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【ハーブ天然ものがたり】ミント


神々の恋バナから生まれたハーブ


めったに地上世界に行くことのない冥界の王ハデス(プルート)が、めずらしく地上世界を訪れたときのこと、愛らしい妖精ミンテに恋をしてしまったのが、ミント誕生物語のはじまりです。
色恋沙汰大魔王のゼウス神にくらべて、浮いた話のひとつもないハデス神にとっては希少な恋バナのひとつ。
冥界の王ハデスには大地と豊穣の女神デメテルの娘でペルセポネという妻がおり、母から娘を略奪するかたちで冥界に連れさった神話も有名です。
ハデスの妻ペルセポネによって、妖精ミンテは香りのよいハーブに変えられ、それ以来ずっと、現在に至るまで、地上で繁殖に繁殖をかさねて600種以上、さらに交配は進行形、とどまるところを知りません。

ミントの地下茎が広がる様はくまなく隙間なく、大地を覆いつくすかのように拡張してゆきます。
冥界の女王ペルセポネの変化魔法は、秀逸だったといわざるを得ないでしょう。
さすが大地と豊穣の女神デメテルの娘、ミンテをハーブにして地上世界に繁栄させたのは、いったいどのような意図があったのでしょう。

嫉妬や怒り、報復など、現世地上的な思考の建てつけで説明される文献には諸説あります。けれどミントの旺盛な繁殖力、交配力を考えると、植物界のなかで底抜けに自由・闊達・奔放に、生命サイクルを謳歌してきたハーブが「報復の成れの果て」だなんて、どう考えても腑に落ちません。

何百年何千年と後世にその自由・闊達・奔放な精神がつながるように、ミントの芳香によって囚われ人の解放を手助けする魔法をのこしてくれたと考える方が腑に落ちます。


ドリームチームの解放魔法


娘をさらわれた後、豊穣の女神デメテルは娘探しの旅に出て、女神ヘカテ(魔女ヘカテ)のサポートを得ながら娘の居場所が冥界にあると突き止めます。
そして一年のうち半分を冥界で、半分を地上で過ごすという契りによって、結婚を認めます。
ペルセポネが地上にいる間は、豊穣の女神デメテルの喜びが地上に満ち溢れ、春の訪れがやってくる、そして冥界にいる半分の間は、地上に実りをもたらすのをやめるようになったといわれ、これが四季のはじまりとされています。

魔女ヘカテーと豊穣の女神デメテル、冥界の女王ペルセポネと妖精ミンテ。
この4人タッグはまさにドリームチーム。
こわいものなしって感じがします。

窮屈な地上ルールに縛られて、閉塞感に囚われ、がんじがらめで身動きがとれないと感じるとき、頼りになるのはなんといってもミントの香り。
ドリームチームが用意してくれたミントの香りは、即効で気分を刷新し、見えない鎖を断ち切ってくれる、お手軽な解放魔法です。


元気即効回復力


ミントの香りはあらゆる日用品の香料として使われています。
食品、薬用品、口腔ケア商品、防虫品、掃除用洗剤、台所洗剤、せっけん、化粧品、脱臭剤、消臭剤などなどなど。
すっきり爽やかな香りは誰もが知るところとなり、頭痛や肩こり、胃腸の不調や鼻づまりなど、体調がすぐれないときにミントの香りをかぐと、すっきり爽快、ちょっとした体調不良ならあっという間に吹き飛ばしてくれることも周知のこととなりました。

ミントのハーブティーは消化不良を和らげるとされ、鎮痛作用と消炎作用によって内臓を癒しながら神経系と脳を活性化させるので、元気回復にも即効威力を発揮します。

さらに神出鬼没な虫の王、Gが嫌う匂いでもあり、免疫のない札幌生まれのわたしは、東京や大阪で暮らすことになったときミントの精油には幾度となく助けてもらいました。
ミントの精油をふりまくと一目散に走りだすGの後姿に、これさえあればどこでも暮らしていけると確信を強めています。


強靭な消化力をデフォルト設定に


地球に生きる生命種はすべて、水や食べ物、空気(気体)を取りこんで吐きだす、筒のような構造体となっています。
取りこんだものがうまく消化・排泄できなければ苦しみ、うまく循環していれば快調です。
好奇心や冒険心も連動して強化され、行動範囲も広くなっていきます。
知らないことを知りたい、学びたいと思えるのは元気な時、健康的に生きるためには消化力や排泄力のデフォルト設定はとても大切です。

