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“物語を残す”ものづくり 2013年12月13日

 おはようございます。自称「じわっときた女」神垣です。

 手紙が

 本に

 なるなんて・・・

 今日、紹介する本
 読んでいるうちにじわじわ来ます。

 薪ストーブが発する遠赤外線のように。

 東京の建築家・中村好文さんへ
 北海道のパン職人・ 神(じん)幸紀さんが
 パン小屋の設計を依頼したことから始まる往復書簡。

 それが、図や写真を織り交ぜながら
 1冊の本になったのが
 「パン屋の手紙  往復書簡でたどる設計依頼から建物完成まで」
 です。

 写真で見る神さんのパン屋さんは
 「これは本当に日本にあるお店?」
 と思わずにはいられない
 牧歌的なたたずまいをしています。

 それは建築前も建築後も変わらず
 むしろ建築後、ますます童話の世界にあるような
 パン屋の雰囲気を醸し出しているのです。

 まさに、現代版ハイジの山小屋!

 パンと建築、
 対象は異なるものの
 “つくり手”である2人の男性の手紙のやり取りは
 なんだか、できすぎでは?
 と思われるほど、物語になっています。

 親子ほど年が離れていても
 互いにリスペクトしあう2人が
    時に穏やかに和やかに
 時に、厳しいことや苦しい胸の内を明かしながら
 やり取りが続き、そして
 パン小屋の完成を迎えます。

 この手紙のやり取りが本になり得たのは
 施主である神さんの筆力にあるような気がします。

 「書き手」としては素人なはずの
 30代のパン職人の文章には
 教養と彼自身の生きる姿勢が伺えるのです。

 神さんが薪をくべた窯で焼くパンもきっと
    この文章のようにじんわりと温かみがあり
 滋味のあるパンだと想像できます。


 この本を教えてくれたのは
 例によって、うちの夫です。

 実は彼、(自称:歌って踊れる)アーキテクトで
 棟梁の息子ゆえ、建築には一家言ある男。

 中村好文さんは好きな建築家の一人
 なんだそうです。

 「これ。えかったけん、読んでみんさい」
 と手渡されたのが、この本でした。

 カバー写真もタイトルも魅力的で
 ページをめくるうちに一気に引き込まれました。

 建築に興味がある方はもちろん
 私のようにさほど関心はなくても
 興味深く読める1冊。

 建築もパンも
 それ以外でも
 「ものづくり」ってこんなふうに
 丁寧に、じっくりと取り組んでいきたいものだなぁ
 としみじみ感じました。

 この本の2人のように
 “物語を残す”ものづくりができたら素敵です。

中村 好文・神 幸紀 著 「パン屋の手紙  往復書簡でたどる設計依頼から建物完成まで」

本書に「普請(ふしん)」という言葉が出てきます。
「あまねく人々に請い、共に力を合わせて労役に従事し、事をなす」
という禅宗の用語に由来する言葉とか。いい言葉だなと思います。

VOL.2090 2013年12月13日配信 メールマガジン あとがきより)

 


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