争」の時間はなくなったのだ。

少し、安心している。

いつものような生活が帰ってきた。

シナモンは、念のため撤去は見送っている。

お皿を洗う。
本を読む。
スペイン語を勉強する。
料理をする。

普通の毎日でも、時々、窓縁を確認してしまう。
それでも、入ってきていない。

本当の終戦だ。



たった6日間ではあったものの、彼らの粘り強さには気付かされるものが多かった。こんなに小さなアリでも、生きるための素晴らしい能力があるのだな、と改めて思う。


洗濯機を回そうと、サンルームを開ける。

すると、窓の隙間から、列をなしている彼らが行ったり来たりしていた。


わたしはとっさに、シナモンを手に取った。

第二次攻防戦が、始まろうとしていた。


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