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72候【花鳥風月】大雪の候


冬ざれ、数え日、年果つる


大雪は字のごとく、雪が降り、冬になる季節です。
「冬になる」という意味の「冬さる」が転じて、天地の気が塞がれて地表の草花が枯れ、色あせた寂しい情景を「冬ざれ」と表現します。
冬ざれて、色、音、香りによる五感への刺激が少なくなると、意識は自然と内面に向かい、精神性が充実する時期にはいります。

古く冬至を一年のはじまりとすることがありました。

大雪から冬至(今年は12月22日)に向かう15日間は、一年の締めくくり、太陽が生まれ変わるその時に向けて、準備する期間ともいえます。

太陽が生まれ変わるそのときを、指折り数えて迎えるこころもちは、もういくつ寝るとお正月~♪ という国民的唱歌になりました。
ただ、いまの暦では冬至より10日ほど遅れて国民的正月が開催されていますから、禊を終えて意気揚々と登場した太陽としては、タイミングが合わなくて「え、いま?(@@;)」という感じかもしれません。

「いや、もう次のサイクルの旅に出発して10日経ってるし…」
もしも、そんな声がこころの内に響きそうだなぁと感じたら、冬至の朝日に「生まれ変わりおめでとう、今年もよろしくね」と声かけするのもありかと思います。

師走しわすはお坊さん(師)が走り回るほど忙しい、という文字にあてた俗説が有名ですが、事納めやお正月の準備で気持ちが忙しくなる感覚にフィットして、受け入れやすかったんだと思います。
グレゴリオ暦による年末の活気は、冬至から新しくなった太陽の活力を、知らず知らずのうちに受けとっているせいかも、と考えたりします。

師走は1年の終わり月に、すべてを為し終える為果しはつが転訛した説もあります。
あるいは四季果てる月で四極しはつ
年が果てる月から年果としはつという呼び名もあります。

いずれにしても太陽の生まれ変わりとともに、再スタートを切るのが気分的に合ってると感じられる場合、大雪の候から冬至に向かう15日間は、今年のうちにやり切れることは全部終わらせて、為果しはつ感を充実させ、こころの内に太陽神をお迎えするスペースを空けておくと、おあとがよろしいのではないかと思います。
仕事でもチーム内で締め切り合わせるのって、とてもとても大事なことです。

大雪たいせつの候、今年は12月7日から。

閉塞成冬そらさむくふゆとなるー天地の気が塞がって冬になる
熊蟄穴くまあなにこもるー熊が冬眠のために穴に隠れる
鮭魚群さけのうおむらがるー鮭が群がり川を上る


柑橘の原産地は常世の国?!


冬になると市場をにぎわす蜜柑の象徴は無垢と多産。
早いものでは9月から、次の春まで食べられる冬期間のご馳走です。
かんきつ類はその土地に根差した様々な種類が存在します。
ダイダイ、アマダイダイ、イヨカン、八朔、夏ミカン
温州ミカン、ゆず、カボス、すだち、ヒュウガ、ポンカン
ライム、レモン、グレープフルーツ、マンダリン、文旦と
数え上げればきりがありません。
気候風土に合わせたさまざまな柑橘類があり、環境に適合しつつ繁栄した多産の象徴そのものという感じがします。

日本の原種となる柑橘類には、橘とシークヮーサーがあります。

柑橘の原種は3000万年前のインド東北部のアッサム地方近辺を発祥とし、様々な種に分化しながらミャンマー、タイ、中国などへ広まったとされる。
日本にはタチバナと、沖縄にシークヮーサーが原生していたが、3世紀の日本の様子が書かれた『魏志倭人伝』には、
有薑橘椒蘘荷不知以爲滋味
(生薑、橘、山椒、茗荷があるが、それらを食用とすることを知らない)
と記されており、食用とはされていなかったと考えられる。

