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移住は「どこかが増えればどこかは減る」ゼロサムゲーム

竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織作り、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点でゆるゆるとお話をしていく番組です。

いま、noteさんの #創作大賞2024 #ビジネス部門 という企画に参加しています。『「仕事っぽいシゴト」が社会の課題を解決する』というタイトルの本を作るイメージで毎日お話しています。1本目、目次はこちらです。

昨日は、「地方における人口減少対策、3つの施策」というお話をしました。

今日は、「移住は『どこかが増えればどこかは減る』ゼロサムゲーム」というお話をしていきます。

音声はこちらです。

人口減少に対して、以前はいまほど関心を抱いていなかった

人口減少に対して、僕は強い危機感を抱いているわけですが、以前からそうだったかっていうと、以前はいまほどではなかったんですよね。

どちらかといえば、「人が減っているな。でも、しょうがないな」という感じでした。もちろん、「人が増えてくれればいいなぁ」とは思いますが、それほど強い危機感ではなかったんですね。

いまは、自分が住んでいる地域の人がどんどん減っていって、少子高齢化をしている現実に、強い課題感として抱いていますが、以前は「人を増やす」みたいなことに、それほど強い関心があったわけでもなかったんですよ。

「地域を活気付ける」みたいな話になった時には、「人を増やす」くらいの、ぼんやりとした認識だったんです。「でも、そんなに簡単じゃないよね」みたいな。

人が増えることが、必ずしもよいことだとは思わなくなった出来事

ですが、実はあるとき「人を増やすことが、必ずしもいいことばかりじゃないんだな」と、思ったことがあったんですよ。

それは、2017年ぐらいに読んだ『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション』という本を読んだのがきっかけです。ある一文が、僕にとっては結構、大きな衝撃だったんですよ。

引用する前に、前段に書いてある内容をざっくりお話すると、「人口が減っていますよね」と、「人口の減り方は、どうやらこの先の未来、すぐに変わることはなさそうだ」と。

いままでの日本では「拡大する。成長する」みたいなことを前提にしていたけれど、「これからは、変わっていくよ」ということが書かれています。

以下、引用します。

 これまでは、将来像を描くときも拡大、成長を前提にしていましたが、これからはそうではない。減少を前提に、新しい戦略を描く必要があるのです。

 そう考えると、全体の人口が減る中で、地方自治体間で、定住人口という限られたパイの奪い合いを繰り広げることは、疲弊を生むだけであり、不毛だと言えるのではないでしょうか。どこかが増えれば、どこかが減る。ゼロサムゲームと言われます。勝ち組と負け組を分けるのです。実際、同じような懸念や指摘もなされています。

出典:関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション

強い衝撃を受けた時、よく「あたまを金づちで殴られたみたいに……」なんて言うケースがありますが、僕にとってこの一文は、かなり強い衝撃で、「ホント、そうだな」って思ったんですよ。

強いところだけが、勝てばいいのか?

移住といったら、これまでも「うちの街はすごくいいところなので来てください!」とか、「移住した人にはこれだけお金をつけます!」とか、そういった施策が多かったなって思います。いまも多いですよね。あとは、「子どもの手当を充実させます!」とか。

もちろん、育てやすい環境をつくることは大切です。施策による競争があるからこそ、成長するのですから。

でも、単にお金をばらまいて、「これだけあげるから来てください!」とか、豊かな資源があるところだったら、その魅力を伝えられるけど、必ずしもそういう地域ばかりではありません。資源が恵まれない地域だって、日本全国いたるところにあるわけじゃないですか。

そのように考えたときに、「うちは、すごくいいところだから来てください!」みたいに、PRがうまいところだけ、資金力があるところだけがに人が集まることが、本当にいいことなのだろうか……。

この、『関係人口をつくる』という本を読んだとき、強く感じたんですよね。この本を読んでから、「移住って、そもそもいいことなんだろうか?」と考えるようになりました。

もちろん、その地域が「いいな」と思って、選択すること自体にはまったく問題はないと思います。その人が「移住したい」と思って、選択をした。その「行きたい!」と思われるような「何か」を作っていくことは、もちろん重要なことです。

だけど、ひとつの地域だけが盛り上がっていればいいのか。ひとり勝ちしていることが、本当にいいことなのか? 日本全体で見ると、どこかが増えるということは、どこかが減るということ。だから「自分たちだけが良ければいいの?」という感じが、僕はするんですよね。

東京も、人口が減る日が来る

また、2023年のデータでは、日本の都道府県の中で人口が増えたのは東京だけで、他のと46道府県は人口が減っています。東京一極集中が進む中で、「東京の人口を分散させよう」「多極化が必要だ」といった議論もあります。確かに、それもいいのかもしれない。

だけど、東京だって2040年には人口が減ってくるんです。そう考えた時に、「どこかが勝てば、いいのか」とは、僕には思えない。

だから、少子高齢化・人口減少という課題を考えた時に、人が移動しなくてもいいような施策。何か、困りごとがあったときに助け合えるような施策。「そういうことって、できないものかな~」と、ずっと思ってきました。

というわけで、今日は「移住は『どこかが増えればどこかが減る』ゼロサムゲーム」という話をしてみました。僕は、「どこかだけ勝てばいい」とは、まったく思えないので。人口が減っていく中で、何か「いい施策は作れないだろうか?」ということを、ここ6~7年ほど、ずっと考えてきました。

じゃあ、今日の話はこれで終わりにします。

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