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【ハーブ天然ものがたり】没薬樹/ミルラ


固める力


没薬もつやくはカンラン科の樹木で、世界に200種ほどあるコンミフォラ属の木から樹脂を分泌します。
スーダン、ソマリア、南アフリカ、紅海沿岸の乾燥した高地に自生しています。

古代エジプトで防腐処理剤としてミイラ作りに使用されていたことから、ミルラと呼ばれるようになった説は根強いです。
没薬の香りは鎮静、鎮痛効果が有名で、ミイラづくりから想像すると分かるように、固める、鎮める、落ちつかせるはたらきがあります。

乳香にゅうこうと並んで没薬は、聖書に多数の記載がある薫香料で、聖所を清めるために焚かれ、イエス・キリスト誕生の贈り物となり、イエス・キリストの遺体といっしょに埋葬された記述がのこっています。

没薬は古代ギリシャ医学で重要な生薬でもありました。
ディオスコリデス(古代ローマ時代の医者、薬理学者、植物学者)による「薬物誌」には、「(没薬の)薬効は暖め、粘液の分泌を抑え、催眠、収れん作用などで、豆粒ぐらいの量を服用すれば慢性の咳、脇腹や胸の痛み、下痢、血性下痢などを治療する」とあります。

ミルラは古くから口中トラブルに使われており、歯肉炎や歯槽膿漏の伝統的レシピとして、ティースプーン1杯の蜂蜜にミルラ油2滴まぜて口に含む処方があります。
現代ではミルラの殺菌、脱臭作用を活用したミルラチンキもあり、西洋では咽の炎症に塗布剤として利用しています。

「本草綱目(1500年代の薬学書)」には
「乳香は血を活かし、没薬は血を散らし、いずれも痛みを止め、腫れを消し、肌を生じる。よってこれらはいつの場合でも合わせて用いる」と記載されています。
「日本薬局方」にはミルラとして収載されています。


境界線の緞帳どんちょうをひらく


香りよい植物を燃やす香焚きの起源は古く、3500年まえの古代バビロニア文化には薫香料についての広い知識があったと考えられています。
ギルガメシュ叙事詩では杉(シダーウッド)が称えられ、没薬、乳香以外にもガルバナム(オオウイキョウ属)、菖蒲、銀梅花(マートル)、糸杉(サイプレス)など、古代儀式や宗教的儀式に使用されてきた薫香料はたくさんあります。

森への畏怖があったころの祖先たちの世界を少し想像してみます。
ちょうどよい洞窟を探して、火をおこし、香りよい植物の枝をくべる。
炎をとり囲むように腰かけ、神性について語りあう。
植物の香煙が周囲にたちこめ、この世界を超越する体験へと精神が解放される。
個の肉体からの解放は、大元への回帰でもあり、瞬時に現実といわれる世界にある、すべてのものとの深い結びつき、神聖な感情を得る。
世界の境界線にかかるカーテンは、香煙によって開帳されると知り、次世代へと口承されていった。

時間と空間、肉体を超える体験をほんの数秒でもしてしまうと、否が応でもすべてとのつながりを知って(思い出して?)しまうので、結果森羅万象を敬うことにつながっていったのではないかと思います。
その経験は植物の燃える匂いと溶けあうことで成就し、特定の神と特定の植物を結びつける神話や物語が生まれていったのかな、と。

千夜一夜物語に綴られる夢の世界との架け橋、インドやチベットに伝承される霊的秘儀、ネイティブ・アメリカンの香の伝統、すべては香煙によって呼び起こされ、内的世界に結びついてゆくことから始まります。

日本の香文化は森羅万象に対する敬意と、その存在への喜びが表現されたもので、繊細な感性をもつ民族らしい伝統的儀式が受け継がれてきました。
儀式としてのプロセスをおごそかに踏むことで、精神が研ぎ澄まされ、かすかな気配にも心がひらいてゆく。
儀式によって場が(次元が?)変化するのは、香道に限らずあらゆる側面で活用できる古人の智慧だと思います。

たとえば現代の家庭のなかでも、雑音を遠ざけ、湿度と温度、風の通り道をちょうどよく調整し、大きな布を広げてその上に薫香のためのお道具を並べる。
そんな簡単な儀式を踏みながら、植物の香煙を空間に解き放つと、みえない緞帳どんちょうのような境界線が香煙によって浮き彫りにされ、日常的サザエさん劇場の幕はそっと閉じられてゆきます。


こう狼煙のろしだったのか(も)


没薬は乳香とともに、古代エジプトでは重要な香料として、日々の暮らしや神事に欠かせないものでした。

日の出に乳香を焚き
正午に没薬を焚き
日没にはキフィが焚かれたといいます。

乳香は太陽神ラーの汗
ミルラは太陽神ラーの涙
キフィ(聖なる煙)は複数の香り植物から調合された香料で、祈りや瞑想のために焚かれるものでした。

24時間という1日のサイクルのなかには4つのポイント(時空の裂け目)があり、それは
・日の出
・正午(午後12時)
・日の入
・正子(深夜0時) といわれています。

祈りや瞑想は、そもそも人知を超えた存在との逢瀬、つながりを回復するためのものなので、日の出、正午、日の入に香を焚くのはごく自然な在りようだったのだと思います。

太陽神ラーはハヤブサの頭をもつ神として、ホルス神と習合され、日の出とともに、地上世界にも姿を現すと考えられていました。

ウィキペディアー太陽神ラー

日の出にはスカラベ(聖なる甲虫)として東に現れ
日中はハヤブサの姿か、太陽船に乗って空を移動し
そして夜は雄羊になり夜船で死の世界を旅する、と伝えられていました。