日本の文献で最初に柑橘が登場するのは『古事記』『日本書紀』であり、「垂仁天皇の命を受け常世の国に遣わされた田道間守たぢまもりが非時香菓(ときじくのかくのみ)の実と枝を持ち帰った。

「非時香菓とは今の橘である」(日本書紀の訳)との記述がある。

ウィキペディアーウンシュウミカン


日本に原生していた橘は野生種が激減し、見かけることは少なくなったものの、日本文化を形成してきた植物のひとつ、といっても過言ではないほど、歴史ある日本固有の柑橘類です。

奈良明日香村にある橘寺の名は、垂仁すいにん天皇の勅命により、常世とこよの国に不老不死の果物を取りにいった田道間守たぢまもりがもちかえった橘を植えたことに由来します。

橘寺のある場所(付近)は、聖徳太子の生誕された場所という説があり、善悪二層の二面石と、聖徳太子の愛馬だった黒駒の像が印象深く記憶にのこる地です。黒駒は達磨大師の化身説があり、空駆ける馬だったとか。

橘寺 photolibrary


日本書紀と古事記にそれぞれ、田道間守たぢまもりの逸話が収載されています。
橘の実は、非時香菓ときじくのかくのみと呼ばれ、日本書紀には「橘というはこれなり」と記載があるので、常世の国から持ちかえった不老不死の果実は橘のことだろう、という説は根強く伝承されてきました。

ときじく(非時)は、時間に左右されないこと。
かくのみ(香菓)は、香りよい、輝く木の実の意。
光輝く橘は常世から現れ、現世の時間軸に左右されず、永遠の太陽のように長寿と幸運をもたらすと考えられていたそうです。

田道間守はお菓子の神様、柑橘・蜜柑の神様として、中嶋神社 (兵庫県)にお祀りされているほか、和歌山県海南市の 橘本神社 にも主祭神としてお祀りされています。

奈良の地に引き寄せられるように足繫く通っていたころは、橘は日本の固有種で、野生種は激減しているくらいの知識しかなかったのですが、ひな壇に飾られる、右の橘・左の桜は、幼少期の思い出とともに強く印象にのこっていました。橘といえば右、みたいな感じです。

イザナギ、イザナミ2神の国生み神話から、黄泉の国ものがたりで「見るなの禁」を破ったイザナギはみそぎによってたくさんの神々を生み出します。
イザナギ神の創造降下による分裂、分化によって、左目からアマテラス、右目からツクヨミ、鼻からスサノオと、3貴神も登場します。

筑紫つくし日向ひむかたちばな小門おど阿波岐原あはきはら

イザナギの禊が行われた地を表す祝詞には、橘があったと記されていますから、神生み、創造の御業の場には橘が立ち、天から地へと神々が分化しつつ降りてくるきざはしであるかのような印象を受けます。

逆に「咲く」「裂け」「坂」の、常世とこよ現世うつしよのはざまを意味する左の桜は受容と包容力の象徴で、すべてを包み込む大きなサイクルへの帰還を意味しているのかな、と。

創造降下のきざはしは右の橘。
統合上昇のきざはしは左の桜。

日本文化を形成してきた2大巨頭(巨樹?)は、ミカンとソメイヨシノに姿を変じて、今も日本文化の底支えとなっています。


縁起物になった蜜柑

(ここから過去記事リライト部分が含まれています。製品開発の過程でエネルギー入魂したアロマ・オリジナルブレンド。72°の香りとして抜擢されたオレンジのものがたりです)


精油になるオレンジの香りは主に3つあります。
果皮に含まれる精油はオレンジ油となり、ビターオレンジ(ダイダイ)の花からはネロリが採油され、木の小枝/葉/小さい実やつぼみなどからプチグレンが採油されます。

