#3 カラマーゾフの兄弟が難しすぎたので色んな読書法を編み出しました。【カラマーゾフの兄弟との格闘日記③】
「カラマーゾフの兄弟」を読んでいます。
格闘日記、ラウンド3です。
ラウンド2では、いかに読むのが大変かという話を滔々と書きました。
「カラマーゾフの兄弟」が難しすぎて、あの手この手を使って適応しようと工夫を凝らしてきました。
その中で色んな読書法を編み出してきたので、その読書法をいくつかシェアしたいと思います。
皆さまの読書活動にちょっとでもヒントになると幸いです。
(全体で計5,000字を超える分量になってしまったので、目次から気になる読書法だけかいつまんで読むのも良いかもしれません。)
読書法①:演劇読書法
読んでいると、なんか頭に入ってこないなぁ~。という感覚が良くありました。
それは読書が、「文字情報を単に文法に則って処理するだけの作業」になっているのだと気づきました。
そうではなくて、感情を伴うことが大事なのではないか?
そこで、編み出したのが演劇読書法です。
単に音読するのではありません。
朗読すらも更に超えて・・・「演じる」という試みです。
その時、本は小説というよりもはや台本になります。
演じようとすると、以下のような演技プランを考える必要がでてきます。
・この時の登場人物の気持ちはどんなものだろう?
・表情はどうしたら良いか?
・どこにアクセントを置いて読むべきか?
・抑揚をいかにつけるか?あるいは平滑な単調な言い方なのか?
・セリフに間をつくった方が良いか?
・ささやくような小さな声なのか、叫ぶような大声なのか?
・身振り手振りなどボディランゲージはどうなるか?
とふうに舞台俳優よろしく、演じる為に必要なことを考え、想像することになります。
すると能動的に読むことに繋がり、自然と場面や状況の理解が進みます。
ポイントは、あたかも今自分は稽古場にいて、本番を間近に控えている舞台俳優であるかのような緊張感と没入感を持つことです。
最終的には、目の前に蜷川幸雄さんが見えてくるまで錯覚を起こすことができれば完成です。
演劇読書法は特に、会話文に対して高い効果を発揮します。
最後に一点だけ注意したいのは、読み終わった後に迫りくる、
「一人で何やってるんだろう、私は。」という羞恥心と虚無感を乗り越えることです。
大丈夫です、失うものは何もありません。
読書法②:映画製作読書法
文章を、頭の中で映画化しながら読むという方法です。
「このシーンは、このアングルで、こういう構図で、この演出で・・・。」
と映画監督になったつもりで、頭の中でメガホンを取ります。
演劇読書法と同じく、能動的に読むことに繋がり、更に頭の中に映像を描くことで深い読書体験を実現できます。
この方法は会話文だけでなく、地の文などにも有効です。
ただし、映像化するという性質上、目に見えない事柄についての叙述に対してはやや不向きです。
例えば、登場人物の心理についての叙述だったり、善とは何か?悪とは何か?というような観念に関する叙述のようなものです。
つまり、非現象界を叙述した文章には不向きです。
読書法③:勝手にキャスティング法
映画製作読書法の応用版・発展版です。
登場人物を自分の知っている俳優で、勝手にキャスティングします。
具体的な人物の容姿を借りることで、頭の中に情景を描きやすくなります。
例えば私はこんな感じでキャスティングしました。
・フョードル ⇒金子信雄(仁義なき戦いの時の山守親分のイメージ)
・ドミイトリー ⇒三船敏郎(羅生門の時の多襄丸のイメージ)
もしくは長瀬智也(タイガー&ドラゴンの時のイメージ)
・イワン ⇒藤原竜也(デスノートの夜神月のイメージ)
・アリョーシャ ⇒櫻井翔クン
・ホフラコーワ夫人 ⇒高畑淳子(白い巨塔の時の東夫人のイメージ)
・リーズ ⇒安達祐実(同情するなら金をくれの時。)
・スメルヂャコフ ⇒要潤(もはやけっこうテキトーです。)
ロシア人俳優を知らないので日本人俳優によるキャスティングとなってしまいますが・・・。
難点は、あまりにキャスティングがハマりすぎるとかえって、登場人物のオリジナリティから遠ざかってしまう事です。
