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令和の今こそ、立原正秋! 2016年1月22日

 自称「考えさせられた女」神垣です。

 名前には秋という字がつくのに

 冬の似合う作家です。


 以前、
 立原正秋の長編小説「残りの雪」
 を紹介したことがありますが

 今日ご紹介するのは
 短編集「雪のなか」です。

 新潮文庫の長編小説は
 たじろぐほど字が小さかったのですが
 安心してください。

 講談社文庫の短編集は
 ほどよい字の大きさで
 読みやすいです。

 長編同様
 四季折々の情景を織り交ぜながら
 男と女の行き場のない恋愛模様が
 描かれています。

 立原正秋は
 昭和元年生まれ、
 存命なら、今年で90歳でしたが

 昭和55年、食道がんで
 54歳で亡くなっています。

 したがって、
 作品に描かれる光景も
 登場人物たちも
 昭和を感じさせるものばかり。

 男女ともに
 きものを着た登場人物が多く

 会話の言葉遣いも
 少し古めかしくも奥ゆかしい
 のが印象的です。

 バーのカウンターでマッチ棒をもて遊びながら
 「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず。
  そんな言葉あったな」と男がつぶやいたりするのですから……。

 ケータイもメールもない時代
 公衆電話で連絡を取り合い
 逢瀬を重ねる
 男と女たちがそこにいます。

 えらくスピーディーで
 次々と情報が更新される現代に暮らす自分が
 立原正秋の小説を読むと

 随分とのんびりと緩やかで
 牧歌的。

 人と人、人と風景、物事の間に
 余白がたくさん感じられます。

 じれったいとも言えますが
 想ったり、考えたりする
 時間と空間の余白が
 男女の関わりをより濃く、密なものにしていた
 ようにも思います。

 文庫のカバーには
 「時代が移り変わっても変わることのない
  男女の情念を、独自の美意識で描く傑作選

 とあります。

 いずれの短編も
 傑作であることは間違いなく
 どの作品も「わたしならどうするだろう」と
 考えさせられました。

 答えの見つけ方は
 人それぞれ。
 正解もないけど、間違いもない。
 だから、自分で探すしかないのでしょうね。

 立原正秋、
 一度は読んでみてほしい作家です。

立原 正秋 著 「雪のなか」 (講談社文庫)

   友人と交換日記よろしく
 立原作品の長編と短編を交換し合って読んだのですが
 楽しい試みになりました。
(VOL.2569 2016年1月22日 配信 メールマガジン あとがきより)










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