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シブヤフォントってなに?①〜アートワーク制作編〜

どうも、シブヤフォントのアートディレクターのライラです。
シブヤフォントは渋谷区にある障害福祉作業所と渋谷でデザインを学ぶ学生がタッグを組み障害や社会的困難を抱える事業所メンバーのアートワークを誰もが使えるデザイン柄やフォントデータへと変え、さまざまな商品・サービスや空間でのコラボや使用を展開しています。

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ん〜なんかわかるようでわからない。そういう人もいると思うので、いくつかの回に分けてどのようにしてシブヤフォントがつくられているかの全貌を紹介したいと思います。

シブヤフォントは年間ベースでデザインデータをつくっており、年明けからアートワークの制作から取り掛かり、並列して4月ごろからデザインデータを作りながら年度終わりにかけてデータ発表となります。

今日はシブヤフォントのデザインデータの肝となるアートワークの制作について。

まずその制作プロセスに入る前に2つ皆さんにお伝えしたいこと。
それは、

シブヤフォントは障害がある人の「アート」ではなく「アートワーク」を扱っている 

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と、いうこと。一体どういうことか。近年障害があるアーティストの作品、世間でよく言われる「障がい者アート」がどんどん注目を浴びてきていますよね。ネーミングはさておき、個展をしたりと人気作家もいる中、実は皆さんが目にする「障がい者アート」の作品は全国でアート活動をする障害を持つ方のほんの一部に過ぎません。しかしこの10年ほどさまざまな施設・事業所を回らせていただいて気づいたことは全国にはアートをやってみたいけどどうすればいいかわからない、できるか自信がないと思う施設・事業所や当事者がいっぱいいるということ。でもちょっと絵を描くのが好き、とかイラストや文字を書くことならできるやってみたいという人はいっぱいいます。また美術館にかざる「アート作品」までとはいかないけど素敵なものを作っている方はたくさんいる。なので果たして障害はある人が作るもの全てをアートとしてしまっていいのか?

日本語のアートの意味を調べてみると

アート = 芸術・美術

少し難しくどこか高級というか完成品の印象があり手が届かない感じがしますね。アートを作らないと認められないというプレッシャーも生まれてしまいます。一方アートワークは?

アートワーク = 手工芸品  /  美術・工芸の製作活動 / 印刷物で、本文以外のさし絵・図版など

すこし手が届きそうな感じがしますよね。さし絵や図版などはイラストと捉えられるし制作活動の「活動」の文字はやってみる、やれるかもという印象を与えるように思えます。

シブヤフォントに参加している施設もアート活動の経験はさまざま。だからこそ完璧なアート作品をつくることをゴールにせず、まず施設のメンバーが何気なく書いたもの、やれること、やってみたいことをどんな形でもいいからやってみることにしています。

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「完璧」なものを作らなくていいことで気楽さが生まれ、障害やアビリティーを問わず気軽に参加できることが可能になります。

シブヤフォントは仕事である

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シブヤフォントでは決してただアートワークをいただいてデザインしているわけではありません。通常多くの施設では「アート」の時間はまだ余暇活動として見なされ仕事とはされていません。

シブヤフォントではデザイン用のアートワーク(活用されてもされなくても)仕事として皆します。アートワークがデザインとなり、そのデータの利用料収入があるから。福祉の現場で障害のあるメンバーさんの特性や体調等に合わせて、多様な働き方を提供するのが目的です。

こうして6年目になるシブヤフォント。参加施設は初年度の5施設から11施設へと増え、知的障害、自閉症、発達障害、身体障害、高次脳機能障害や精神の病など多岐にわたる障害やアビリティーを持つメンバーさんと共に活動しています。ではどうやってアートワークを生み出しているのか?アートディレクターとして以下のことを心がけ施設の皆さんとアートワークの制作を進めっていきます。