日本ではスウィートオレンジのことをアマダイダイと呼び、橙色ダイダイイロだからダイダイなんだろう、と思っていたのですが、ミカン農家さんに尋ねたところダイダイの木は実がしっかり枝について落ちにくく、新旧の実が一緒に実ることから代々と呼ばれるようになったと聞きました。
家系代々続くようにと縁起物にもなり、お正月の鏡餅の上に鎮座するのだとか。
今では世界中で、冬至からクリスマス、お正月の風物詩に、オレンジは欠かせないものとなりました。

お正月にはおこたでみかん、という風景そのままに、こころもからだもほっこりして、気楽にのんびりできる心の状態を創り出すオレンジの芳香空間。
オレンジ精油は実際、リラックスとリフレッシュ効果をもたらす二面性のある香りなので、柑橘系の爽やかさと同時に、小春日の太陽で日光浴しているような温かい気分を醸し出してくれます。

オレンジ果皮の精油に含まれる成分には汚れを溶かす力や、消毒作用もあることから「お掃除にはリモネン」が定着しつつありますし、オレンジ油のお掃除シートも手軽に購入できるようになりました。
ヨーロッパではクリスマス時期にオレンジポマンダーを作ってドアや窓に飾る風習があり、抗菌とともに魔除け飾りとして、クローブ(丁子)を刺してシナモンなどのスパイスを振りかけます。

日本では縁起物とされ、明るさや親密さ、気楽さを心にもたらす香りと定義されるオレンジですが、西洋ではオレンジは恐怖を生み出す色といわれています。
確かにハロウィンはオレンジと黒がテーマカラーですし、神話に登場する「黄金の林檎」はオレンジのこと、という説も伝承されています。
ギリシャ神話で有名なトロイア戦争の「黄金の林檎」は、大きな戦争に発展する火種として描かれています。

たぶん東洋と西洋では、異界との接点に対する姿勢が大きく違っていることが、ひとつの理由ではないかと考えています。
西と東では、もともと民族的に自我のあり方に大きな違いがあって、異なるものは徹底的に排除するエビデンス主義の西洋は、基本一神教、神様は完ぺきな人型で、動物を崇めるなんておぞましくて想像もできない。
というのに対して日本では、稲荷信仰をはじめとして動物が神様になったり眷属になったり、有機・無機問わずあらゆるものに神様が宿っているアニミズム的信心をもっています。(キツネもオレンジといえばオレンジ色の動物ですね)

そう考えると異界との接点を象徴し、太陽の輝きと同時に恐怖を生み出す二面性をもつオレンジ色の果実を、日常にするっと受入れ、縁起物として餅のてっぺんに鎮座させる日本と、オレンジにクローブをまんべんなく差し込んで、オレンジ色を封鎖するポマンダーには、心理的に大きな違いがあるように見えてきます。


とはいえ、鏡餅にちょこんとのっかるだいだいは本当に異界の出入り口なのでしょうか。
鏡餅は年神としがみ様への供物であり依り代として、平安時代にはすでに存在していたそうです。
三種の神器をあらわすお飾りとして、八咫鏡やたのかがみとしての餅、八尺瓊勾玉やさかにのまがたまとしてのだいだい天叢雲剣あまのむらくものつるぎとしての串柿、とウィキペディアにあります。

三種の神器のことは詳しくないのですが、ウィキにある説明で興味を引いたのは「八咫鏡やたのかがみは天照大神、天叢雲剣あまのむらくものつるぎは須佐之男命、八尺瓊勾玉やさかにのまがたまは月読尊で、三種の神器は三貴子を象徴していると見る事もできる。」という記述です。

八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを表すだいだいが、ツクヨミへの供儀であり、ご神体を象徴するものであるなら、イザナギの右目から誕生したツクヨミは、やはり右の橘象徴として、八百万の神々が地上往来するときの道先案内人なのかもしれないと思いました。

日本では古い文献に記載が少ないことから、謎の神格となっていますが、橘をはじめとする柑橘類をきざはしにもっているとするなら、ツクヨミ・エッセンスは知らぬまに、地上のあちこちに眷属としての動物や、きざはしとなる植物たちを繁殖させ、人間世界のそこここに鎮座ましましていらっしゃるのかもしれません。
「しのび寄りの魔術」その開祖はツクヨミだったのでは…と、あらぬ妄想が止まりません。


