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高橋一清さんの言葉 2015年10月2日

 広島から高速バスで約3時間半。

 今日は朝から
 松江に取材に行っていました。

 高橋一清さんにお話を伺うためです。

 高橋さんは文藝春秋で
 「文學界」「文藝春秋」「オール讀物」「週刊文春」
 の各編集部、出版部に所属し、
 多くの作家のデビューに立ち会ってきた編集者。

 退社後は、出身地の島根県で
 松江観光協会、観光文化プロデューサー
 を務めておられます。

 高橋さんを取材するにあたり
 ご本人の著書「あなたも作家になれる」
 を読みました。

 小説家を目指す方のための入門書といっていい本ですが
 そうでない人が読んでも大変興味深く、面白く読める内容だったので
 紹介させてください。


 本書の帯にはこう書かれています。

 「芥川賞・直木賞作家を最も多く育てた編集者が
  プロの作家になるための成功の秘訣 初公開!」

 ね、読みたくなるでしょ。

 芥川・直木賞の選考委員がどのように決まり
 選考会がどんなふうに行われ
 受賞作が決まるか。

 編集者でなければ知りえない内情から
 有名作家たちの素顔や作風を伝えるエピソードのほか

 「副業で小説を書いているような人こそ、
  本業もたいへん充実していて、また、
  小説でも成功している例が多かった」

 それは、なぜか?

 「専門職に就いている方は、誰でも一作は小説を完成できる」

 とは、どういうことか?

 といった
 ひょっとして自分も小説が書けるのではないか
 と意欲を刺激される内容もあり

 しかも、実に分かりやすく
 具体的にどのように小説を書いていけばよいのか
 が述べられているのです。

 小説を書くことに関心がなくても
 人に分かりやすく文章で伝えるための書き方を
 知るうえでも役に立ちます。

 本書で特にわたしが印象に残ったのは

「書いている小説がせいぜい中距離ヒッターのレベルだと
 途中で気がついたとしても、
 中距離ヒッターで打率を稼げばよいではないか。
  
 そもそもプロ作家の全部が全部、
 ホームランバッターのレベルやタイプではない」

 という一節。

 作家に限らず、どのような職業でも
 「自分のポジションを知る」こと
 そして
 「そのポジションで、いかに光る存在になるか」
 が大切か。

 花形、トップランナーであることに憧れは抱いても
 それが全てではない。

 自分が「咲く」場所は必ずどこかにあり
 それが目立たない地味な場所であっても
 努力を重ねる姿を見てくれている人は必ずいる
 というメッセージとわたしは受けとめました。

 編集者の役割がまさにそうだと思うからです。

 本書には
 心に響く一文が各所に散りばめられていて
 読み進めながら、みるみる付箋を貼ったページが増えていったのですが

 著者である高橋一清さんもとても魅力的な方。

 口調も対応もとても穏やかな紳士なのですが
 時折見せる鋭い眼光は
 名だたる文士と共に作品を生み出してきた
 プロ編集者であることを
 強く感じさせ、身震いするほどでした。


 実は本書
 現時点では古書としてしか入手できないのですが
 今年12月に文庫として出版されるとのこと。

 具体的には改めてお知らせするつもりですが
 ぜひ、この本のタイトルは覚えておいてください。

 良書です!

高橋 一清 著「あなたも作家になれる」

最後に、作家も編集者もライターも
「犠牲の多い仕事です。だからこそ、良いものをつくらないとね」
と言葉をかけてくださり、思わず涙したわたしです。
(VOL.2499 2015年10月2日配信 メールマガジン あとがきより)

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