1. 前年を振り返り仮テーマや目標を決める

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前年やこれまでのアート活動と制作されたデザインデータやメンバーさんの様子などを施設の職員とともにふりかえりながらその年チャレンジしていきたいことを考えます。初めて参加する施設はまずじっくり施設の状況をヒアリングして目指してみたいことを聞いたり。メンバーさんの制作スタイルの変化をみながら、こんなこともやってみようかとか、新メンバーが入ったから来年は参加してみたらいいと思うメンバーなど支援スタッフと聞き取りをしながら考えていきます。詳しいアートの支援については以前の記事「アート活動=その人のベストを引き出すということ」にも書いているのでぜひチェックしてください。振り返っていく中でこれまでのアートワークやデザインデータの傾向がみえてきて、この施設ってこうだね、もっとこういうところ活用したいねという話になりではアートワークのテーマはこれで行こう!と決めていきます。学生にテーマを伝えるかは施設に自由にしていますが自分達自身がテーマを持っておくことで使ってもらいたいところや施設の持ち味もアピールできるようになります。

2.  アートワークを使ってもらいたい「一押しメンバー」を決める

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施設の最大の目標ははより多くのメンバーさんのアートワークがデザインに使用されることでよりメンバーさん自信や自己肯定感につながること。初年度などは使用したいメンバーさんのアートワークをすべて学生にお任せしていました。しかしそうすると年々、学生が同じメンバーのアートワークなどを使用しがちになってしまう。そこで近年施設とはテーマや目標と共に毎年シブヤフォントのアートワーク制作に重点的に参加するメンバーを決めるようにしています。そのなかでも絶対にこの人のアートワークを使ってください!というメンバーさんを決めます。最初は施設も戸惑っていますが年々デザイナーのチャレンジ精神を掻き立てるアートワークの選択もありとても面白いです。上の絵は今年度ワークささはたが使用してほしいと言ったアートワーク。なかなか難易度高め!果たしてどのように学生がデザインに使用したかが楽しみですね。

3. 他の施設と知見や知識をシェアする

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シブヤフォントでは施設同士の繋がりを大切にしてます。実は多くの障害福祉施設はお互い近くても実際に交流する機会は少なく、お互いが何をどうやっているかを知らないことが多いです。私はより施設がアートワークなどを通してお互いが何をどんなメンバーさんとどうやっているかがわかれば、共に学び合いながらサポートしていけるのではないかと思っています。そこで数年前から施設同士のアート活動の勉強会を定期的に開催しています。全施設となると長くなってしまうのでいつもランダムに半々に分けています。「あーうちもそういうメンバーさんいるんだけどどうしようか迷ってたんだよね〜」「こういうふうにしてみたらおもしろいかも?」と同じ立場にいる支援員同士がお話しすることで普段使っているアートワーク支援テクニックなどを気軽にシェアしたり提案をしたりできます。

4. メンバー(利用者)のやりたく無いことは強制しない

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これが最も大事な点。特にシブヤフォントのように目的があるとメンバーさんをそのゴールに導かせないと!という感覚も出てきます。でもシブヤフォントではあくまでメンバーさんがやりたいこと、やってみたいこと、または自発的に出てくる創造性を大事にしたいと思っています。当初メンバーのアートワークをみて「これができるかも!」と思っていても実際やってみたところでテンションが上がらなかったり、やりたくない、もしくは全く違ったものが出来上がった場合にも否定しませんしこちらの意図も強制しません。その人のできることを後押しすることで自信だけでなく今後の支援や仕事づくりにも繋がっていくとかんがえています。

こうして施設は学生がくるまでアートワークを作りはじめ、学生と共にディスカッションして制作していけるように準備します。単に学生いわば「デザイナー」にお任せをするのではなく、自分達の現場の魅力や引き出していきたいものを明確にして伝えるようにすることで、デザイナー自身が、たとえば作品のこの素質を大切にする・この人のアートワークは絶対に使わなければいなどの明確な目標とチャレンジが設定できでき本当の意味での課題解決型のデザインができることになります。

次回はのシブヤフォントってなんなん? デザインデータ制作編

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初めて会う学生が施設に来るとどんな化学反応がうまれるのか、どのようにアートワークを扱っていくかなどをお話しします。


シブヤフォント公式ホームページ:https://www.shibuyafont.jp/

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