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言葉を使って静かに、タフに闘っている人 2015年4月10日

 おはようございます。自称「たじろぐ女」神垣です。

 アーサー・ビナードという

 名前を聞いたことがありますか?


 アメリカ生まれの詩人、俳人、随筆家、翻訳家
 のアーサー・ビナードさん。

 私が彼の名前を知ったのは
 絵本からだったと記憶しています。

 1990年に来日してから日本語での詩作を始め
 絵本のほか、エッセイなど、日本語の著作も多数あります。

 今回も、例によって紹介する本に行き詰まり
 夫の本棚を物色していたら
 ビナードさんの「アーサーの言の葉食堂」
 が目に留まりました。

 手にとってみると
 言葉をテーマに一篇3ページほどで構成された
 エッセイ集でした。

 一読して驚いたのは
 きちっとした、あるいはキリッとした
 日本語の使いこなし方。

 語彙が豊富で
 言葉の扱い方が実に丁寧。

 米国人らしいジョークやユーモアを織り交ぜつつ
 おやじギャグになる一歩手前の言葉遊びも達者です。

 まるで、国語が得意な優等生が
 「どう? ぼく、こんなに日本語を知っているんだよ」
 と少々自慢げに書き綴っている感がなきにしもあらずですが

 その半面で
 この人、本当に日本語が好きで
 真剣に、でも面白がりながら
 勉強してきたなんだな
 ということも伝わってきます。

 ビナードさんは
 東日本大震災後、広島にも拠点を置き
 広島平和記念資料館の地下収蔵庫に納められている被爆した遺品を
 独自の視点で捉え

 原爆がもたらす現実を描いた
 写真絵本『さがしています』を出版。  
 2012年に、第33回広島文化賞を受賞しています。

 そんないきさつもあり
 広島の新聞やラジオ、テレビなどで
 彼の姿や話に触れることもあります。

 夫も、彼の講演を聞きに行き
 会場で本を購入した模様
 (2013年の日付の著者のサインがしてありました)。

 本の内容は、著者自身が
 「生活の細部へのこだわりから生まれた一冊」と書いている通り
 さらっと読める軽妙なエッセイ集なのですが

 「あとがき」に夫が線を引いている一文に
 ドキッとしたので、記しておきます。

 「言葉を使うときも、その言葉の向こうにある実態を意識しないと。
  使われたあと、言葉がどこへ流れ、
  生活の中でどう拡散して、あるいは濃縮されていき、
  どんな問題を引き起こしているのか、
  無視してはならないと思う」

 これは、多分
 言葉を扱う仕事をする
 わたしへのメッセージかも、と受けとめました。

 肝に銘じなければ。

 ビナードさん自身も、言葉を使って
 静かに、でもタフに闘っている人だと思います。

 大人はもちろん
 これから言葉を吸収し、蓄積して成長していく
 中高生にも読んでほしいなと思った1冊です。

アーサー・ビナード 著「アーサーの言の葉食堂」

▼アーサー・ビナードさんはこんな人

VOL.2391 2015年4月10日配信 メールマガジン あとがきより)



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