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ここが問題! 新しい水産資源の管理 第9章 秋田県のハタハタ資源の変動と管理
第9章では、太平洋クロマグロの場合とアプローチの仕方は全く異なりますが、2つの幸運に恵まれ、資源変動に与える環境変動の影響と漁獲の影響を見事に分離して説明することに成功した、秋田県のハタハタ資源の分析例を紹介します。
ハタハタは秋田県民が愛する秋田県を代表する魚です。また、ユネスコの世界文化遺産にも登録認定された秋田県男鹿半島の伝統行事「なまはげ」をもてなす料理の一品としても欠かせないもので
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第6章 新しい資源変動理論
第5章において、再生産関係として、増加、無相関、減少の3つのパターンが出現すること、また、再生産関係の変動を年代順に結んでいくと、時計回り、反時計回りの軌跡が現れることを示しました。従って、再生産関係は3パータンそれぞれに対して時計回りと反時計回り2ケースがあるので、計6パターンに分類可能であることがわかります。
本章では、なぜ、そのような6つのパターンが出現するのか、そのメカニズムについて
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第8章 太平洋クロマグロ資源の変動と管理
日本政府は日本沿岸で漁獲される太平洋クロマグロに対して、2015年から漁獲枠を設定し、数量管理を始めました。
しかし、2017年度は予想外に大量の小型魚が沿岸に来遊し、管理期間内(2017年7月~2018年6月)の漁獲枠を大幅に超過してしまう可能性が高くなったため、水産庁は2018年1月に、沿岸漁業者に対して、残りの5か月間にもわたる長期の操業自粛要請を発出しました。しかし、そのような操業自粛
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第7章 新しい資源変動の考え方を検証する
第6章において、新しい資源変動の考え方を説明しました。現行の資源変動理論を一言でいうと、密度効果を非常に重視し、「再生産成功率(0歳魚尾数÷親魚量)は親魚量水準によって決定される」という考え方をするのに対して、新しい資源変動理論では、密度効果は考慮せず、「再生産成功率は環境変動によって決定される」という考え方をします(第6章、図6-7)。
この考え方が正しいか否かは、再生産成功率が環境変動に
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第5章 なぜ、MSY理論が誤りと言えるのか?
第5章では、まず最初に、なぜ、MSY理論が誤りと言えるのか、その根拠を示します。難しい話では全くありません。第4章で述べたようにMSYは再生産モデルを用いて推定されます。再生産関係としては、既に述べたように、密度効果を重視したいろいろなモデルがありますが、それらのモデルが妥当であるか否かの議論をします。
5.1 再生産モデルの妥当性について
第2章で、加入量(0歳魚尾数)を親魚量で割ったも
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第4章 水産庁が提案する「新しい水産資源の管理」とはどんな方法か?
改正漁業法の成立を受けて、水産庁は2019年7月「新たな水産資源の管理について」を公表し、優先的に検討を開始するマサバ太平洋系群など4魚種7系群について、「資源管理目標案と漁獲シナリオ案」等を公開しました[1]。第4章では、第2章と第3章で述べた資源管理学の基礎事項をもとに、「新たな水産資源の管理」に記載されている管理手法について解説することにします。
4.1 再生産モデルの決め方
第2章
ここが問題 新しい水産資源の資源管理 第3章 資源尾数を推定する
第3章では資源量推定方法について説明します。資源量推定方法もいろいろな方法がありますが、現在、最もよく用いられている方法が、VPA(virtual population analysis)と言われる資源尾数の推定方法です。。
バーチャル・リアリティー(仮想現実)という言葉は日常でもよく使われますが、VPAで使われているバーチャルは「仮想」という意味よりも「実質的な」という意味合いで使われてい
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第2章 資源管理の基本的な概念と用語
第2章は、資源管理の基本的な概念と用語について説明します。資源の変動を分析するための計算は、基本的には全て年齢別の魚の尾数をもとに行います。さらに、尾数を重量に換算し、それらを年齢ごとに合計することによって、資源量、親魚量、漁獲量を計算します。
2.1 資源管理を実施するために必要となるデータ
漁獲量に対して数量規制を行って資源管理を行うためには、漁獲してもよいとされる漁獲量の上限である
ここが問題! 新しい水産資源の管理 第1章 漁業法の改正はなぜ必要か
1.1 漁業法改正までの経緯
2018年12月、第197回臨時国会において改正漁業法が可決成立しました。戦前の明治漁業法が全面改正され、現行の漁業法が制定されたのは1948年のことです。1963年に漁業法の一部改正はあったものの、今回のように全面的に漁業法の改正がおこなわれるのは、実に70年ぶりということになります。
ではなぜ、今、漁業法の改正が必要だったのでしょうか? まず、最初にその背
ここが問題! 新しい水産資源の管理 「まえがき」と「目次」
まえがき
2018年12月、第197回臨時国会で改正漁業法が可決成立しました。主な改正点の一つとして、漁業権付与の優先順位の廃止があげられます。これにより企業への漁業権の付与が可能となるため、運用の仕方によっては小規模漁業者が排除される可能性や、漁業権が他国の巨大資本に買収される危険性等が懸念されています。
また、資源管理については漁期や漁場、漁船の隻数等を規制する入口規制と、漁獲してもよ
MSY理論に代わる新しい資源変動の考え方
水産資源の管理はどのような考え方をもとに行われるのか、その基本的な考え方について説明します。水産資源の管理は、最大持続生産量(Maximum sustainable yield; MSY)という概念をもとに実施されています。
この持続的という概念は、現在ではごく普通に用いられる重要な概念になっていますが、水産資源の管理では、70年以上も前から、この考え方を重視していました。
しかし、概念とし