ミントは消化器系に最も効果的な精油のひとつですが、日々消化しなければならないのは食べ物だけではありません。
人から聞くお話や、読書、映画鑑賞やSNS閲覧など、印象や思考を受け取って咀嚼するときは感情許容量の広さが必要と思います。
ちょっとした言葉にいちいち腹を立てたり傷ついていると理解は深まりません。

嬉々として言葉狩りをする人々は、個人的な因習にとらわれ、考えることを放棄した一種の自閉モードに嵌っている感じがします。
その逆にお喋りは排泄の一種なので、咀嚼せず消化できていないものを垂れ流すように話している人の話は一向に頭に入ってこないし、よくわからないことも多いです。

ひとつの習慣や考え方に固執した思考のクセをもっていると、新しい印象や考え方を消化するのに苦しみます。
そして苦しむくらいなら取りこまない、自閉モード標準搭載、送受信アンテナOFF、知っていることだけ、馴染んでいるホーム内だけで情報処理完結。学習意欲や情熱は気づかないうちに損なわれていきます。
かくいうわたしもコロナ騒動が起きる前は自閉モード標準搭載で、実務が忙しかったと言えば聞こえはいいですが、それはただ日々の決まったルーティンを考えなしにこなすゾンビロボットのようだったな、と。

それまで知らなかった note をはじめとするさまざまなSNS世界をのぞいてみると、なんとまぁ文学から絵画・音楽までココロ躍り感覚が震える才能がこれほど満ちあふれているとは。
「世のなかはこんなことになっていたのか…」
自宅待機を機に発信される方が増えたというのもあるでしょうが、20年前にかじっていたブログ活動や掲示板交流からは想像もできない進化っぷり。
note で綴られるさまざまな発信を拝見しつつ、世界は広い、日本人の感性は素晴らしい、日本語読める今生はラッキーだったなぁと感謝しつつ、改めて自分の了見の狭さに気がつくことができました。


消化プロセスは創造そのもの


地上ルールには不条理がみちあふれており「腑に落ちない」こともたくさんあります。
辛酸をなめ、絶望し、泣きっ面に蜂が飛んできて、傷口には塩を塗りたくられ、弱り目に祟り目、もう二度と立ち上がれないと感じることも起こります。
咀嚼するのに何年何十年とかかることもあります。
咀嚼はできたものの次に消化・排泄するまでにさらに何年もの時間が必要になることもあります。
消化は一種の戦いで、異物(自分ではないもの)が、自分というホーム内に入り込んだ(飲み込んだ)瞬間から、やるかやられるかの真剣勝負が始まります。

ミントの交配力には目を見張るものがあり、地下茎を拡張しながら混ざり合えそうな相手と出会ったら交雑種するという得意技をもっています。
互いを飲み込み、互いを変容する。
混ざり合って第3のものを創り出す。
たとえばミントのなかでも特に産業ラインに乗って消費されているペパーミントは、ウォーターミントとスペアミントの交雑種とされています。
過去同じポットで育てたスペアミントとレモンバームの鉢からは、ミントとレモンが混ざったような微妙な香りのハーブがニョキニョキと育ちました。
消化プロセスは創造そのもので、たがいを受け入れフュージョンするのは楽しいことだと、妖精ミンテが体現し、教えてくれているかのようです。

妖精ミンテはいってみればドリームチームの現場担当。
柔軟で応用力があり、香り良く、食べ物も思考も印象も腑に落ちるよう手助けして消化力を高めてくれます。
ドリームチームがのこしてくれたハーブの恩寵は、地球上あらゆるところに根をはり、拡張し続け、交配をくりかえし、存在しています。
都市生活の中でも、あらゆるところ、あらゆる製品に入り込み、香り魔法をふりまいています。


おうちでミントを育てたら


次々と新芽を出し、成長するスピードが速いので、摘んでも刈り取っても、地下茎をのばしながら生育場所を拡大してゆきます。

地上茎から贅沢に刈り取ってつくるミントの花冠は、古代ギリシャ・ローマ時代には宴のおもてなしとして客人にかぶせていたといわれますが、実際にやってみると気分を高揚させ、疲れを吹き飛ばし、楽しい予感やインスピレーションを受け取りやすくしてくれる魔法の帽子と思います。
少ししなびてきたら束にして、除菌シートに包みテーブルやキッチン台をこするのに使います。
あるていど乾燥した葉は玄関や床にまき、一日たってから掃除機で吸い込みます。
我が家にはハーブ吸い取り専用の紙パック掃除機がありますが、掃除機をかけるたびに良い香りが部屋中に漂い、お掃除タイムを楽しませてくれます。

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お読みくださりありがとうございました。
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