(例:フョードルが金子信雄さんにしか見えなくなる。本来の容姿と遠ざかる。)
なのでこの方法は、どうしても人物が想像しづらい!という時にこそ、最大の効果を発揮するかもしれません。
読書法④:あらすじノート書き出し法(あらすじセーブ法)
これは長編の物語の粗筋を把握していくのにとても有効です。
長編モノは、何日間にも分割して読むかと思います。
なので後日再開した時に、スムースに再開できるように、ちょうどRPGゲームでするようにそこまでの筋を「セーブ」しておくのです。
これにより途切れ途切れではない、シームレスな読書体験を実現できます。
具体的な方法ですが、「10ページくらい読んでストーリーに動きがあったらその都度、ノートに端的に粗筋を書いて」いきます。
例えばこんな感じです。
まずは原文です。
(長いので、読み込まずに、サッと読んでください・・・。)
この原文を読んだら、下記のような感じで、粗筋を抽出してノートに書きだします。
「ドミートリイが庵室に遅刻して入って来た。スメルヂャコフが約束の時間を誤って伝えてきたせいで遅刻したが、許してほしいとゾシマへ釈明した。」
いわゆる一般的な「粗筋」よりかは、かなり「詳しい筋」です。
「粗すぎない」ので丁寧に読み込んでいけます。
粗筋を記録する(セーブする)ことだけではなく、あらすじを書こうとすることによって能動的に文章から情報を拾っていこうという姿勢になります。
結果的に読解を促進する効果もあります。
勉強も、人に教える前提で勉強すると頭に入りやすいですよね。
あんな感じです。
欠点は、とかく時間と手間がかかることです。
いちいち手を止めて、ノートに書くので、かなり根気よくなければ続きません・・・。しかし「急がば周れ」で、これが最速だったりもします。
読書法⑤:現代語訳読書法
130年前に書かれた小説なので、現代人の我々が理解するには少し、感覚のギャップを埋める必要があるかと思います。
つまり、現代の生活感情、感覚に変換する必要があると思うのです。
例えばこんな原文がこんな感じの場合、
こんな感じ↓で現代語訳します。
「ミウーソフは、フョードルと絡んでも自分が損するだけなので、『あいつとはツレじゃない感』を出そうと思いました。」
ちょっと砕けすぎている感もあるかもしれませんが、私たちが何かを理解する時、最終的には「私たちの普段持っている生活感情、感覚、ニュアンス」でしか処理できないと思います。
つまり自分の胃腸で消化・吸収できるものでなければなりません。
どんなに難解な文章も数式も、最終的には自身の感覚として理解できなければ、飲み込めません。この方法はいうなれば「咀嚼」する作業です。
つまり、自身の胃腸が消化・吸収できるような形にまで分解する読書法だと思います。
読書法⑥:グーグル活用読書法
名称そのままですが、劇中に登場したアイテムなどをググることで、より対象の解像度を上げるという方法です。
例えば、カラマーゾフの兄弟はロシア文学なので、ロシアの文化やアイテムなどが頻出しますが、ロシアに馴染みがない為、それらはなかなかイメージがしづらいです。解像度が低い状態です。初期のスーパーマリオくらいの解像度です。
例えば、100ルーブリ札のことを「虹」と呼んでいます。
これは、100ルーブリ札は虹の模様があることに由来しているようです。
(岩波文庫第一巻p262より)
なので、「100ルーブリ札」とググって、画像を見てみることで「ああ虹ってこういうことね。」と解像度が上がります。
(※実際、100ルーブリ札=虹というのはあまり良く分かりませんでしたが・・・。私が見たのは当時の100ルーブリ札とは違うのかもしれません。)
あとはウハー(魚汁)とか、トロイカとか、コニャック(フランス発祥らしいですが、)とかもググって具体的に画像をインプットすることで解像度を上げることができます。
読書法⑦:チョコザップ式読書法。1ページでもいいからとりあえずいますぐ読む読書法
これは読書法と言うよりは心得に近いですが、
「あまりやる気が起きなくても、とりあえず、1ページでもいいから、1行でもいいから、今すぐ読んでみる。」という読書法です。
なんで本を読まなくなるのか?
