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【ハーブ天然ものがたり】糸杉/サイプレス


悲しみの象徴


糸杉はヒノキ科イトスギ属、学名 Cupressusキュプレッソス の総称です。精油ではサイプレスと呼称され、西洋ヒノキと呼ばれる針葉樹の葉と球果から採油されます。

樹高40~50メートルほどに大きく成長し、幹は腐りにくいことから建築材に利用されます。
イタリアでは家を建て、船をつくり、エジプト人は棺をつくり、ギリシャ人は神々を彫刻する素材に利用してきました。
ヨーロッパでは墓地に植えられ、キリストが磔刑になった十字架もサイプレスでつくられたという伝説がのこっているので「死」に結びつけられることが多いです。

古代エジプトのパピルスに、サイプレスが薬や薫香に使用されていた記述があります。
古代ギリシャ人は冥府の神ハデスに献上し、死と永遠、悲しみと慰めの象徴としました。
医療の分野でも古くから活用されてきた記述がのこっており、ギリシャの医師ガレノス(AC165年頃)は内出血と下痢の処方に使いました。


糸杉/サイプレスのものがたりは、ギリシャ神話でアポロンに愛された美少年のひとり、キュパリッソスの化身説がはじまりです。

キュパリッソスは、金色に輝く角をもつ雄鹿と、とても仲良しでした。
その鹿をまちがっって槍で殺してしまったキュパリッソスは深く悲しみ、アポロン神の慰めの言葉をうけても悲しみは止まず、このまま永遠に悲しむことを神々に願いました。
神々はキュパリッソスを糸杉に変えて、永遠に嘆き悲しむ象徴にしたという神話です。
「アポロン」はキュパリッソスへの哀悼は自分がしていくと告げ、糸杉となったキュパリッソスに、これからは悲嘆にくれるほかの人々の友になるようにと伝えました。

ウィキペディア
雄鹿の死を嘆きイトスギに変わるキュパリッソス

糸杉はその神秘性も相まって、ヨーロッパを中心に多くの芸術家たちにインスピレーションを与え、たくさんの絵画や音楽、詩にも登場します。
なかでもアルノルト・ベックリン(1827 - 1901年、文学、神話、聖書などを題材にしたスイス出身の象徴主義の画家)の「死の島」は、一度見たら忘れられない静謐さのインパクトがあり、嘆き悲しむものの友となった糸杉を、如実に表しているんだなぁと、素人目線の私にも感じるものがあります。

ウィキペディア-「死の島」"第3バージョン"1883年


生涯をとおしてベックリンは5枚の「死の島」を描いたといいます。
以下の絵画解説はウィキペディアの「死の島」頁を参考にしました。

水に浮かぶ岩の小島に、密生する糸杉の木立。
手こぎ船が水門のまえにたたずんでいます。
こぎ手は後ろにいて、その前には白いものに覆われて立つ人がいます。
棺と思われる白いものが積まれています。

ウィキペディア-死の島

この絵画に魅せられた多くの人は、船のこぎ手はカロンと解釈しているそうです。
カロンは冥府の河の渡し守の名前です。
冥府に行くにはふたつの河、アケローン川(悲嘆)とスティクス川(憎悪)、日本風にいうと三途の川を渡らなければなりません。
悲嘆と憎悪の水にまもられ、糸杉の森に包まれた冥府の入り口は、渡し守の助けがなければたどり着くことができません。

カロンという渡し守の名にちなんで、冥王星の第1衛星はカロンと名づけられました。

2006年までは太陽系第9惑星とされていた。
離心率が大きな楕円形の軌道を持ち、黄道面から大きく傾いている。
直径は2,370キロメートルであり、地球の衛星である月の直径(3,474キロメートル)よりも小さい。
冥王星の最大の衛星カロンは直径が冥王星の半分以上あり、それを理由に二重天体とみなされることもある。

ウィキペディア-冥王星
ウィキペディア
「二重天体」としての冥王星とカロン(右下)。地球と月の組(左上)。
それぞれの天体間の距離は正しくないが、大きさの比率は正しく描かれている。


占星学の冥王星象徴を考えると
・太陽系のいちばん外にある天体
・死と再生
・全面改定
・極端、孤独、闇、無、深刻さ、異常性
など思いあたりますが、ネガティブなイメージを強調したいわけではなく、冥王星象徴がもたらすものは、限界における切り替え点になる、ということが重要と考えています。

太陽系を一人の人間に投影してみましょう。
人間が異なる次元や「真の外界」にかかわるときのしくみを知りたいなら、太陽系の一番外側はどうなっているかを探求することで、かなり参考になる知識が得られるはずです。

(冥王星のひとつ内側で、軌道周期がときおり冥王星と入れ替わって最外郭になる)海王星が夢見たことを、意志として外に飛び出させる作用が冥王星にある。
反対に、外宇宙の影響を太陽系の中に持ち込む「異物との接点」としても冥王星が働いているということが考えられます。

「完全マスター西洋占星術」松村潔

陰と陽・光と影をいたずらに対立させないようにするには、対立という展開にもう飽き飽きして、別の道を模索することから、はじまるんではないかと思います。
そうして希望と絶望、ふたつの足場に立ち続ける工夫がだんだんできるようになり、人生のなかで象徴的な死と再生をくりかえすことにも、ゆっくり耐性がついてくるような。

