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汽笛

自分が確かにここにいるようで、ここにいないような感覚になることは昔からあったけれども、ここ数年ははっきりと自覚するようになった。誰かの話に生返事なのは心がどこかにイッている時だ。人並みの生活を送っているが、いつ転落してもおかしくないと思うし、狂気は隠せない、普通の暮らしの中で軋んでいる音が人知れず聴こえる。

うとうとしてや団の夢を見た。コントの賞レース番組でお笑いを忘れた演劇じみたことをやっていた。時代背景は中世のヨーロッパ。観ている側が頭を捻らねば意図が見えてこない。コントの途中で会場が変わるので、観客たちは各々の移動手段で別の会場に行かねばならないのだった。
自分のかけた目覚ましで起こされ、また微睡んで別の夢を見る。私はどこかの会場を求めて移動している。目的は分からない。そしてまたアラームが鳴り始める。寝室に生温い空気が篭っている。カーテンの隙間から南国らしい強い陽が差している。起きられそうにない。夢の余韻のせいで何だか心許ないし、何より眠くて、しかし私と話がしたいという知人からのメッセージに気付いて徐々に意識がはっきりとしてきた。しかし今度は相手が寝てしまったようだった。もう休憩時間は終わりだというのに防音の部屋で寝ている。誰も呼びに来ない。

設定を説明するなんてナンセンスだと思う。説明文を書く自分はダサいと思う。そんなもの省略して、想像は無限だから必要なことだけ相手に渡してしまえばいい。


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