肉体をもつ人間として、その活動が絶頂期を迎えるのは正午で、陰陽五行説でいうところの陽極まる時間帯です。
そこで焚かれるのが没薬だったということは、没薬は陽気を強める香だったのかな、と想像しています。
陽極まって陰に転ずるため、つまり日没にはキフィの香とともにエーテル界からアストラル界へ戻るため、深く深く地に沈みこんで跳躍力をためこんでいるような。
さらに没薬を焚くことで「自分の肉体はここにある」と、その地点・ポイントを、空を舞うハヤブサ(太陽神)にお知らせしていたのではないかな、と。


ミルラからアネモネへつないだバトン


聖書のヨブ記に「あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか」という一文があります。
神という概念を星の系譜と捉えるなら、オリオンたるスサノオやオーディン、シリウスたるイシスやツクヨミ、プレアデスたるアマテラスや巨人族アトラスの7人娘などがいて、それぞれ(その星の意識体というか生命体のような…)が降下できる地点・ポイントは決まっているのだろうと思います。
神の創造物としての精霊や半神が、植物に変化しましたという物語の多くが、それを示していると考えています。

没薬は「自分の父親を愛した女性が変化した木」という神話がのこされており、その木からアドニスが誕生します。
アネモネをはじめとするキンポウゲ科の花々、つまりアドニス成分はペルシャ王族の供儀によって、2段構えで地表への親和性を獲得したのではないかと。

実の父であるキニュラースに思いを寄せ、世話係の協力を得て夜の闇によって紛れて自分が娘だということを分からなくして父と近親相姦を行った。
やがて妊娠した頃、キニュラースに相手が自分だと知られ、キニュラースに捕まりそうになるので逃げ出すが、疲れ果てた先で自分の境遇に絶望し、没薬を滴らせる木に姿を変えた。そして、その木からアドーニスを産んだ。これは彼女が12歳の時だった。

ウィキペディアーミュラー

没薬の変化物語は占星学のサビアンシンボル、蠍サイン17度そのものという感じがします。
「自分自身の子供の父である女」、または
「自分自身の霊によって受胎する、神の子を宿す偉大な女性」

面壁9年の達磨大師はエーテル体の陽人を腹から生み出したといわれていますが、まんま文字通りの秘儀があるとするなら、没薬樹に化身したミュラーは東洋でいうところの仙の秘儀によってアドニスを生むことができたのかもしれません。


プントで唾つけた(的な?)


地上降下は肉体をもって誕生するのが一番てっとり早い方法と思いますが、いっさいの記憶をなくすほど、肉体世界とエーテル界・アストラル界のあいだに断絶をもたらします。
「行きはよいよい、帰りはこわい」です。

古代エジプトでは、死んだあと何千年でも腐らないよう肉体をミイラにして保存し、地上との接点にしていたのではないかと考えています。
その際の妙薬として、没薬、乳香をはじめとしたさまざまなハーブが使われたのだとしたら、地球の入り口には乳香、地上の陽極まるところまで降下するのに没薬、地球から古郷星にもどるためにはキフィ(秘密の調合・ブレンドしたもの)が必要になるのかなと妄想しています。

古代エジプト人は没薬をプントと呼んでいました。
プント(punto)はスペイン語やイタリア語で、点や地点(ポイント)を意味します。
没薬(ミルラ・プント)は、地上に梯子を下ろすポイントを示す重要な香りで、古代エジプのファラオたちは、古郷星とのつながりを失わないよう、没薬を混在した調合ハーブで自らの肉体を固めたのではないか、と考えています。

古代エジプトには、最初の人間は太陽神ラーの涙から生まれたという神話があります。そして没薬/ミルラも太陽神ラーの涙とされています。
ファラオが死ぬと、ホルス(太陽神ラー)は地上に梯子を降ろし、太陽船で霊を迎えに行くと伝えられていました。
ツタンカーメンのホルス(ウジャト)の目の胸飾りは、つとに有名になり、現代ではさまざまなアクセアリーのモチーフにもなっています。

「フラワー・オブ・ライフ」D.メルキゼデク
意識の3側面の象徴
地下に住む生き物は小宇宙
空を飛ぶものは大宇宙
地上を歩むものは両宇宙の中間世界

エジプトはハゲタカ-ホルスの目-コブラ
ペルーではコンドル-ピューマ-ガラガラヘビ
ネイティブ・アメリカンは鷲-山猫-ガラガラヘビ
チベットでは鶏-豚‐蛇

地中と地表、空に生きるすべての生命を養う植物は、意識の象徴とされる3つの側面をつらぬき、森羅万象の結びつきを思い出させる魔法を、香り成分のなかに蓄えているのかもしれません。
植物のもつ香り成分は、人工的に「真似」はできるけれども、すべての香り成分を再現して、まったく同じものをつくることは、現代の化学をもってしてもできません。
また香る植物が秘儀・神事に欠かせないものだったこと、黄金と同じかそれ以上の価値がある財産と考えられていたのは、日本風にいうと家宝のようなもので、系譜ごとの秘儀ブレンドがあったんだろうなと想像しています。

古郷星とのつながりを思い出し、戻り道となるエーテル梯子の1段目は、植物の香り成分が醸し出す、見えない煙でつくられるのかもしれません。

☆☆☆

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