占星学を学んでよかったと思うのは、この宇宙にあるすべてのものは、太陽系や銀河という大きな枠組みのなかで、フラクタルに存在しており、象徴性でつながっているんだと腑に落ちたことです。

冥王星が象徴するものは外界への出入り口で、糸杉はもちろん、ベックリンの「死の島」に代表されるような象徴物は、日常性を一瞬にしてシンと静まり返らせるような、限界点における切り替えポイント「どこでもドア」みたいに使えるのかもしれないと感じています。
悲嘆にのみこまれて真っ暗闇のなかで出口を見失ったように感じても、糸杉が指し示す先には、それまで知ることのできなかった別の扉が出現する、というような。


涙でお掃除


サイプレス精油は、カタル性の鼻水タラタラ状態や、治りのおそいグズグズニキビ、傷など、また更年期のホット・フラッシュで滝のように汗が出るときや、手足の発汗が多いときなど、各種水漏れトラブルを癒してくれます。

収れん作用でキュッとひきしめ、からだでも精神でも、なにかが過剰になっているところに到達して、血管を収縮し、水分の過度な喪失を抑制する働きがあるといわれています。
サイプレスの芳香は、体液流出で困るときだけじゃなく、意味もなくおしゃべりが止まらないときや、イライラで小言が止まらないとき、ブツブツと愚痴が止まらないときにも役立つなぁと感じています。

水漏れ注意といっても、涙やヨダレ、鼻水や下痢は、体内不要物を水といっしょにぜんぶ出し切る手段でもあるので、サイプレスは最終手段というか、水漏れが慢性化しそうになったタイミングで芳香するのがベターかと思います。

サイプレスの得意技、なにかが過剰になっているところに到達してひきしめる、という作用力には、寒さ厳しくなる季節毎、お世話になっています。

火、風、水、土の四大元素のうち水比率が過剰になると、悲しいきもちに凌駕され、とくに冷風吹くころは、肺が冷たい空気に満たされることで興奮して、メランコリックな気分を引き寄せやすくなるともいわれます。

悲しみにのみこまれて、まぶたの奥がおもはゆく、息を吸うと肺の上部がフルフル震えて、わけもなく泣きたい気持ちになっても、大人になるとそう簡単に泣くことはできません。
泣くからにはそれなりの理由が必要、みたいな関所があって、なんとなく泣きたいから泣く、という行為にはストップをかけてしまうような。

そうして悲しい気持ちをそのまま放置してしまうと、まぶたの奥から頬骨、上あごに重さが広がり、表情筋にゲッソリ・くよくよ感が漂ってしまいます。

そんなときはサイプレスの香気を肺にたっぷり吸いこんで、自分史上鉄板の名作のなかから泣ける歌とか映画で号泣して眠りにつく⇒次の朝、目やにがたっぷり出ていたら毒素排泄大成功、という感じです。

頬骨の重だるさがのこっていたら、洗面器にお湯をはりサイプレスを2、3滴。
お湯に肘をつけて、手のひらで頬骨を包み込んで頬杖をつき、くよくよ表情筋をもち上げます。
洗面器をつかった肘浴、手浴、足浴などは、香りも室内に広がり、お手軽なわりに即効性があるので重宝しています。


息づかいで総仕上げ


寒い季節はさんぽの足運びも少しだけ早歩きにして、自分の呼吸音に集中する、というのも恒例になっています。
呼吸法や、走ったり泳いだりも効果的と思います。
とにかく自分のハッハッという息づかいに集中する時間があれば、肺にたまった悲しみを醸成するナニモノカが満足して霧散霧消するような気がします。

吐息にふくまれる水分量は1日300~500㎖といわれていますが、水の精とくっつきやすいメランコリック成分は、オシッコと汗 < 涙 < 吐息の順番で排泄されるように感じています。


たぶん多くの人が通ったであろう「世界の色を失ったかのような時期」が、わたしにも過去数年ありました。

いま思い返すと、地球人として生きるために死守してきた、最後のよすがともいえるような希望を、ひとつのこらず、用意周到につぶされていくような出来事が次々と起こり、嘆き悲しんでいる余裕さえないような状態で、あっけなく絶望組の傘下にくだってしまった、という感じでした。
そして自分のケースでは、絶望してからじゃないとスタートできないことがあったんだなぁと、思うようになりました。
そこに行かなければ、知ることのなかったドアをみつけた、という感じです。

ひまわりの花で有名なゴッホは、死期が近づくにつれてサイプレスに興味・関心が引き寄せられ、星月夜などの絵を描きました。
見ているとなぜか泣きたくなるので、涙でお掃除作戦をしたいときに、よく使わせて頂く一枚です。

「星月夜」フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ(1853年 - 1890年)

地上から見上げると、細くて高いサイプレスの木は、空を切り分けるような、すっくとした立ち姿で、わたしたちを魅了します。

ヨーロッパで死別の悲しみに暮れる人々を慰めるために墓地に植えられるサイプレスは、生と死を明確に切り分けるかのように、天にむかってまっすぐに伸びてゆきます。

糸杉の大木は遠くからでも容易に確認できる高さに到達し、悲しみをきちんと味わい、慰め、和らげ、ひきしめるというプロセスを思い出させてくれる、涙の保護者なのかもしれないなぁと感じています。

☆☆☆

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