それは本を読むと言うことには次のような固定観念があるからだと思います。
・読書は、1~2時間かかる行為であること
・読書は、机と椅子、静かな環境がないとできない行為であること
・読書は、高い集中力に到達することが必要な行為であること
しかしこれを揃えようとすると、意外と大変です。
少しでも手間がかかると、やらなくなります・・・。
しかし、一行だけなら、かなりハードルは下がります。
一行だけならどんなにやる気がなくても、疲れていても、面倒くさくても、時間が無くても、読めるかと思います。
筋トレはなかなか続きませんよね。
その理由は、読書が続かない理由と同じで、「事前の準備・手間が多いこと」と、「長い時間を確保しなければならない」という固定観念によるものではないでしょうか。
「ちゃんとジャージに着替えて・シューズを持って・プロテインも準備して・1時間~2時間、みっちりやるぞ」というように・・・。
最近流行りのチョコザップはまさにそこを突いた革新的なジムだと思います。「着替えなくていい・ジムに入って即・開始できる・5分だけでもいい。」という・・・。
読書もチョコザップ式でやれば意外と読めたりします。
「一行読む⇒まあもう少し読むか⇒もう少し読む⇒区切れの良いところまで読むか・・⇒だんだん集中してきたから、もうちょっと読む・・・」
という具合に読み始めるとなんだかんだ1時間くらい読めてしまったりします。
読書法⑧:とりあえず読めているテイで読み進める読書法
あの手この手を尽くしても、それでもちゃんと読み込めない時があります。
そこでつっかえると、全体像が見えなくなり、益々読めなくなってしまいがちです。
だから、とりあえず読めているテイで読み進めるという読書法です。
最近気づいたのですが、文章は一行では充分に意味をなさないことがありますよね。複数行でまとまりとなった時にはじめて一つの意味を成すことがあると思います。
だからこそ、一行だけ読んで良く理解できなくても、とりあえず読み進めることは効果的だと思います。
100%の理解にこだわりすぎず、時には読めているテイで読み進めていくことも必要だと思います。
理解が進んだら、また分からなかったところまで戻って、読み直す、という形で良いかと思います。
部分最適ではなくて全体最適の考え方で読むという・・・。
読書法⑨:放浪読書法
読書する場所を変えるというアプローチです。
読書は身体的制限がほとんど無いといってもいい、ミラクルな行為ですよね。たぶん、水中以外ならどこでも読めるのではないでしょうか?(水中ですらも、工夫次第では読める。)
電車の中、公園のベンチ、駅前で待ち合わせている時。
場所を変えることで、新鮮な読書体験となります。
周囲の状況は変化し、かつ唯一無二であり、完全に同一の状況は二度と訪れません。(周囲をすれ違う人、天気、時間など・・・)
この場所を変える読書法の究極形態こそ、放浪読書法です。
・散歩をしながら、読書できそうな場所を見つけたらそこで読書をする。
・休憩を含めて、散歩+移動。
・また新たな漂着地を見つけたら錨をおろす。
これを繰り返すという荒業です。
以下のようなメリットがあります。
・場所を変えるので、新鮮な気持ちで読める。
・散歩中に、頭の整理や気分転換ができる。その為、集中力が復活しやすい。
・内的世界で完結するはずの読書が、外界と結びつくことで「体験」に昇華する。記憶に残りやすい。
自宅などの閉じた空間で、ひたすら読書と言う内面世界に閉じこもっていると、いつしか気分も塞いでしまいます。
時には外界の世界に触れながら、明るい気持ちで読んでいくことも読書体験を豊かにするかと思います。
読書法⑩:丸暗記読書法(23'11/8加筆)
もはや、丸暗記を試みる読書法です!
まぁ、「カラマーゾフの兄弟」ほどの分量を丸暗記することはお坊さんでも無理でしょうが・・・丸暗記する「つもり」で読む方法です。
というのも、「カラマーゾフの兄弟」って単純に理解・解釈できるものではないと思うのです。
でも、「意味が分からなくとも、読む、暗記してしまう、暗唱できるようにする」みたいな読み方ってあると思います。
例えば、漢詩とか、百人一首とか、源氏物語のような古文とか。
これらを学校で学習する時って、意味が分からないけど丸暗記する、音読する、みたいな方法をとってきました。
あれは今思うと、結構意味があった気がします。
意味を理解するのは無理でも、覚えることはできると思います。
覚えておくと、いつか道を歩いている時にふと「あれの意味が分かった!」みたいな瞬間がくると思います。
なので、意味が分からなくても覚えておく、みたいなことは大事だと思いますし、そういう読書法もこのような複雑な小説に対しては必要だと思います。
ご参考までに、
三島由紀夫もインタビュー「告白」の中で漢文を丸暗記することの有用性を指摘していました。
おわりに
まだ新たな技を生み出す可能性があるので、その都度加筆、アップデートしていきます。
カラマーゾフの兄弟との格闘はまだまだまだ、続きそうです・・・。
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