自然界のお見事マリアージュ


甘さと酸っぱさ、リラックスとリフレッシュ、ふたつの相反するものが同居する柑橘系の香りを聞くとき、開発チーム内では「ガブリエルのラッパが鳴り響く」と表現したりします。

大天使ガブリエルは3大天使の一人で、神のメッセンジャーとも呼ばれます。
洗礼者ヨハネの誕生やイエス・キリストの誕生を伝える「受胎告知」の天使として聖書に登場し、ヨハネの黙示録では最後の審判の日にラッパを吹きならし、死者をよみがえらせるのもガブリエルです。

誕生と死という、有限世界ではまったく相容れないふたつの事象をつかさどる天使が、ラッパをひと吹きするだけでふたつの事象を融合させて、誕生と死の境界線を自在に飛び越える。

ガブリエルのラッパをテーマに友人が描いてくれたイラストです

「異界の出入り口」なんて揶揄されるオレンジ色の果実は、甘さと酸っぱさ、リラックスとリフレッシュ、ふたつの事象を融合させてみごとな芳香を表現する、まさに自然界が生んだお見事マリアージュの顕現、と感じます。

当社製品、しっとりホワイトの顔となる化粧水と乳液の香りにオレンジ果皮油が抜擢されたのは、ハーブ調のローズマリーと、フローラル調のゼラニウムの香りをほどよくマリアージュできると考えたからでした。

しっとり、ふんわり、やさしいリラックスとリフレッシュを共存させる香りを目指し、匂いの強い食べ物を一切断って調香に取り組んだ日々。
0.05ml単位の香りの変化に耳を澄ませて、ようやく完成したしっとりホワイト・うるおいシリーズの香りは、心底満足できるものに仕上がり、使って下さるお客様からも、香りの質が高いとご好評頂いています。
(こころからこころからうれしく思っています。お使い下さりご感想をお寄せ下さった皆様、ほんとうにありがとうございます)

しっとりホワイト 化粧水&乳液
しっとりホワイト スキンローション(化粧水)
しっとりホワイト リッチエマルジョン(乳液)



太陽は射手座後半です


冬至に向かう一年の締めくくり、最後の15日間は、太陽が生まれ変わるための年果としはつ時期。
日が短くなり、夜の時間が長くなるこの季節は、射手座による未開エリアへの冒険譚も最終章に突入します。
垂仁すいにん天皇の勅命により、常世とこよの国に不老不死の果物を取りにいった田道間守たぢまもりのように、未踏の暗闇には非時香菓ときじくのかくのみという宝物を見つけるチャンスが潜んでいます。
時間に左右されない、輝ける、香りよい果実です。

潜在意識や無意識への旅は、底の見えない大海原へのダイビングのようであり、この宇宙開闢かいびゃくのときまでさかのぼる壮大な個人史を発見する旅でもあると思います。

柑橘類には房があり、だいたい10前後となっていますが、まんなかを切断して断面図を見るとホロスコープのようにも見えます。
房の数が12個あるとホロスコープそのものです。
13個あるのはちょっと珍しいので、ヘタをとってくぼみにある白い線の数(房の数と一致しています)をみて、13房蜜柑はヨッコしておきます。

既知となってしまった地球生活(12ハウス)を、まいど同じようにぐるぐるまわり続けるのではなく、13番目の道を見つけて、もっと広い領域へ冒険したいとき、ご神体の依り代となる蜜柑を枕元において、夢の世界に冒険に出るのもまた、この季節ならではの夜長の楽しみです。


*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
*Shield72°製品に使用されているオーガニック・オレンジスウィート精油は、正式にはオレンジ果皮油と呼ばれ、賦香目的で配合しています。

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お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
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ナチュラル・スキンケア Shield72°公式ホームページ

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